DS3クロスバックに試乗

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DS3クロスバックに試乗した報告です。市街地のほか、300kmあまりの距離を走りました。走った感じが好印象でした。

最初は試乗会で都内を走りました。外観デザインは、なかなか個性的です。新進のプレミアムブランドとして存在感を発揮していますが、やりすぎではなく、先進的でありつつ高級感を出しているのがフランス的のように思います。

ボディカラーもこの国ならでは、このブランドならではのもので、なかなかほかではない色です。Bピラーは「シャークフィン」と称しています。この「サメ」はいつも思うのですが、後ろ向きに泳いでいる‥。先代に相当するDS3からデザインを継承しつつ、5ドア化され、クロスオーバースタイルになったわけです。

白だとこんな感じ。ところどころに入ったプレスラインがアクセントになっています。一見バラバラな入り方がユニークです。プレスラインでアクセントをつけて彫刻的造形に見せるのは、DSが得意としているテーマです。

内装こそがDSの本領発揮ともいえます。DS各車は、オートクチュール的なこだわった仕立てで、シックでモダンなデザインが施されています。このDS3クロスバックはダイアモンド型モチーフがテーマです。これもなかなかクルマでは見かけないデザインで一見奇抜ですが、さすがフランスで、高級の表現に長けているので、好きかどうかはともかく、デザインとして受け入れてしまう本物感がある気がします。そのうちDSブランドだけ、PSAではなくLVMH傘下に入ったりして‥、などと思いたくなる世界観です。

センターコンソールのスイッチ類もこんな感じです。ちなみに左上にドライブモードのスイッチがあります。スポーツモードでは、パワステの重さも変わります。トランスミッションはアイシン製8速ATで、よくできています。MTモード・ボタンがレバーに付いていますが、ステアリングにはパドルも付きます。

居住性は、後席についてはまずはちゃんと乗れますが、足元はあまり余裕がなく、視界もやや閉塞感があります。シャークが視界のじゃまをしています‥。全長約4.1mの4ドアボディなので、もう少し広くもできそうに思いますが、クルマのコンセプトからここに落ち着いたのでしょうか。シトロエン・ブランドだったら、もっと開放感を重視しそうにも思います。

ラゲッジルームはちゃんとした広さがあります。この下にはスピーカーユニットが入ります。

ドアハンドルは収納式です(冒頭の写真が、収納したところ)。撮影しようとして、手で押し込んでも、すぐにまた出てきてしまうなど、慣れないととまどいます。リモコンで操作するか、リモコンさえ持っていれば、乗り降り時には不便のないようになっているようです。

* * *

ところで、走りについては、非常に好印象でした。低速ではやや硬めでごつごつとしたタイヤの感触がありますが、少しスピードに乗ると、非常にしなやか。サスペンションがしっかりストロークしている感じがあり、シトロエン・ブランド車よりはひきしまっていますが、独特な弾力感を感じて、気持ちよさがあります。非常に軽やかです。

タイヤは乗った2台とも18インチでしたが、よく履きこなしているといってよさそうです。 PSAの新しいCMPプラットフォームをいち早く採用しており、剛性が高いので、18インチの大きさに負けないようです。ただ17インチだともっとしなやかかもしれません。18インチならではのこの佇まいは、捨てがたいものがあるかもしれませんが。

基本的にはきびきびとよく走ります。一見軟派というか銀座の高級ブランド店が立ち並ぶ通りあたりが本拠地のようなクルマですが、走ってみれば、野山を実に調子よく駆け抜けます。高速道路でもよく走ります。フランスでは、パリの高級ブランドの幹部たちも、運転すれば郊外でもオートルートでも、ビュンビュンととばして走るのがあたりまえ、なのかどうか知りませんが、とにかく、走り好きを満足させるクルマです。そこがこのクルマのおもしろいところ、魅力です。なりに似合わずと言いそうですが、実はこのボディの造形にはそういうキャラクターが織り込まれているようにも思います。

エンジンも走りの魅力の大きな部分です。例によってPSAおなじみの1.2リッター3気筒ですが、このピュアテック・エンジンは、ヨーロッパのエンジンオブザイヤーを獲り続けているということで、名機と認識してよいのでしょう。低回転では音質としては3気筒かもしれませんが、ちょっと回せばむしろ4気筒よりも気持ち良さがあり、ターボ付きなので力も十分です。音質にはターボらしい野太さもあり、ガソリン・エンジンらしい、いい音が楽しめます。燃費もよく、隣に大御所を乗せたため終始控えめに走ったのもありますが、渋滞を含む300kmの行程で16.2km/lでした。

試乗会では旧型のDS3にも試乗できました。乗り比べみると、今まで感じなかった足回りからのブルブルする振動が感じられ、ステアリングにも伝わります。こちらは16インチなのにそうなので、新しいCMPプラットフォームが進化しているのがわかりました。

旧DS3はラリーで活躍したこともあり、個人的には最も魅力を感じるクルマのひとつですが、これからの時代は走り好きでも、DS3クロスバックのようなクルマを選ぶことになるのかもしれません。

(レポート・写真:武田 隆)

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