JAIA輸入車試乗会2023(アウディQ4 スポーツバックe-tron)

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毎年恒例のJAIA輸入車試乗会。同じプラットフォームを使用するフォルクスワーゲンID.4とアウディQ4 e-tronに試乗しました。今回はQ4 e-tronの印象。

Q4 スポーツバック40 e-tron。スポーツバックは、リアがファストバック形状。全高は1615mmで、ID.4の1640mmよりもやや低め。ID.4と同様、ドアより下をブラック塗装にして車体の厚みを薄く見せています。

アウディのEVは、デザイン的に既存モデルと大きな違いがない印象。中身はID.4と同じで、モーターはリアのRWD。戦後のアウディはDKWを源流とし、FWDが身上。1980年代以降は、FWDから発展した4WDをトレードマークにしてきました。記憶のかぎりでは、一部のレース専用車などを除くと、市販車でRWDというのはなかったと思います(限定車でR8 RWSというのはあったようですが)。RWDなのは、ちょっとした「事件」です。

フロントグリルは大きなものが付いていますが、EVなので風をとおさないもの。しかし通常のエンジン車のグリルと違和感のないような表面形状になっています。

リアはこんな感じ。スムーズな丸みを帯びたルーフライン。リアエンドにはスポイラーもデザインされています。

こちらは通常のQ4 e-tron。スポーツバックも同じですが、前後フェンダーのふくらみは意外に目立ち、いわゆるブリスターフェンダーとなっています。スポーツ志向を感じます。

室内のデザインは、外観同様ですがID.4とはまったく異なります。最新のアウディの傾向に沿ったものです。

メーターパネルはこんな感じ。「電費」がkm/kWhで表示されています。

シフトスイッチは、ID.4と違い、センターコンソールにあります。

ID.4と同じプラットフォームで、床下にバッテリーを敷き詰めており、やはり床が少し高く、後席座面が高めです。

この車両は、今回乗ったEVの中で、唯一ルーフがガラスサンルーフではないものでした。それでも頭上スペースは十分で、足元も広く、後席居住性は非常によい。

乗った印象としては、ID.4と大きな違いはなく、手堅くまとまっているEVという印象です。ただ足が硬いのが気になったところ。ダンパーは可変式で、ダイナミックモードで路面荒れ気味の田舎道を走ると、硬さが目立ちました。そのぶんきびきびとカーブを曲がるともいえそうですが、ギャップを超えるときのショックなどけっこうなもの。ノーマルモードにしても、硬い印象は残りました。車体剛性が高いので、不快感はないのですが。

硬さの要因として、タイヤに思いがいきました。履いていたのは、ID.4がスタッドレスだったのに対し、夏用タイヤで、タイヤサイズは255/50R19なので、ID.4の20インチより小径ホイールですが、こちらのほうが路面タッチが硬いのは間違いない。ハンコックのVENTUS S1 evo3というEV用タイヤで、硬いという評価もされているようです。

ちなみに写真は後輪ですが、ブレーキはドラムでした。EVは回生ブレーキを多用するので、スペックを落としても良いということなのでしょう。

動力性能は、今回は速いEVに多く乗ったので、とりたてて感じることはなく、十分速いがEVとしては中庸的という印象。操作に対する加速や減速のマナーは洗練されていて、さすがアウディという感じ。ブレーキのフィールは非常によく、回生ブレーキと機械式ブレーキの連動も悪くないようです。

ID.4との違いは、デザイン以外にはあまり感じられませんでした。乗るクルマが多くて、集中して比較できなかったのもあると思いますが。両車はスペック的にはだいたい同じで、モーター出力は150kWで同じ。車重は2100kgなので、ID.4の2140kgよりもわずかに軽く、ホイールベースは2765mmで、ID.4の2770mmと実質同じ。バッテリー容量は、Q4が82kWh、ID.4の77kWh。WLTCの航続距離は594kmで、なぜかID.4の618kmを下回ります。WLTCの電費が145Wh/kmで、ID.4の139Wh/kmよりも劣るからですが、その理由はよくわかりません。

価格はID.4が648.8万円で、Q4は709万円。VWとアウディのブランド位置づけを考えると順当ですが、どちらを選ぶかは好みの問題といえそうです。

Q4 e-tronの感想は、昨年乗ったe-tronで感じた感動に比べれば、ふつう、というものです。e-tronは洗練の極みでしたが、Q4 e-tronはそれほどではなく、とくに足の硬さが残念。ただ足以外は、十分に洗練されていたとは思えます。タイヤの違いや今後の熟成で、印象は変わるとも思えます。

Q4 e-tronはメーカーではコンパクトと言っていますが、格付けが「4」なので、アウディ車のなかでは中間的モデルになります。e-tronは今年に入り、Q8 e-tronを名乗ることになったので、その正体は「8」。洗練の度合いが違うのも当然か。

Q4 e-tronはアウディのEVとして妥当なクルマといえそうです。ID.4もVWとして妥当なEVと思います。VWグループとしては、EV化をしても、各ブランドの立ち位置、特徴は維持していく必要があるはず。今後全車がEV化するのか、エンジン車との併売が実際いつまで続くのか、わかりませんが、とりあえずEVにシフトをしても、各ブランド全体が平行移動して、相互の関係性は維持されるのでしょう。

EVになっても、あまり意外性のないクルマになっていますが、EVであることよりも、アウディであること、VWであることが重要なのでしょう。それだけ高い評価を確立しているブランドなのだと思います。

(レポート・写真:武田 隆)

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