フォルクスワーゲン・ゴルフ・ヴァリアントに試乗

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ゴルフ・ヴァリアントに試乗した印象。ハッチバックとはまた違ったクルマとしてのまとまりを見せていました。

ゴルフ8のヴァリアント。ゴルフ8はノーズ先端が低くなってボンネットが丸みを帯びたのが特徴ですが、ヴァリアントではルーフラインも従来よりも丸みを帯びたため、全体にラウンドシェイプが目立つ印象です。

ハッチバックよりもホイールベースを伸ばし、全長は先代よりも長くなっています。リア周りのデザインはリアウィンドウを寝かせるなど、スマートさを強調しており、単なるハッチバックの延長版でなく、ワゴンとして独自のまとまりを持つデザインにしているのが特徴。ワゴンであっても実用車的に四角いのではなく優美さを持たせており、これは最近のワゴンの傾向といえるようです。

かつての、四角い合理主義的な雰囲気のヴァリアントも、ドイツのフォルクスワーゲンらしさがあったと思いますが、最新のヴァリアントは大人の落ち着きを手に入れたようです。

ホイールベースは先代と比べて35mm長く、延長分はすべて後席の拡大にあてられており、後席足元には余裕があります。現行ハッチバックと比べると50mm長くなっています。

ラゲッジルームは通常時で容量にして先代より6Lプラスの611Lあります。

後席を倒せば広大なスペース。奥行きは1845mmあり、車中泊をするにも楽そうです。日本ではハッチバック車が減り、SUVが増えましたが、SUVにはワゴンボディがないので、ルーフや荷室長の長さを必要とする場合、やはりワゴンの価値があります。ケレン味のないゴルフ・ヴァリアントは貴重な存在のように思えます。

ダッシュボードなどは基本はハッチバックと変わらないようです。この車両はeTSIスタイルで、下半分が明るいグレーで上質感があります。

ステアリングはソフトスキンの握り心地のよいものです。ステアリングの操作感もよく感じました。メーターパネルを中心に、左側のナビ画面や右側のライトスイッチ類などがすべて地続きのフラッシュサーフェイスの液晶画面となっていて、ステアリングを囲むように3面で角度を変えているのが、現行ゴルフの特徴。

ドライブモードの選択画面。これは「エコ」選択時ですが、表示される絵柄がこのように、なかなか洗練されたものになっています。こんなところにフォルクスワーゲンのブランドが現れているように思えた次第。

これはスポーツモード時のメーターパネル画面。

さて走っての印象は、見た目同様で、ハッチバックよりも落ち着いています。ハッチバックより重いので、加速感はやや劣るかもですが、力不足ではありません。重さが落ち着きに効いているはずで、荒れた路面でも不快感はなく、ソフトさがあります。もちろんスポーツモードを選ぶと固く締まります。

ワインディングでは、スポーツモードにしてがんばるよりは、ノーマルモードでゆったり行きたいという気分になりました。まあそれがふつうかもしれませんが。それが気持ち良い、大人のクルマと感じました。ただRラインであればたとえヴァリアントでも、もっとハイペースが気持ち良くなるはずと、広報担当からはひとこと念を押されました。ゴルフとしての基本性能はよいはずです。

ワゴンというのは、ハッチバックのリアを伸ばして重くしたものにすぎない、という意識が自分のなかにあったのですが、このクルマの場合、大人のクルマとして違ったものとして完成しているという点で、ちょっとした感銘を受けました。これはこれでよさがあるなと。アメ車のおおらかさといったら大げさですが、ゆったりした上下動などもあり、心地よいものです。

パワーユニットは、1.5のeTSIで、1.5リッター4気筒に、48Vマイルドハイブリッドのアシストが入ります。ハイブリッドらしさはワインディングなどを走っているとほとんど感じません。

ただ、実はエンジンが、人知れずその働き方を忙しく変えています。今回それを観察できました。メーターパネル表示をエンジンの作動状況がわかる画面にすると、エンジン停止のコースティングと、2気筒休止を、頻繁に行っているのがわかります。

これはやはり、表示を見ないとまったくわからず、意地悪してエンジン停止状態でいきなりアクセルを踏み込んでも、反応はやや遅いもののAT(DSG)のセッティングかと思うくらいで、大きなショックは感じません。コースティングはアクセルオフですぐエンジン停止になる感じで、とくに下りでは顕著です。ただ毎回必ずでもない。

4気筒停止(エンジン停止)と、2気筒休止が、どの条件でどちらになるのかは、よくわかりませんでした。

2気筒休止の状態でも、ごくゆっくりならばそのまま加速します。

このほか、ゴルフ8は電動メカニカルブレーキサーボを採用しています。そのことを意識すると、もしかするとそれゆえのフィーリングがあるのかなとも思いましたが、気のせいかもしれないというレベルです。むしろ、運転状況によってサーボの効かせ方も常時最適化しているそうなので、性能面では優れているといってよいのでしょう。

ハッチバックで完成形と目されるゴルフですが、ワゴンとしてのバランスをしっかりとったのが新型ゴルフ・ヴァリアント。これもゴルフの兄弟なので、その良さは同じく持っていますが、あくまでゴルフ・ヴァリアントというクルマ、といえるようです。

(レポート・写真:武田 隆)

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