JAIA輸入車試乗会2022(アウディ e-tron スポーツバック/e-tron)

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JAIA(日本自動車輸入組合)試乗会で乗ったクルマのレポート。今年はEVが多かったですが、なかでも興味深かったのは、同じ先進的EVであるテスラとアウディe-tronの違い。今回は2台のe-tronです。

これはe-tronスポーツバック55クワトロSライン。e-tronのスポーツバック仕様です。この車両はPRのデモカーのようで、派手なラッピングが施されています。

ボディサイド下端の赤のゼブラ模様は、EVだから電気に注意! かと一瞬思いましたが、まさか……。ふしぎにスポーティな雰囲気で、おそらくAUDI SPORTのテーマカラーだと思います。

今年2022年のダカールラリーに出場したRS Q e-tronが、似たようなカラーリング。

こちらはe-tron 50クワトロ・アドバンスト。通常のSUVボディです。ラッピングなしだと、一目でEVとはわからず。そういうデザインは採用していません。中身が違うのは、乗ればわかるのですが。

スポーツバックが「55」なのに対し、こちらは「50」なので、ややおとなしめですが、短い試乗では違いは認識できませんでした。

e-tron 55スポーツバックは、車重が2650kg、出力は300kW/664Nm。e-tron 50は2480kg、230kW/540Nm。車両価格は1291万円と1069万円。この2台は、ガソリン車のQ5とQ7の間くらいの大きさのクルマなので、EVとすれば意外に安い。ただ重さは、もう少し軽くなってほしいものです。地面(地球)も「重い」と思っていることでしょう。

スポーツバックのコックピット。アウディらしく直線基調で先進性を感じさせるデザインですが、アウディとしてはオーソドックスにも思えます。センターのモニター画面は上下2枚になっています。

こちらは通常のe-tronですが、基本的には同じのよう。この角度からだと、やはりモダンで先進的なデザインだなと思います。ステアリング横に、バーチャルミラーの画面が見えています。

そのミラーの表示。短い試乗だと、毎回元来のミラーの位置にあるカメラを見てしまいますが、慣れの問題でもありそう。外のカメラはもっと目立たなくできないかとも思いますが、既存のドアミラーとの違和感がないよう、同じような支柱の先にカメラを置いたのでしょうか。これが普及すれば、画面の位置も含めて、今後変化(進化)しそうな気がします。

OLED画面の解像度はすばらしいし、タッチパネルで表示画像の調整もできますが、スマホを思えば驚くことはない気もします。なにはともあれガラス越しに外のミラーを見るよりは、見えやすいのは間違いなし。

もうひとつふつうのクルマと違うのは、シフトのセレクター。黒いソフトパッドの右下にあるシルバーの部分を前後させて、操作します。初めて乗ると一瞬とまどいますが、操作はしやすく、動作も洗練されています。

さて乗った印象ですが、これがすべてにおいて極めて洗練されています。

まず第一に動力ユニットですが、モーターなのでスムーズなのは当然として、それにもまして洗練されている印象です。スポーティーなダイナミックモードを選んでも、アクセルペダル踏み込みに対し、出力の立ち上がりがスムーズです。モーターは発進から特大トルクを発するので、いきなりの大加速が可能で、E-tronもそれができますが、人間の感性に合うというか、その出方がいかにも洗練されています。

走行マナーも洗練されています。EVは重いバッテリーを低い位置に積んでいるので、落ち着いた乗り心地になるのが常ですが、それだけにとどまらない。路面の荒れた、狭い曲がった田舎道を走りましたが、4.9m、2.5トンのSUV型車体ながら、そこを実に気持ちよくしかも軽快に走りました。これはちょっと驚きです。

シャシーについては、高度な電子制御機構を搭載しており、電子制御で4輪のダンパーを個別にミリ秒単位で調整します。それに連動して、4輪のトルク配分も前後モーターや、4輪個別のブレーキ調整などで、コントロールします。

今回のスピードではそういう仕掛けがたいして働いていないとも思えますが、とにかく非常にスムーズで快適ながら、軽快に右左のカーブを曲がります。

とくに近年のアウディは、ハンドル操作や乗り心地などの車体の動きをはじめ、ドアノブの操作感に至るまで、洗練された動き・質感に徹底してこだわっています。操作に対して、自然なフィーリングで気持ちよく動くことを、緻密に追求している。アウディは先進技術投入も特徴ですが、それを人間の感覚で調整していくのがすばらしい。

e-tronはそれを、究極に極めたような印象です。ハイテクのEVといえども、ガソリン時代から培ってきた、洗練されたクルマづくりの延長線で進化している。それがアウディではないかと思った次第。その対極がテスラで、宇宙からやってきて、いきなりクルマづくりを実行したような、大胆さがあります。元来アウディのブランドイメージは、先進性にありますが、テスラが常識破りの革命だとすると、アウディはオーソドックス(正統派)とかコンベンショナル(伝統的)という感じ。しかし、既存のクルマ好きからすると、アウディの洗練は、ぐうの音も出ない感じです。

人類のクルマづくりは、泥くさく、モータースポーツもしながら、100年以上にわたって、洗練を追求してきました。その結果が今の自動車にあり、アウディはその先端にいます。現代のアウディはその目指すべき洗練のゴールを、各部門の開発者が皆共有して、こういうクルマができあがってくるのだろうと思います。

ガソリンだろうがEVだろうが、それ以前にクルマである、アウディである。短い試乗でおおげさですが、テスラと乗り比べたことで、そんなことを考えてしまった次第です。

ちなみにタイヤは2台ともスタッドレスで、乗り心地をよりソフトタッチにしていただろうとは思います。このホイールもまた先進的で、空力的なデザイン。フィンに見える部分は単なる図柄です。

(レポート・写真:武田 隆)

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