シトロエンC5Xについて

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シトロエンC5Xが発表されました。新世代のシトロエン上級モデルですが、DSブランドとの違いが興味深いところです。

C5Xの日本での発表は東京都現代美術館が会場。デザインへのこだわりが感じられます。

会場入口のパネル。C5Xには、かつてのシトロエン上級モデル、CXへのオマージュがあるのがわかります。CXの後のクルマはC5Xの原型となったコンセプトカーのCXPERIENCE。

CX同様のファストバックボディを採用したC5X。かつて中上級シトロエンのトレードマークだったのものが復活しました。

ただリアホイールを隠して、スムーズに徹したボディのCXと比べて、C5XはSUV的な雰囲気。ホイールアーチに樹脂パーツもついてタイヤの存在を強調し、タフネスも感じられます。

ちょうど日本の次期クラウンのセダンも、ファストバックボディにSUV的雰囲気で、同じです。保守本流のクラウンと、前衛で知られたシトロエンが似た車型というのも、感慨深いものがあります。もちろん、両者は実際には見た感じも違うし、目指すところも違うわけですが。

もうひとつ注目は内装です。モダンですが、むしろオーソドックスというくらい落ち着いて、ケレン味がないのが特徴。

各部の形状だけでなく、色味も落ち着いています。これはシトロエンでも上級モデルということで、あえてそうしたとのこと。

シート生地や各部に施されたステッチなどの模様が、シトロエンのトレードマーク、ダブルシェヴロンの図案になっているのがユニーク。相当凝っていて、デザインチームがこだわった部分だそうです。ただ、いわれなければ気づかないくらい、自然な意匠です。

発表会にも登壇したC5Xのカラー&マテリアル担当の日本人デザイナーの柳沢知恵さん。日産・ルノーを経て移籍したそうですが、C5Xの開発プロジェクトのための期待される人材であったようです。

柳沢さんはC5Xの内装の表皮の素材と色についてのすべてを統括。C5Xの内装は、落ち着いた渋みがあって、和モダンのような趣。新しいシトロエン上級モデルの方向性をこのC5Xで定めるにあたって、日本的な美意識をとりいれたくて日本人を採用した、というわけではないとは思いますが、結果的にはそんな雰囲気にも思える内装です。

こちらはDS(DS7)の内装。シトロエンと違ってきらびやかで、フレンチ・ラグジュアリーの典型的なものを体現しています。誤解をおそれずにいえばコテコテのフランス風。フランスの高級の王道という感じ。

2010年代にDSブランドが新しく立ち上がるときに、ルイ・ヴィトンからデザイナーが移籍し、カラー&マテリアルの担当についています。DSはオートクチュールの自動車版というような、華美な世界観です。それに対して、シトロエンが久々に新たに上級車を世に出すときに、日本人の柳沢さんを起用した。その真意はわかりませんが、結果的にはDSはとことんフランス流、シトロエンはちょっと和の文化にも通ずるような世界観になっています。

DSブランドはシトロエン・ブランドから分離独立して、リュクス(ラグジュアリー)のブランドに徹しています。残ったシトロエンは、よりベーシックなものになり、今までとくに2014年のC4カクタス以来、ベーシックモデルを中心に、新しい世界観を強化していました。それがC5Xで上級モデルにも本格復帰した形です。

C4カクタスでは、部分的にいろいろ前衛的なデザインも採用し、シトロエン党からは歓迎されましたが、一般ユーザーには受け入れられなかったようです。そこで「シトロエンらしさ」の表現が少し仕切り直しされ、同時に上級カテゴリーに新たに復帰するということで、いわば鳴り物入りで開発されたのがC5Xだといえそうです。

(レポート:武田 隆 写真:ステランティス・ジャパン/武田)

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