JAIA輸入車試乗会2023(フォルクスワーゲンID.4)

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毎年恒例のJAIA輸入車試乗会。同じプラットフォームを使用する、フォルクスワーゲンID.4とアウディQ4 e-tronに乗りました。今回はID.4の印象。

ID.4は日本ではVW初のEV専用モデル。SUVの車形をとっています。目についたのは、近年の既存のVW車が直線基調デザインなのに対し、波打ったベルトラインが目立つこと。

前後フェンダー上部がキックアップしています。動物の体のような躍動感、「有機的」なデザインです。既存VW車の「無機質」な直線基調のほうが未来のEVっぽくて、逆じゃないか、とも思いましたが。たまたま写真の後方に見えているヒョンデのEVのほうが、直線基調で、VWっぽい感じに思えます(笑)。

EVのIDシリーズは、既存VWモデルとは、違う系統のデザインにしたいのかとも思います。ただ、ID.2などは、現行ゴルフ的なデザインのようです。それにしてもID.4は、EV云々は別として、ふつうに1台のクルマとして、スタイリッシュだと思った次第。破綻がなく、良いデザインではないかと思います。

リアエンドのデザインは、水平線基調で、既存のVW車と共通性を感じます。ランプ類はLEDですが、少し凝ったデザイン。サイドのシルバーのアーチによって、ルーフラインは低く見えます。リアエンドのルーフスポイラーが比較的大がかりですが、空力に効いているようです。CD値は0.28。

内装はかなりシンプルですが、クラシカルな色使い、素材で、大人の雰囲気。既存のVW車よりも、落ち着いて見えます。高級感があります。

ドライブモードセレクターと呼ぶ、従来のシフトレバーに相当するものが、メータークラスター(ディスプレイ)の横に設置されており、これを右左にひねって作動させます。従来のコラムシフトの進化版といった趣です。この辺りのつくりは凝っていて、上級車らしいつくりこみ。

後席は前席よりもやや高めの着座位置で、閉塞感がないようにしています。バッテリーがホイールベース間に敷きつめられているので、フロアがやや高めです。前席は足を前に伸ばすので、フロアが高い影響を感じませんが、後席は膝を曲げるので、座面を少し高めにする必要があったようです。

フロアにバッテリーを敷き詰めるのは、多くのEV専用モデルで共通。必然的に後席が高めになり、ヘッドスペースに余裕がなくなります。そのため、多くのEVでガラスルーフを採用。最初テスラで驚きましたが、その後多くのEVがそうしています。テスラの場合は、簡易的なシェードがオプションという大胆さですが、ドイツメーカーではさすがに、電動で閉まるしっかりしたシェードが内蔵されています。

ID.4はリアモーター(RR)ですが、リアの荷室は十分。荷室の下に駆動モーターが収まっています。エンジン車のRRでは、これだけの荷室を確保しがたいですが、モーターはコンパクトなので、それができるのが強み。テスラや欧州勢など、専用シャシーのEVは、多くがRRになっているようです。

素の特性ではFFのほうが(少なくともエンジン車では前が十分重いので)操縦安定性がよいはずですが、電子デバイス充実の現代のクルマでは、それがあまり関係なくなり、そもそも操舵と駆動を前後で分けたほうがよいし、総合的にリア駆動のほうがメリットが多いのかもしれません。直接的にはモーターが小型だから、可能になったと思います。

リアモーターでも、フロントのフードの下には、残念ながら荷物スペースはありません。ノーズを極力短くしているのも一因と思われます。

スタッドレスですが、タイヤサイズは、235/50R20。SUV車形に合わせてか、大径のものを履いています。重い車重ゆえもありそうです。ちなみに車重は2140kg。重いですが、EVとしては標準的か。

さて走った印象は、「ふつう」です。悪い意味ではなく、今までのVWらしさのまま、EVを仕上げた印象です。モーターの大トルク・大加速力を強調することもないし、アクセルオフ時の回生の減速も弱め。ドライブモードをBにしてもそれほど強くならないようにしています。ステアリングフィールは良いですが、今にして思えば駆動がリアだからというのもありそうです。意識しなければ、大きな違いはありません。また、音的には非常に静かです。

とくだん面白みはないですが、もともとVWは、乗用車の基本を提供する「ピープルズカー」のブランドで、そのままEVになったという印象です。EVはもはや特別なものではないという時代。いっぽう初めて乗る人も多い中で、ガソリン車と違和感がなさそうです。

ID.4は、2021年までに世界で12万台売ったそうで、いきなりメジャーの存在になるべくつくられたEV。なるほどの、完成度です。足回りはやや硬めの印象でした。

モーター出力は今回の車両は「Pro」なので、204ps、310Nm。廉価モデルの「Lite」だと170psになります。「Pro」の航続距離は618km、「Lite」で435km。「Pro」の価格は648.8万円。「Lite」が514.2万円。

エンジン車よりは高めですが、実用車として完成されている感じで、高品質でしゃれた内外装でもあるので、充電設備に問題がなければ、触手を伸ばす人は少なくない気がします。EVの将来はまだわかないとはいえ、ドイツは日本より先へ行ってしまったという感想です。

(レポート・写真:武田 隆)

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