BYD シール

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日本での知名度を上げているBYDですが、新型セダンのシールは、バッテリー技術に新しさがあります。

6月25日に東京都内で、シールの発表会がありました。右に立つのはBYD Auto Japanの東福寺社長。

シールは、e-スポーツセダンを標榜しています。スラントノーズがその証ともいえますが、最近はスラントノーズのクルマが増えている印象で、中国ではほかにもあるようです。流行の発端というか背景には、テスラもあるでしょうか。“旧勢力”のメーカーでも、大御所ポルシェのタイカンや日本のクラウンも、スラントノーズになっています。

これは昨年のジャパン・モビリティショーのときのものですが、シールの内装はこのクラスならではの上級志向が感じられます。デザインとしてはとくに新しさは感じませんが、日本車ともドイツ車とも、アメリカ車とも違う、独自のインテリアという印象です。BYDなどの中国車は、車内をエンタメ化というか、楽しいデザインで演出する傾向があるようですが、シールは大衆車ではないからか、比較的オーソドックスです。

BYDは、実店舗での販売を重視。ディーラー数を増やしています。日本では今のところすべてEVのみの扱いなので、販売台数は伸びているとはいえ、それほどではないともいえますが、腰を据えて日本でビジネスをする体制で臨んでいます。

BYD全体では、実はEVよりもPHEVのほうが販売台数が多いというのは、最近、比較的よく語られる話です。当日のプレゼンでは、PHEV車のエンジンの熱効率が46.06%と紹介されていました。

シールの注目点としては、バッテリーの新技術があります。この写真はバッテリー本体で、ブレードバッテリーと称するものですが、BYDの既存モデルにも採用しています。バッテリーの種類は三元系リチウムイオン電池ではなく、リン酸鉄リチウムイオンになります。

リン酸鉄は低価格ですが、エネルギー密度は三元系に劣ります。しかし耐熱性などが優れるので、セルを、冷却のための隙間少なく密に組むことができるため、搭載時のエネルギー密度では、三元系に対する不利をカバーできます。BYDの場合、セルを板状のブレードに成型し、それを密に並べているわけです。

さらにシールでは、セル・トゥ・ボディといわれる方法で、このブレード状のセルをバッテリーパックを介さずに、直接シャシーに並べて搭載することで、よりいっそう効率的に車体に搭載しています。青い部分がブレードバッテリーを何枚も重ねた本体部分です。

この方法では、一般的にリサイクルが容易でないとはいわれますが、車体の軽量化にもつながり、より効率的な設計方式といえます。この技術は中国が先行しているようで、BYD製も含めて中国製バッテリーを搭載するテスラでも採用されています。

こういったEVの合理化、低価格化技術で、中国車は先行しているという状況です。

シールは「導入記念特別価格」で見ると、4WDモデルで572万円、FFモデルでは495万円です。航続距離はFFでは640kmで、コストパフォーマンスは非常に高い。

BYDのEVは、コストパフォーマンスに強みがあります。ATTO 3やドルフィンなどの大衆車クラスでは、それがストレートに効いていそうですが、上級クラスとなると、ユーザーはコストよりブランドイメージなどを重視するかもしれません。

ライバルはテスラのモデル3あたりになると見られます。ユーザーの好みの問題はありますが、純粋にEVのセダンを必要としているユーザーがいるとしたら、シールは有力な選択肢になりそうです。

(レポート・写真:武田 隆)

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