ルノー・アルカナに試乗(2:走り)

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ルノーの新しいクーペSUVモデル、アルカナに試乗しました。E-TECHハイブリッドの走りがどんなものなのか、興味深いところです。

アルカナのハイブリッド。では、実際走ってみて、どうだったか。走り始めて低速域では、EV走行が多い印象で、当然その場合はEVらしく静かです。高速道路では、がぜんE-TECHハイブリッドの強みが出ます。MT車やとくにDCTのATモードに近いといえますが、スムーズかつダイレクト感をともなって、快調に走ります。

何度か、アクセルを踏み込まないのにエンジン回転が上がることなどがあり、いろいろ状況に応じて制御をしているようですが、走り自体のスムーズさに影響はありません。最大出力はそれほどありませんが、トルクがあるので、加速力は十分あります。

山間部でも良さが発揮されました。足回りはかなり締め上げられた印象で、スピードが乗ればスムーズになりますが、低速域では少し硬さが目立ちました。車両の走行距離が少なかったこともあるかもしれませんが、とくに日本ではルノー・スポール・ラインというグレードになるので、この足でちょうどよいのかもしれません。タイトコーナーなどはさすがにこの車高なので、それほど軽快ではないですが、全般的にワインディングはスポーティに走れました。

E-TECHハイブリッドは、パドルシフトなどもなく、手動で「ギア」の選択はできません。自動変速のみです。シフトレバーで選択できるのは、ブレーキ回生が強めになる「B」モードだけです。ただパネルから操作して、モードを選択することができます。「エコモード」のほかに「スポーツモード」があり、それぞれに合わせてハイブリッドの制御プログラムが変わります。「スポーツモード」では、よりエンジンを積極的に使うなど、スポーティ志向の制御に変わります。

ただしそれでも、峠を積極的に走ろうとすると最初はもどかしさを感じました。コーナーの途中でアクセルを戻すとすぐに回転が下がってしまったりします。しかし積極的な走りを続けると、コンピューターのほうがそれに対応して、制御をよりいっそうスポーティに変えてくれ、エンジン回転を高く保ったまま走れるようになります。さすが「F1由来」を謳うにふさわしい‥。

きっとサーキット走行でも対応できる潜在能力はあるのでしょう。ただ、現状の今回のクルマは、乗り手のスイッチがスポーツ志向に切り替わっても、クルマ側のスイッチが切り替わるまで時間差があるので、もどかしさを感じ、手動で切り替え操作をしたいなと思った次第。そういった「走り屋」向けの解決策としては、さらにスポーティな「スポーツ・プラス」モードを設定することではないかと思います。

そういうモードを設定すれば、おそらくこのハイブリッド機構は、現在ではメガーヌだけになったリアルスポーツの「ルノー・スポール」モデルでも、たぶん成り立つような気がします。

E-TECHハイブリッドは、ヨーロッパで厳しさが増しているディーゼルに替わるものとして、開発されたとのことです。燃費がよく、かつよく走るというディーゼルの長所を、そのまま実現しています。ルノーのグループには、ストロングハイブリッドとして、日産が開発したe-POWERがありますが、シリーズ式ハイブリッドは高速走行には弱く、そのため欧州向け日産車のハイブリッドには、このE-TECHハイブリッドが採用されるとのことです。ヨーロッパでは日本よりも高速走行の重要性が高いわけです。

結論として、日本でヨーロッパ的な走りをしたい向きには、このアルカナE-TECHハイブリッドは最適だということです。惜しいのは「F1由来」を謳うわりには、最大出力がやや控えめなことですが、トルクはあるので十分活発な走りをするし、実用性も備えるSUVということで、商品力は高いと思うしだいです。

(レポート・写真:武田 隆)

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