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新刊『鉄道重大事故の歴史 鉄道事故に見る安全技術の進化』刊行にちなみ、2023年8月28日のニュースに引き続き「鉄道遺産のまち」と呼ばれている岡山県津山市の鉄道遺産を紹介します。今回は津山と鳥取を結ぶ因美(いんび)線の鉄道遺産です。(レポート:編集部)

新刊『鉄道重大事故の歴史 鉄道事故に見る安全技術の進化』刊行にちなみ、2023年8月28日のニュースに引き続き「鉄道遺産のまち」と呼ばれている岡山県津山市の鉄道遺産を紹介します。今回は津山と鳥取を結ぶ因美(いんび)線の鉄道遺産です。(レポート:編集部)

因美線と言えばかつて急行「砂丘」号でのタブレット閉塞と腕木式信号機で有名な路線です。
タブレット閉塞は単線区間を安全に運行するシステムとして、全国各地のローカル線に採用されていました。写真はかつての「砂丘」号の風景です。

タブレット閉塞は、1つの区間に1本の列車しか走れないように、2つの駅間で通票を使って管理する方式です。通票を入れるものをタブレットと言います。タブレット閉塞の詳しい仕組みは「津山まなびの鉄道館」でも紹介されています。

その因美線は1932年に全通。2022年には開業90周年を迎えました。
写真は、2022年秋に走った「みまさかスローライフ列車」です。前面には開業90周年記念のヘッドマークが付いています。

「みまさかスローライフ列車」は、2007年から毎年、春と秋に2回、土日に津山駅と智頭(ちづ)駅を往復する「日本一遅い」イベント列車です。
その理由は、主要駅に20〜30分程度停車しながら、手作り感あふれる地元の方々の歓迎やおもてなし、ふれあいを楽しみながら走るためです。

因美線には全国的に有名な木造駅舎が多くあります。まずは、美作滝尾(みまさかたきお)駅です。
駅舎は「小停車場本屋標準図」第3号型となり、JR西日本の「鉄道登録文化財」や国の「登録有形文化財」にも指定されています。

美作滝尾駅は「男はつらいよ 寅次郎紅の花」(第48作)の冒頭シーンや、乃木坂46のミュージックビデオ「僕たちのサヨナラ」などの映像作品でも見ることができます。

こちらは美作滝尾駅の貨物上屋1号。岡山県内に唯一現存する貨物上屋で、産業考古学会の「推薦産業遺産」にも指定されています。後ろに見えているのは腕木式信号機。こちらは最近設置されたもの。

同じく木造駅舎の知和(ちわ)駅。駅舎は「小停車場本屋標準図」第1号型。知和駅は「秘境駅」としてもよく知られています。

レイアウトが美作滝尾駅とは違っているのが分かります。

同じく木造駅舎の美作河井(みまさかかわい)駅です。この駅は岡山県と鳥取県の県境に位置する駅で、「小停車場本屋標準図」第2号型となります。
急行「砂丘」号の通過時のタブレット受け渡しの光景が多くの鉄道雑誌に紹介されていました。

また、この美作河井駅には、転車台が残っています。この転車台はJR西日本の「登録鉄道文化財」と国の「近代化産業遺産」に指定されている貴重なものです。

この転車台は、除雪のために蒸気機関車を展開させるために設置され、使用されなくなった後、写真のように埋もれていたものです。これは、2006年9月の写真です。写真中央部分に転車台が見えます。

それが2007年4月に地元市民団体の提案により鉄道ファンが集まって発掘されました。これは発掘イベント時の写真です。

この転車台は40フィート型と呼ばれ、国内では最も古い転車台のひとつです。1872(明治5)年に開業した新橋駅に設置された転車台と同じ形式です。
同型の転車台は、現在、愛知県にある博物館明治村、青森県にある津軽中里駅や津軽五所川原駅にも残っていますが、完全な形で残るのはここだけという貴重な鉄道遺産です。

6本のボルトが特徴的な転車台の中央支承部分。ここで転車台が支えられる仕組みです。
側面部分の塗装記録を見ると「12M40」と記されており、40フィート型転車台であることが分かります。

因美線の魅力は鉄道遺産というだけでなく、その沿線風景にもあります。転車台の残る鳥取県の若桜鉄道(隼駅は「バイクの聖地」になっています。)や津山線の観光列車「SAKU美SAKU楽」とセットで因美線を楽しむことができます。