2020JAIA試乗会(1)ポルシェ・パナメーラ&マカン

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JAIA輸入車試乗会(2020)の報告です。今回2日間でのべ28台、計24車種に試乗したなかで、印象に残った1台を選ぶとすると、ポルシェ・パナメーラ GTS スポーツツーリスモです。

私たちチームは、スタンダードで現実的なクルマを選択しますが、それでも今回、1000万円前後のクルマが3台入りました。そんななかこのパナメーラは車両本体が約1990万円、さらにオプションがプラス350万円以上と、際立って「非現実的」な価格。これだけの価格なら、モノが良いのはまず当然ではあります。

ワイン評論家のロバート・パーカーは、濃いワインに高いポイントを付ける傾向がありますが、それはアメリカ人の基本的好みもさることながら、毎日数多く試飲するので、印象に残る濃いワインが選ばれるという説を聞いたことがあります。今回短時間に多数試乗して、2000万円のポルシェが印象に残ったのは、それと似ている気もしました。

とはいえ、パナメーラの味の濃さは、単にエンジンがすごい、加速がすごいとかのインパクトだけではなく、クルマの仕立てがすべてにおいて繊細。入念に調律されて、乗り心地さえも優秀で、深みを味わえる感じがあると思った次第です。

このクルマにとってはゆっくり、という走りしかできませんでしたが、右左が続く狭い裏山の道で、スポーツカーとしての身のこなしの良さが、やはり伝わってきます。よく曲がるけれど、いかにも安定してスムーズに曲がる感じ。全長5053mm、全幅1937mmもありかなり大柄ですが、車高が1422mmと、ふつうのセダンよりは低いので、やはりスポーツカーの安定感はあります。

そのうえで、オプションの275/35ZR21という大きなタイヤを履いていながら、大きな段差でもつき上げを抑えて、乗り味は滑らかで、洗練されています。また、ブレーキのフィーリングはやはりすばらしい。とくにこれはやはり今回乗ったなかで、断トツでベストと思います。

全長5mなので当然ですが、後席(定員は4人)スペースは十二分で、ヘッドルームは十分、レッグルームは広大です。後席でもつき上げがなく乗り心地がよい。ロードノイズだけは、前席、後席ともある程度あります。巨大タイヤの銘柄はミシュラン・パイロット・スポーツでした。

エンジンはやはり特別です。V8・4リッター・ツインターボは馬力こそ460psと、こういうクルマとしてはほどほどですが、2080kgの車体を力強くひっぱります。ステアリング上にあるボタンをいじって、ドライブモードをS+にすると、サウンドも豪快になり、やはり非凡な高性能エンジンであることを堪能できます。世界に高性能エンジンは多々ありますが、やはり純スポーツカーメーカーの調律は特別感があると感じます。そして豪快だけど下品さはない。

乗っていて、上質感が全身から感じられます。車体の剛性感としなやかさが絶妙に気持ちよく、使っている鉄の質が違うなどと言われたら、うっかり信じそうです。中身が密に詰まっている感じ。基本的な剛性が盤石なうえで、動くところがしなやかにスムーズに動き、組み付けの精度が非常に高い、というような感じ。ドイツには優秀なプレミアムブランドが、同グループのアウディをはじめ、群雄割拠ですが、高級車というくくりで比べても、ポルシェは一段か二段ぐらい、なにかが違う感じをうけます。

パナメーラのすぐあとに、875万円のマカンSに乗り換えましたが、パナメーラのGTSの味の濃い刺激のせいか、やや薄味に感じる結果に。以前にこのJAIA試乗会でマカンに乗ったときは、いたく感心したのですが、あまり次から次へ乗っていて、感覚が少し麻痺したのか‥。

これがその以前に乗ったマカン。グレードはGTSで、今回乗ったマカンは下から2番目のグレードとなるSだったので、「薄味」に感じるのは道理ではあります。

マカンSは、今回のパナメーラGTSに比べて、車高の高いSUVでしかもエンジンはV6なので、ハンドリングの面でも、エンジンのドラマ性の面でもおとなしく感じてしまいます。ただし、車高の高いクルマをこれだけスポーティに仕立てて、なおかつ極太のタイヤ(265/45R20)を手なづけて、乗り心地も非常にスムーズで、これはやはりなかなかないこと。ポルシェのクルマづくりに脱帽です。

パナメーラ・スポーツツーリスモのデザイナーは、日本人の山下周一氏。リアフェンダーの張りの具合などセクシーで、スポーティーな魅力を感じます。

ポルシェ各車は、911をデザイン面でも精神的支柱にしており、パナメーラ・スポーツツーリスモも同じです。たまたま後方に911が写っていますが、とくにリアの傾斜などは911を即座に連想させます。

ちなみにこれは数年前のJAIA試乗会で乗った通常のパナメーラの旧型。どこかもっさりしたスタイルに見え、今回乗った新型のほうが、筋トレをして、よりアスリートっぽくなったという印象です。

今回このパナメーラ・スポーツツーリスモには、2日にわたって乗るチャンスがあり、それぞれごく短時間でしたが、感動して泣きたくなるほど(笑)のすばらしい体験でした。たくさん乗りすぎて、疲れていたというのも多少あるかもしれませんが(泣)。

(レポート・写真:武田 隆)

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