DSとはシトロエンDSをプジョー・シトロエンが合弁後に、洗練と前衛を兼ね備えた独立ブランドとして立ち上げた車種である。試乗したDS7 クロスバックはパリのエスプリと先進技術を盛り込んだ凝ったデザインとなっている。この中でE-tense4Ⅹ4モデルはいわゆるプラグインハイブリッドのSUVで、1.6Lのターボ付きエンジンとリチウム電池駆動の2台のモーターで走行し、合計馬力は300馬力が得られている。外観は比較的普通のSUVらしいデザインで、サイズ感も国産の2LSUV並みである。しかしボディーの各部と内装にはパリのデザイナーの意匠がふんだんに盛り込まれており、ダッシュボード中央にある時計も凝ったアナログ時計である。パネルのスイッチ類もダイヤモンド形をモチーフとした凝ったものだが、識別は容易で初めてでも戸惑うことは無かった。
実際に走ってみると約2トンの重量の割に軽々と走り、硬めのシートの割に乗り心地が極めてスムーズなのはDSアクティブスキャンサスペンションという独特のサスペンションシステムの効果と思われる。これはフロントガラスに装着されたカメラで前方の路面をスキャンしてこれから通過する路面の凸凹を識別し、四輪のショックアブソーバーの減衰力をリアルタイムで電子制御し、フラットで快適な乗り心地を保つシステムで、60年以上前にDSが導入したハイドロニューマティックサスペンションを超えた革新的なものである。コンフォートモードからスポーツモードに切り替えてもさほど大きな違いは感じられないが、アクセルを踏み込むと予想以上の加速力で追い抜きも簡単に行える。トランスミッションは8速の自動式で主に前輪を駆動するが、WLTCモードの燃費も14.0㌔と表示されておりハイブリッド車としてはイマイチだが、実用的な燃費と評価できる。このほかに赤外線カメラによる最新の運転支援技術が搭載され、ドライバーの疲れや脇見を監視して安全運転を支援する。
フランスのエスプリと職人芸が盛り込まれたこのPHEVの基本価格は約750万円であり、これをどう評価するかは議論の分かれるところかもしれない。同じ価格帯であればメルセデス・ベンツの各クラスの車もあり、もっと先進性を狙うならばテスラの電動モデルは500万円台でも買えるからである。高価な輸入車を売るにはどのような要素がユーザーの判断を左右するのかを探るためにDSのモデルは面白い提案をしていると思う。
(リポート:片山光夫)