東京オートサロン2024で気になった展示。今回はホンダです。
ホンダのブースは、メーカーとしてのレース活動重視の姿勢が目立ちました。
今回の展示のテーマは「HONDA DNA」。四輪事業開始の頃からのホンダのDNAである、レース活動をアピールするものでした。
ホンダのレース活動の象徴というべきF1。昨2023年にはホンダ製PUを積んだレッドブルのマシンが22戦21勝を記録し、圧倒的な強さを見せつけました。プレスカンファレンスではこの映像も流れましたが、素朴な感想としてあらためて思ったのは、「これは宣伝として使っていいんだな」ということ。
2023年は、エンジン製造者名が、Honda RBPTでした。レッドブル・パワートレインズとの共同開発という名目にはなりますが、「ホンダ」の文字が再び入ったのが“画期的”です。前年2022年にはコンストラクターチャンピオンを獲ったにもかかわらず、ホンダは撤退を表明してしまったため、エンジンはRBPT名義。ホンダは公式には参戦していないことになっていました。それが2023年は「ホンダ」の名が入り、晴れて表舞台に立てることになり、こうしてPRもできているわけです。
名目はなんであれ、常にエンジンは完全ホンダ製でした。とくに昨年の強さは圧倒的で、レッドブルのシャシーが良いのもあるだろうとはいえ、ホンダの技術力の高さは実証されました。今、ホンダの中では士気が上がっているのではないかと思います。今回の展示やスタッフとの会話で、その勢いを感じた気がします。
展示用の車両で中身がないとはいえ、ブースにはF1マシンが堂々と置かれていました。“堂々”というのは主観ですが……。
F1マシンの後方には、シビックのスーパーGTマシン。2024年からのGT500のベース車両はシビックになります。
壇上にはシビックRSのプロトタイプ。6速MTを採用したスポーツタイプ。タイプRは過激すぎるので、より普及版のスポーツモデルが求められていたようです。「RS」はフィットなどには設定がありますが、よく考えるとシビックでは、ずっと欠番のままでした。
会場には、シビックのレース車両が何台も置かれていました。この2台はスーパー耐久参戦車両で、右はカーボンニュートラル燃料を積んだST-Qクラスの車両。左は、ホンダの社員チームで参戦した車両で、2023年のクラス優勝を遂げています。ドライバーとして、先代以来タイプRの開発リーダーも参加。開発者がレース活動に関わることで、タイプRの改善点がわかり、市販車に反映できるといいます。
それにしても現状のスポーツ系モデルは、ほぼシビックのみ。ほかに次期型プレリュードなども控えていますが。ホンダとしては、レースでの活躍と市販車をつなぐものがない状況を危惧して、そこを現在強化中のようです。2020年に、F1で“不条理な”撤退表明をしてしまったのも、F1への投資を市販車に反映できないという状況が、影響した面はあったと思われます。
スポーツと市販車を結びつけるには、スバルのSTI、トヨタのGR、ニッサンのNISMOのような、サブブランドを持つことが有効です。ホンダにはこれがありません。タイプRは過激モデルの名称だし、RSは名前としては弱い。HRCは、四輪ではまだ知名度がない。無限は外部組織ですが、知名度は国際的にありそうです。
スポーツ重視を打ち出しているホンダには、期待が高まります。スタッフの高揚感はあるようだし、実力は申し分ない。ただ、なによりビジネスとしてしっかりした展開が望まれるのだろうと思います。
(レポート・写真:武田 隆)