ルノー・アルカナに試乗(1:ハイブリッド機構など)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ルノーの新しいクーペSUVモデル、アルカナに試乗しました。独自のハイブリッド機構、E-TECHハイブリッドを採用しているのが注目です。

アルカナはCセグメントのクーペSUV。SUVらしいタフネスを感じさせるボディに、軽快なルーフラインを組み合わせ、スポーティ志向のSUVとして、いい感じを醸し出しています。

フロントマスクは、今のルノーが展開するデザインを踏襲しますが、アンダーグリルの造形がスポーティで、精悍に見えます。さすがF1をやっているメーカーだ、と思いたくなります。厳密にはF1をやっているのはアルピーヌですが。

リアエンドの造形もなかなかスポーティです。ファストバックのルーフラインながら、はっきりとしたリアスポイラーがデザインされています。空力的にも見た目的にも効果がありそうです。

控えめですが、ルノー・スポール・ラインのロゴがフロントフェンダー部に光っています。ダブルのひし形マークがルノー・スポールの印。

コックピット内も、外観と同じような印象。シンプルな造形です。日本に導入されるのが、ルノー・スポール・ラインという、スポーティなグレードのためか、カーボン調のダッシュパネルや各部に入る赤のステッチなどで、いかにもスポーティな雰囲気です。

ステアリングはしっかりした握り心地で、ステアリング下部にはルノー・スポールの印が入っています。E-TECHハイブリッドを採用するこのクルマには、MT操作用のパドルも、シフトゲートやスイッチもありません。そのわりには立派なシフトレバーを持っています。

フロントシートは比較的しっかりしたサイドサポートがあり、横Gをかけてもどうぞと言う感じ。座り心地は最近のルノーの傾向なのか、ぴたっと張り付くウレタンのような感触は強くなく、どちらかというと骨太な感じでした。

ある意味より重要なのは後席。足元スペースも十分であるうえ、ヘッドルームも十分で、ファミリーカーとして成り立ちます。ファストバックのルーフラインが、そこを配慮したシルエットになっていることが窺えます。

リアの荷室も奥行きは十分な広さ。このフロアの板を外せば底はもっと深くなります。ハイブリッドのバッテリーはその下に収められており、SUVで地上高が高いので、荷室側にあまり影響がないようです。

車体下から見ると、左右タイヤの間に四角いバッテリーケース関連物が見えています。リアサスはトーションビームで、そのためにこの低い位置に大きなバッテリーを収めることができています。もちろんFFとわりきることで成立していますが、パッケージングとしては優秀です。

エンジンルームはこんな感じ。エンジンに並んで、電動ユニットの制御装置の銀色の頭が見えています。ハイブリッド車におなじみの光景ですが、電動ユニットのボリュームがそれなりにあり、ストロングハイブリッドであることがわかります。

ハイブリッド・パワーユニット。エンジンは1.6リッターで94ps。左下にリチウムイオンのバッテリーユニットが見えますが、容量は1.2kWh。

搭載レイアウトはこんな感じ。トーションビームのFFガソリン車は、左右後輪の間に燃料タンクやスペアタイヤを置くのが多いですが、E-TECHハイブリッドはそこにバッテリーを置いています。バッテリー搭載位置が低いのが印象的です。スペアタイヤを搭載しないから可能になったレイアウトです。燃料タンクは後席下あたりと思われます。

ハイブリッド機構の核心部。水色の円筒ケース内に収まるのが2つのモーターで、左側がメインモーター、奥の小径のがHSGといわれるサブモーター。2モーター式ハイブリッドながら、変速機構を持つのが特徴ですが、カギとなるのは断続機構としてドグクラッチを使っていること。通常の摩擦式クラッチよりコンパクトで、ダイレクト感、伝達効率が高いというメリットがあります。

レースカーによく使われるドグクラッチは、接続ショックが大きい弱点がありますが、それをなくすためにサブモーターが回転を同期させてショックのない接続を実現しています。これは秀逸なアイデアです。サブモーターは、駆動には使われず、発電とスターターモーターとして使われます。

この変速機システムは、通常のMT変速機や2ペダル式DCTと似ていますが、それらは通常では1枚、AT機能のあるDCTでは2枚の摩擦式クラッチを必要としますが、E-TECHは3個のドグクラッチでその役をこなし、シンクロも不要です。そのぶん回転同調用にサブモーターが必要ですが、それはハイブリッド用のものの流用なので、合理的です。

サブモーターのHSGは容量が小さいので、トヨタのTHSやシリーズ式ハイブリッドなどと比べると、エンジンに頼る部分はやや大きくなるかもしれませんが、メインモーターは十分な出力があり、バッテリー容量もあるので、EV走行が比較的多いことも含めて、電動アシスト力は充実しています。

E-TECHハイブリッドは、ルノーのF1技術が活かされているといいます。F1は2014年からハイブリッド化されており、ふたつあるF1のハイブリッド機構のうち、MGU-Kに近しいものといえなくもないですが、同じくドグクラッチを使っているとはいえ、機構としては別物です。走行状況に応じた高度で複雑なエネルギーマネージメント制御に、F1での知見が活きているとルノーは言っています。今ではF1はルノーからアルピーヌに「名前」を変えていますが、車体には「RENAULT E-TECH」の文字がパワーユニット上部の目立つ部分に書かれています。「E-TECH」はルノーの電動化技術の総称ですが、ハイブリッドであるという意味では、たしかにアルカナのE-TECHはF1マシンと近い存在です。

(続く)

(レポート・写真:武田 隆)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする