第41回輸入車試乗会(JAIA2022試乗会) VW Golf GTI/VW Golf TDI Active Advance(Clean Diesel)

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日本自動車輸入組合(JAIA)が主催する自動車ジャーナリスト向け第41回目試乗会は今年も2月2,3日の両日大磯で行われた。昨年はコロナウイルスの感染問題で流れ、1年ぶりの開催である。JAIAが当日配布した資料によると今回用意されたのは67車種で、そのうちリチウムイオン電池の電気自動車が17種、PHEVが14種、クリーンディーゼル車が9種で、残りの27種が普通のガソリンエンジン車で、純ガソリンエンジン車は約40%という結果となった。さらに特筆すべきはクリーンディーゼル車が9種と近年になく増えたことで、これは2015年に発覚したVWディーゼル不正問題以来鳴りを潜めていたものが、再度台頭したものと思われ、欧州の根強いディーゼル人気を示している。もちろんこれらの比率が輸入車の今後の比率となるわけではないが、少なくとも輸入各社の将来への売り込み姿勢を反映していると受け止められる。試乗できる車は事前の抽選によるもので、必ずしも希望が叶うわけではなく、例えば筆者は過去20年近く、ある高性能スポーツカーの試乗が一度も出来ていない。1日5枠、各80分の時間内を抽選で選ばれた車種を可能な限り多く乗り回すことになり、詳細な各種のセッティングを試すことも難しいが、数10種類の外国車をほぼ同時に乗り比べる機会は他には無く、ありがたく参加させてもらっている。

VW Golf GTI

DSGのついたゴルフを始めて試乗したのは20年近く前になってしまったが、このモデルはゴルフの8代目に当たる。小型ながら5人を乗せるのに十分な軽いボディーと強力なインタークーラーターボ付き2Lエンジンに7段のDSGトランスミッションを組み合わせたこのGTIモデルも、現在のEVや各種のPHEVモデルの前ではすっかり在来設計のモデルとなってしまった。特にゴルフは2000年以来大幅に日本市場に受け入れられ、ほとんど国産モデルと同様に扱われるまでに定着した。日本の道路事情に合わせた設計がきちんと取り入れられ、あらゆる面で破綻が無いことが評価されたのだろう。外部デザインも基本的に変わらないものの、細かい変更を加え年々熟成されてきた。20年近く見慣れたデザインではあるが合理性と端正なスタイルには飽きが来ない。

室内は簡素ながら十分な質感があり、操作性、操縦性にも問題は無いが下部がフラッとなったステアリングホイールは筆者にはやや太く感じられた。後席がやや狭いのはこのボディーでは致し方が無い。時代遅れとなった感があるのは、前席の調節がすべて手動であることで、コスト低減が徹底された結果と思われる。ターボの効きはごく自然で安定した高速走行へと導いてくれる。ゴルフの最近の売れ行きに以前ほどの勢いがないのも、このモデルへの新鮮な驚きが薄くなってしまったといえるのかもしれない。JC08モード燃費が13.7㎞/L、WLTCモードで12.8㎞/Lはその走行性能から言えば十分実用的である。徹底した合理化がされた割に基本価格が470万円程度というのは同時に試乗したTDI Active Advanceディーゼルモデルの約400万円の価格と比較してやや高いと感じるのは筆者だけだろうか。

VW Golf TDI Active Advance(Clean Diesel)

このモデルはディーゼル化された8代目ゴルフの最新モデルである。エンジンはツインドージングと呼ばれるディーゼルの環境性能対策をこれまでの倍に強化したもので、これによりNOxの排出量はこれまでより80%低減されるという。インタークーラー付きターボのエンジン音はかなり低く抑えられており、うっかりするとディーゼルであることを忘れてしまう。ターボの効きと低回転から発揮されるディーゼル特有の高トルクにより加速は強烈ながら乗り心地は極めてスムーズ。これでJC08モードともにWLTCモードの燃費で20㎞を超えるのは優秀である。

車内はGTIと同様に機能的かつシンプルで、操作性、操縦性にも問題がないがステアリングホイールは下部がフラットで太めの物で、日本の女性にはやや太すぎると感じられるかもしれない。前席の移動がすべて手動なのもGTIと同様で、日本市場向けに手慣れたものである。アクティブアドバンスの名の通り各種のオプションが盛り込まれておりLEDヘッドライトやヘッドアップ・ディスプレイ、ナビゲーションを含む純正インフォテインメント・システムが400万円を僅かに切る標準価格に含まれている。

車両重量は2L ターボ付きのGTIとほぼ変わらないものの走行中の安定感が高く、長距離ツーリングに乗ってゆきたい、と感じた。これはGTIとの重心位置の違いからくるものかもしれない。ハイブリッドや電気自動車が市場に出回りつつある現在、ディーゼルエンジンがこれからどれだけ利用されるかは未知数ながらも、今後5年や10年は変わらなく利用可能なはずであり、このモデルは性能的にも値段的にも非常に魅力のある車と感じた。

(リポート:片山光夫)

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