スバル・フォレスターの試乗記

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スバル・フォレスターで500kmあまりを走った印象。ただし2018年登場の新型ではなく、先代モデルです。「先代が非常によかったので、新型の開発は大変でした」と開発の方は言っていましたが、それには納得しました。

試乗は昨年秋。熟成成ったモデル末期の車両で、X-Break 2.0。ノンターボモデルです。コースとして、標高2000mを超える峠越えを敢行しました。上り側は舗装路で、峠を上って向こう側は未舗装の悪路。通常の乗用車では、来た道へ折り返すべし、という道です。峠付近で大自然に心を癒された後、緊張して悪路に踏み込みます。

林道も原生林の大自然の中。フォレスター、たよりになりました。聞きしにまさる悪路で、尖った岩石が混じるオフロード。ふつうのクルマではとても無理です。お借りしている広報車なので、下腹をこすることも、砂利をはねて外板にあてることも避けなければならず、なによりパンクが怖いので、まずは歩く速度で慎重に下りました。オフロードタイヤとはいえ、無思慮に走ればサイドウォールを痛めそうな大きい石が転がっています。

写真左斜面は、花崗岩が風化した砂(真砂)と思われます。それなりの下り勾配なので、歩く速度で下るには最初はブレーキを踏みっぱなしでしたが、すぐにX-MODEの存在を思い出し、スイッチを押してみたところ、ブレーキなしでもごく低速で下って行くので、これは安心。ヒルディセントコントロールの機能が働いてくれるわけです。今回は砂利道を下るだけなので、X-MODEのほかの機能は試せませんでした。ちなみに新型フォレスターは、X-MODEのスイッチが進化し、走行シーンによってモードを選べるようになっています。

下るにつれて、路面もよくなり、徐々にスピードを上げました。ただしあくまで借りモノなので、石がはねない程度で、とにかく抑えめで。悪路とはいえしょせん整備された林道で、走破性能の真髄はとても試せませんが、とにかく地上高が高いというだけで、こういう道に足を踏み入れることができます。途中で、本格装備のオフロードバイクと何回かすれ違いましたが、四輪車は現れず。多分日が暮れたら四足動物が現れるはず、という深い原生林でした。

地上高の高さのありがたみが、あらためてわかりました。フォレスターで砂利道を飛ばして走ろうという人はあまりいないと思いますが、雪道ではあるでしょう。積雪路面は得意そうです。

この車両は、白にオレンジのアクセントが入り、なかなかスポーティーでアクティブな雰囲気です。外観デザインはオーソドックスですが、都会寄りではなく、アウトドア寄りのSUV、という立ち位置をうまく表現している気がします。フロントマスクがややごつく、今どきのクルマとしては無骨な印象ですが、ねらいはわかります。正直街中で見ると、今ひとつパッとしないとも思うのですが、こういうところへ来ると、実にいい感じに見えました。

SUVとして、まず機能をまじめにつくりこんでいるようなのは、スバルらしいところ。SUVはいまだ世界的に増加傾向ですが、とくに最近出てくるニューカマーは、どれも都会寄りSUVばかり。そういう意味では、本来のSUVらしいフォレスターは貴重な存在です。

とはいえ、今回感心したのは、舗装路での走りです。無事悪路を下り終えて、山あいの田舎道を行くと、そのスムーズな走りに感嘆しました。プラットフォームを共用するインプレッサ(の旧型モデル)とも似て、不思議に抵抗感がなくどこまでも気持ちよく走れる感じがあります。

大径のオフロードタイヤを履くので、やや足がばたつく感じや、反応がダルなところはありますが、そのいっぽうハイトが高いために(225/60R17)、路面からの振動を吸収してくれるのか、むしろ乗り味は滑らかに感じられます。シャシー剛性も十分に強化されているようで、高速道での目地段差超えなども快適で、一般道をハイペースで走っても乗り心地はよく、終始安定感がありました。

乗り心地がよい反面、オフロードタイヤと地上高の高さをカバーしきるほどには足は締め上げられていないようで、中高速コーナーをがんばろうとすると心理的に不安を感じますが、低速コーナーでは、ふりまわして攻めるような走りでも、安定して右に左に走り抜けます。俊敏な回頭性には欠けますが、やや意図的に姿勢をつくれば、あとは安定して思うように走れます。走りについては、SUVでも基本から相当こだわっているようで、さすがスバルです。

リニアトロニックは、このクルマにはよく合っていると思います。CVTとしては、無用なエンジンの高まりが少なく、文字どおりリニアな走りができます。エンジン回転一定のまま加速するのは気持ちよく、まさに滑らかに走ります。ただ、やはりアクセルを床まで踏むようなときは、反応が遅れます。エンジンはドラマチックではないものの、スムーズでストレスがありません。エンジンとCVTの組み合わせが醸し出す静かで滑らかな走りは、気持ちよいものです。

新型はさらによくなっているということですが、どれだけ違うのか、また長距離を走ってみたいものです。フォレスターは、もともとはオンロード寄りのターボ搭載クロスオーバーSUVとして誕生し、3代目からSUV王道へと路線変更しました。それでもオンロードの走りは相当こだわっています。9割以上が舗装路のような使い方でも、十分良さが楽しめるクルマと思う次第です。

(レポート・写真:武田 隆)

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