フォレスターに、都市部と山間部で試乗しました。e-BOXERのAdvanceにはその両方で。2.5リッターは、X-Breakが都市部で、Touringが山間部での試乗です。SGPの新プラットフォームの効力は抜群で、SUVとは思えないダイナミック性能に感嘆した次第。そのいっぽう無骨なフロントマスクについては、これでいいのか悪いのか、あれこれ考えています。
SUVは、大自然にも都会にも似合うというのが、そもそもの立ち位置。フォレスターの場合もそうです。ただしスバルの場合は都会派というよりはアウトドア派的で、SUVとして愚直に正統派であろうとしています。
新型フォレスターは第一印象は、旧型と変わらないというのが多くの人の見方です。とくにフロントマスク。キープコンセプトといわれがちです。今回のフォレスターは、スバルの新デザイン方針「DYNAMIC × SOLID」の下での意欲的デザインだと個人的には思います。実際かなり先代より存在感があります。
とくにボディサイドが先代から大きく変わり、SUVらしい力強さがあります。ただやはりフロントマスクは保守的な印象です。あえてSOLIDなデザインにしたのだとは思いますが、先に出た新型インプレッサ/XVがスタイリッシュになっていたのに、ややがっかりの感が正直あります。
最近近所に新型フォレスターがやってきました。その顔を見ては毎日あれこれ考えています。結果的にひとまず、まあこれはこれでスバルらしい顔だし、いいか、という気になっています。自分のクルマでもないのに失礼な話ですが。考えるのは、果たしてこの顔がこのクルマの走りに合っているのか、ひっかかったからです。ただ単にSUVというのなら、この顔も悪くないと思うのですが、走りが洗練されたクルマだから、この無骨さは惜しいと思ったわけです。
こちらはX-Break。先代同様にオレンジのアクセントが入り、大胆にブラックも使っています。リアビューも先代からだいぶデザインが変わりました。リアゲート開口部は1300mmまで広がっています。今回の最大の焦点だと、車体設計のエンジニアから聞きました。
間口1300mmの荷室。X-Breakは、フロアのボードが撥水加工になっています。
リアシートを畳むとこんな感じ。シートバックは、テールゲート側から倒すことができます。
リアシート、通常状態。今回わずかにホイールベースを伸ばし、後部座席スペースにすべて使ったそうです。足元スペースは十分あります。
X-Breakのコクピット。各部に外装と同じように、オレンジのアクセントが入ります。インプレッサ/XVと同じデザインに思えますが、実際は微妙に違うそうで、ダッシュボードは型を別に起こしたそうです。
X-Break。アクティブなSUVらしいシボが使われていますが、オレンジのステッチも目立ちます。
こちらはe-BOXERのAdvance。大人びた内装です。前席はドイツ車のような芯のあるしっかり感に、適度な弾力性もあり、腰を支えてくれ、短時間では悪くない印象でした。シートバックも肩を包むような大きさ感があります。
エンジンは、今回ターボが廃止されました。フォレスターといえばSUVなのにターボというのが売りでしたが、路線変更です。ニッチから正統SUVに進化したわけです。これはX-BreakのNA2.5リッターで、FB25エンジンは従来のレガシィのものとは大幅に変わっています。e-BOXERよりは、やはり回して気持ち良く、回して走る楽しみはあります。パワーも優っています。
X-Breakに乗ったのは都市部だけですが、e-BOXERに比べてやや路面からのつき上げや、振動なども感じられ、プリミティブな印象でした。e-BOXERのほうが、タイヤの違いや、e-BOXERのバッテリー分の重さが、乗り心地に好影響なのでしょう。さらにハイブリッドの電子音対策のための遮音が、全体にも効いているようで、上質感があります。ただペースを上げて活発に走るなら、X-Breakが良いとは思いました。
こちらがe-BOXERのAdvance。都市部と山間部で2回乗りましたが、乗り味に関してはベストと思います。しっとり感があり、音も静かです。また、だいぶ軽めとはいえハイブリッドなので、アクセルを踏みこんだときの瞬時のモーターアシストトルクが効き、街中では2.5リッターよりもe-BOXERのほうが、きびきび走る感じです。
箱根での試乗時には、XVのe-BOXERで同じルートを走りましたが、XVのe-BOXERがこれがまた乗り味が非常によく、スタッフに話したら、個人的には現スバルでいちばんかもしれません、と言っていました。それと比べるとフォレスターのe-BOXERほうがやや硬めですが、十分しなやかです。パワーユニットは基本同じで、プログラムだけ変えているそうです。車重があるぶん、フォレスターのほうがエンジンを回して走ることにはなります。
驚いたのは、ダイナミック性能の高さです。XVがまた非常に優れていたのですが、かなり荒れた路面のワインディング路をがんばって走ってみても、そのXVとそれほど遜色ありません。上屋の大きいフォレスターがもちろん不利ですが、右に左に振れる感覚がなく、非常にフラットで安定しています。
山間部ではTouringにも乗りました。2.5リッターNAのシンプルなグレードで、タイヤが、ほかが18インチなのに対し、17インチです。e-BOXERで走った荒れたワインディング路では、ほぼ同じ走りでしたが、タイヤのせいか、わずかに路面の荒れをいなしきれていない感じがありました。逆にいえば、バッテリーを積むe-BOXERは、重いのに、スバル自慢の縦置き水平対向レイアウトの重量バランスを崩していないといえそうです。サーキット・レベルなら別かもしれませんが、そこそこの走りならむしろ重量バランス的によい可能性もありそうです。
同じ2.5リッターのTouringはX-Breakと似た傾向で、不正路面を低速で走ると、ダイレクトなつきあげを感じました。そこは残念。ただし路面のよいワインディング路を走ると、非常に気持ちよく走れます。17インチタイヤの柔らかさがありますが、それでも正確にラインをトレースするので、べったり路面に張り付いたまま思うとおりにコーナーを右左とクリアできます。旧型では、高速コーナリングでやや不安を感じましたが、今回はそれを感じませんでした。新世代プラットフォームのSGPを今回採用していますが、SGPは地上高の高いSUVでも、ロールセンターを理想的に設定できるようにしたのが大きなポイントです。
オンロードでの高いダイナミック性能としなやかな走りを体験すると、無骨な顔が残念に思う気持ちは増します。もっとも、よく観察すると四角い顔のフロントの造形には、スピード感もこめられているようです。せめて角をもっとスムーズにしてほしいとも思いますが、そうすると本格派志向のSUVらしさが元も子もなくなるのでしょう。
自分のイメージとしては、現行のアウトバックの顔ぐらいが、このフォレスターにちょうどよかったのだと思います。しかし、スバルの車種戦略のなかで、フォレスターはアウトバックよりもタフなモデルなので、SUVらしくSOLIDになっていなければならない。だからこの顔になったのでは、と思います。とはいえ、もう少し変化をつけて、オンロードのスムーズさもデザインで表現できないのか。SUVは、都会派とアウトドア派を両立するというのが、スバルの目指すところのはず。そしてクルマの中身としては見事にそれを達成しています。だから、デザインでもなんとかできないのかと、思うのですが。
ただ、何度も見ているうちに、この顔もくせになりそうなものがあると思うようになりました。すべては計算されてデザインされているのでしょうか。
(レポート・写真:武田 隆)