JAIA試乗会2018(プジョー3008+5008)

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今年も2月に大磯プリンスホテルを会場に行われたJAIA(日本自動車輸入組合)での試乗会に参加。2日間で計22台に試乗しました。

22台のうち、今回報告するのは、プジョー5008と3008の2台。この2台はホイールベースが長短の兄弟車ですが、とくに5008は印象的でした。「今日乗ったなかで金メダル」と、担当者に言ってしまったくらい。ボディカラーが金色だったから、というのもありますが、いたく気に入ってしまったのはたしかです。

印象的だったのは、その走りの身のこなし。乗り心地のソフトさと、ステアリング入力に対する車体の動きの自然さ。やや荒れた路面を走るとき心地よく、右へ左へハンドルを回して、コーナーを通過していくのも気持ちよいものでした。

SUVなのでやや腰高で、タイヤも大きめです。同じプジョーでも通常のハッチバック乗用車の308とは趣が異なり、今回同じ日に乗ったシトロエンC3ともやや似て、雲にのったようなフワフワ感のある、シトロエン的な乗り味と思いました。ただ、独特感は個性派ブランドのシトロエンほどはなく、中道派的ブランドのプジョーらしく、より自然。さらに車格がC3よりは上なので、全体に洗練されて、安物感もなく、しっかり作り込まれています。

サスペンションは比較的ソフトなので、車高の高さもあいまって、ロールします。そのロールの仕方が絶妙と感じました。ステアリングを切った分に対して、ロールの量もスピードもちょうどよく、しかるべきところまで傾いてじわっと止まって安定します。ロールしないスポーティー車だと、安定したままレールに乗って曲がるようで、グリップ限界ぐらいまでがんばって走らないと今ひとつおもしろくないですが、ロールが大きなクルマはスピードを上げなくても、ロールの動きがあるので、「曲がっている」実感があり、ロールスピードをスムーズになるようコントロールして走る楽しさがあります。この5008は、まさにそれを楽しめるクルマという印象でした。

このあと乗った3008のほうが足が硬めだったので、5008がよかったと担当者に話したところ、この5008はグレード的にちょうど諸々のバランスがよいということでした。今回乗ったのは、3008のほうはGTラインという少し上級グレードで、5008はAllureというベーシックなグレードでした。エンジンはどちらも1.6リッター・ガソリンですが、5008としては前が軽めで軽快感があり、さらにタイヤがミシュランのオンロード用なので、舗装路ではスムーズということでした。ミシュランのプライマシー3ですが、サイズは225/55R18で、オフロード対応タイヤを履く3008とサイズは同じです。

エンジンは1.6リッター・ガソリン・ターボ。回るフィーリングはよく、1550kgに対して160ps、240Nmなので、力は必要十分。前席では非常に静かですが、後席(2列目)ではややロードノイズが目立ちました。

内装は近年のプジョー独特の、小径ステアリングの上からメーターを見る「i-コクピット」。3008と基本的に共通ですが、今回乗った車両は、5008のほうが下位グレードになるので、ややシンプルな装備です。右側のタコメーターが時計まわりと逆回転になるのは「i-コクピット」でおなじみですが、液晶メーターになって文字が大きくなったのか、従来の308などよりもやや見やすくなった気がしました。従来のメーターでは細かくて見にくかった速度表示も、中央に大きくデジタルで表示されています。

5008は3列シートを持つので、7人乗りです。3008よりもホイールベースが長く、2840mmあります。全長は4640mmなので、それほどは大きくないので、取り回しの心配は少なそう。ただし3列目シートはさすがに補助席程度。通常の使用では畳んで、ワゴンのように広い荷室を活かして使うのがよさそうです。

いっぽう3008はGT-Lineというグレード。装備が充実していますが、エンジンはAllureと同じで、1.6リッターのガソリン・ターボ。写真の奥が5008ですが、ボディ後半部を伸ばした兄弟車が5008になります。5008のほうがワゴン的なボディ形状で、3008はリアを絞り込んだりして、よりパーソナルで軽快感があります。

顔つきなどは5008と共通。ハッチバックの308などよりも、造形的に凝ったデザインで、人によってはくせがあると思うかもしれませんが、SUVのためかオーバーハングのボリュームがあり、妙にスラントノーズ風などにしていないぶん、安心して昔ながらの「クルマらしく」感じられます。適度に先進的で悪くないデザインと思った次第。細部のフィニッシュは質感が高く、この辺は近年のプジョーは「彫刻」の美しさにこだわっているのが感じられます。

内装は5008と基本的に共通。今回の車両はグレードの関係で、5008よりもやや装飾が充実しており、ステアリングにもメッキ部分があります。「i-コクピット」の立体的造形がわかります。

シートは5008と同様で、ファブリック調のものが装着されていました。クッションも悪くなく、乗り心地にも貢献していそうです。ちなみに今回の2台の車両は、ファブリック地がダッシュボードやドアトリムなどにも比較的広い面積で使用されていますが、これも好印象です。内装にウッドや革ばかり使うのもやや重々しいもので、ファブリックの趣味のよいものを使うことで、適度にカジュアル、モダンで、上品な印象を醸し出しています。

メーター部分は、液晶化されています。5008とおそらく共通で、今回は時間がなかったものの、液晶なのでモードを変えるとデザインが変わります。スピードメーターは、20、40、60、、と10の位が偶数になっています。フランス車は、近年これが奇数のことが多く、フランスの制限速度が、90km/hとか130km/hとか、奇数であることに由来するといわれます。なぜこの3008/5008が偶数になったのかわかりませんが、グローバル化に対応したのでしょうか。

シフトレバーは、最近のクルマの傾向で、シフトゲートをガチャガチャと前後させて操作するようなことはありません。マニュアルモードにするにはシフトレバー付け根の「M」ボタンを押し、あとはパドルで「+」「-」の操作をします。さらに、「SPORT」モードボタンが見えます。「SPORT」にすると、ステアリングが重くなり、エンジン音の音質が変わります。ステアリングは「SPORT」にしたほうが、高速では直進が安定し、山道でも的確に走れる印象です。「SPORT」時のエンジン音については、308などと同様に、スピーカーで音を流しているようです。これはほとんど人工的な感じはなく、自然にエンジン音の高鳴りを楽しめます。

後席は3人がけで、5008と違い、2列シートになります。試乗車はパノラミックサンルーフ付きのため、車重が1500kgあり、5008 Allureより50kg軽いだけですが、3008 Allureのサンルーフなしモデルだと1460kgとだいぶ軽くなります。

この3008 GT-Lineは、少し硬めで、きびきびと走ります。基本流儀は5008と共通といえそうですが、足回りの設定などのせいで、ひきしまった印象で、ロールも早く収まります。実際に山道をハイペースで走ったりするには、これくらいのほうが満足して走れるのかもしれません。舗装が荒れたような箇所では、うまくいなして快適に走りましたが、街中などでは、あまりソフトな乗り心地ではなさそうです。今回の3008 GT-Lineの装着タイヤはコンチネンタルのコンチクロスコンタクトLX2でした。

3008GT-Lineはサンルーフその他のオプションなしで、399万円。5008Allureは、やはりオプションなしで404万円。価格はそれほど変わりません。あとは同じグレードで比べたとき、乗り味がどれほど変わるかですが、5008Allureが、まずは印象的でした。

3008/5008とも、ディーゼル搭載モデルが存在し、車体の大きさを考えると、力強く走るにはそちらが買いかもしれません。しかしとくに今回の5008 Allureの乗り味のよさは、捨てがたいものがありました。

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ということで、5008はこの同じ車両を後日借り出して、400km弱走りましたので、追ってレポートします。

(レポート・写真:武田 隆)

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