前回に続いてジャパンモビリティショー会場で目についた、クルマ以外の展示をいくつか紹介します。
モビリティショーを名乗るだけあり、ロボットやドローン、船など、おもしろい展示が多数見られました。自動運転もそうですが「近未来技術」が「現在技術」になりつつあって夢物語でなくなっているので、興味深く感じました。

2年前の前回ショーの“大物”として、JR東日本の燃料電池電車の展示がありましたが、今回の“大物”はホンダのロケット。2025年6月に飛行(そして着陸)に成功していたものですが、不覚にもそれを知らなかったので率直に驚きました。そして運良くブースで、望外にも宇宙開発部門のトップの方に話を聞くことができました。
簡単な基本的なことを聞きたいだけだったので、非常に恐縮しましたが、ロケットのことをひととおり教わったのち、聞けばもともとはF1のまとめ役をしていて、さくらの研究所は私がつくりましたとのこと。さすがやはりエース級エンジニアが宇宙開発にも据えられているのだと感心しましたが、以前に燃料電池関連のトップの人に(やはりたまたま)話を聞いたときも元F1とのことだったので、ロケットもそうなのかと、驚いたわけですが、後日いろいろロケットのことを調べていたら、なんと同一人物だったことが判明(汗)。櫻原さんという方で、業界では有名な方と存じます。

近年のホンダは、燃料電池開発もさることながら、F1での一時の不振を超えて、無敵の強さを誇る状態になり(その後マクラーレン勢に年間ポイント数的には逆転されたとはいえ)、ホンダは経営面では混乱はあるものの、技術的にはやっぱりすごいと、感嘆していました。ホンダジェットの成功もそのひとつですが、今回聞いた話では、ロケット開発は、宇宙開発を始めると発表した2021年の1年前くらいからスタートしたばかりだとのこと。まだ小さい実験機とはいえ、難しい着陸までやりとげてしまうのは、たいしたものだと驚きました。

宇宙関連では、アルテミス計画で用いられる月面探査車の技術も、今回、散見されました。これはブリヂストンの月面用タイヤ。前回のJMSでも展示されましたが、今回まったく違う設計になっていました。前回はラクダの足裏を模したフェルト状の細かい金属繊維をトレッド面に採用していましたが、今回は金属プレートのトレッドになっています。よりオーソドックスになった印象ですが、ラクダの足裏方式だと、乗り心地は非常によいものの、耐久性を重視して金属プレートを開発したとのこと。

ブリヂストンでは、エアレスタイヤも展示していました。こちらはもちろん“地球用”ですが、この「AirFree」の技術は、月面タイヤにも活かされています。ブースでは、4軸式のスロー走行の小型バスに装着されていましたが、東京・小平のブリヂストンの技術センター周辺の路上で、軽自動車に装着して一般道をふつうの速度でテスト走行(実証実験)も行っているとのこと。だいぶ現実的になってきているようです。



宇宙関連技術では、KOITOが、月面車用のランプとLiDARを展示していました。たとえばランプの場合、厳しい温度環境に耐えること、放射線に対応するLED、レゴリスと呼ばれる微細な砂の嵐に耐えるシーリング、などがテーマとのこと。半導体を使う電子部品には対応温度があるので、ヒーターとクーラーを備えています。また、打ち上げには重量あたりで巨額な費用がかかるので(ブースで聞いたのは1kg10億円とか)、軽量化にも心血を注いでいるそうです。

これはブリヂストンのブースにあった、月面探査車の模型。ランプやLiDARと思しきものも装着されています。探査車はトヨタが担当しています。月面探査車は2029年の計画だと前回モビリティショーのときに聞きましたが、少し遅れる可能性もあるようです。つい先ごろH3ロケット打ち上げ失敗のニュースがありましたが、今後もいろいろ予定が変わることもあるのでしょう。

いっぽうやや現実的な技術になりますが、NGKスパークプラグのブースが意外にもというか、興味深かったです。これはスパークプラグの技術を活かした、水素エンジン用のプラグ。

すぐ横に水素ガスセンサーも展示されていました。右横にはアンモニアセンサーも見えていますが、NGKはO2センサーをつくっており、その技術を活かしています。O2センサーは、えびの養殖などで水の管理・調整に用いるのだそうです。ガソリン・ディーゼルの内燃エンジンが淘汰される未来が待ち受けるなかで、そうなったときへの対応をいろいろ進めているようです。

先ほどNGKのブースと書きましたが、会社名は日本特殊陶業です。そしてやや複雑ですが、NGKというブランド名は、スパークプラグでは今も世界的に使われていますが、新しいブランド名としてNiterraという名称が立ち上げられています。
Niterraとは造語で、ようはサステナブルを重視する今の国際社会に対応した名称です。とくにエンジン車廃止に邁進していたヨーロッパなど、海外ではエンジン関連技術というと、近年芳しくないイメージで、投資家からの資金が集まらないのだそうです。そんなことで、海外から先に数年前からこの称号に会社名を切り替えており、日本でも順次浸透させていくとのこと。

陶器の関係の事業も拡大しています。もちろんスパークプラグは引き続き変わらずつくり続けているが、きたるべき時に向けて新たな分野も開拓しているということです。自動車メーカーも、迷走が続く各国のエンジン廃止に関する動向に備えて、日本のトヨタにかぎらず事実上、柔軟な全方位的戦略を強いられていますが、エンジンの要部分の技術を専業としていたNGKのこの対応は、非常に象徴的に感じられます。

ブースにはスパークプラグも展示されていました。NGKはプラグの世界シェア1位で、40%ぐらいだのこと。現在3000種程度のプラグがあるそうです。レース用プラグも多数展示されており、そのなかにはF1のプラグもありました。1960年代のホンダF1第1期のものも展示されており、これの展示はけっこう珍しいとのこと。今は、フェラーリのF1に採用されているとのことでした。
(レポート・写真:武田 隆)

