JAIA輸入車試乗会2023(BMW 740iの印象)

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毎年恒例のJAIA輸入車試乗会。BMW 740i Mスポーツに乗った印象です。

7シリーズは、BMWセダンの最上級。伝統ある車種ですが、X7などのSUVが増え、また新興国中国などでの需要が増え、その姿が変化しているようです。フロントマスクはインパクト大で、ロールス・ロイス風ともいえますが、高性能ロボットのようでもあります。

前からの威圧感だけでなく、全体に大きいので迫力があります。スタイリングはスポーティーというよりは、やはりロールス・ロイスのようというか、直線的な構成で、躍動的なタイプではない。大型高級セダンとしては、威厳があります。

3シリーズセダンと並ぶと、一見相似形のようでも、実際は車高の高さが目立ちます。以前の7シリーズは、下位モデルのセダンの前後(および左右)を引き伸ばしたようなスタイルで、プロポーションとしてはむしろ低く長い印象でしたが、この最新の7は高さが目立つ。全高は1545mm、小山のように大きく感じます。

7シリーズは、EVのi7でも車体を共用しており、i7は多くのEV専用シャシーのクルマと同じように、ホイールベース間にフラットにバッテリーを敷き詰めるシャシーを持っています。そのぶん車高が高いわけです。

いっぽうフロント部分には、従来車と同じエンジンルームスペースを確保しているので、ノーズもボリューム感がある。BMWとしては、フロントグリルを縦長にして大きく見せるのが最近の傾向で、あえてこういうスタイルを保っているとも思えます。

デザインの流儀が、従来のBMWから大きく変わってきています。室内はこんな感じで、最新BMWの定番カーブドディスプレイを採用し、ダッシュボードはシンプルですが、その下を横幅いっぱい、ドアまで続く、緑に発光するクリスタルのラインが貫いています。クリスタルはシフトスイッチなどの各種操作スイッチにも使われています。

クリスタルとは、従来の硬派なBMWのイメージに合いませんが、最近のBMW上級車は、クリスタル好きのようです。この緑の発光は、ほかの色にも変化します。新興国の富裕層も増えた、21世紀もたけなわの2020年代の今や、自動車の室内の眺めは変わってきているようです。

カーブドディスプレイは、下位モデルよりも大型です。カーブドディスプレイとともに、BMWの売りは、音声対話システムの充実です。各メーカーやり始めていますが、現時点では、個人的にはBMWの優秀さに驚いています。ナビの操作はもちろん、窓の開閉やらいろいろやってくれ、音声の認識も優秀だし、AIの(女性の)話す言葉も非常に正確で丁寧です。

ただ「混線」もあります。試乗のメモに、一人で録音のために話していたら、勝手に反応してナビの目的地を設定したりし始めました。無視していると「どこへ行きますか?、どこへ行きますか?」、「もう一度お話しください」などと、ときに困ったような声で聞いてきます。そのうちあきらめて「対話」打ち切りになりますが、今回乗ったBMW車で何回かそれがありました。本来「OK、BMW」と言って対話が始まる設定ですが、「BMW」という言葉に反応して、むくむくとAI女性が目覚めていたようです。まだまだ進化途上ですが、こういった電脳の進化は速いし、潜在的にはすでに「右へ曲がって」といえば、曲がる能力はあるので、もう「ほぼロボット」。内装が今までと変わったとしても、当然のことと思えてきます。

後席はこんな感じ。ぜいたくそのもの。今回はそこまでチェックする余裕なしでしたが、天井に跳ね上げられている大型モニターを下ろして、「上映」も楽しめます。シートは前席も快適でした。

走りについては、上級セダンらしい洗練でした。室内は静かです。ただ、ロードノイズは路面によってはありました。サスペンションは、やはり快適さでは最上級ですが、ソフトさに終始するわけではなく、とくにスポーツモードではそれなりの硬さもあります。このクルマは740iのMスポーツなので、やや締まり気味の設定なのかもしれません。

エンジンは3リッター直列6気筒のガソリン。やはり快音、スムーズで、気持ちが良い。ここだけは昔ながらのエンジン車らしい軽快感が生き残っているという感じ。スポーツモード時には、シフトをSモードにして、パドルを1回操作するとすぐにMのマニュアルモードになり、回転を上げて走ることも可能。クリスタル仕立てかつリムジンのような内装ながら、そういう伝統的スポーツらしさを残しているところに、BMWの意地がありそう。

ワインディングをとばせば、それなりの身のこなしで、駆け抜けると思われます。ただ、全長5390mm、車重2120kgのクルマでは、よほど雄大な道でないとなかなかその気にならないかも。

この内装とこの外観、このエンジンという、世界観の違うものの組み合わせがおもしろい。直列6気筒エンジンは「旧世界」で、外観と内装は「近未来」。ある意味、大変革時代の過渡期のクルマか。両方の世界を味わえます。

夜にはスワロフスキー製ヘッドランプが輝き、巨大グリルの枠も光るようです。このクルマ、とくにフロントマスクがインパクト大ですが、クルマの中身を知ると、これくらい前衛的な顔も、納得がいきます。ボディ全体のシルエット、フォルム自体は3ボックスセダンで、メルセデスEQSなどよりも保守的、守旧的ですが、ひとえに顔面で、前衛性を表現している。そのように解釈した次第です。

(レポート・写真:武田 隆)

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