2022年4月14日(木)に、第7回JAIA輸入二輪車試乗会が開催されました。その様子をお伝えします。(レポート:小林謙一)
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2022年4月14日(木)、例年催されている「輸入二輪車試乗会」に参加してきたので、当日試乗できた新型車などの試乗レポートを皆さまにお届けしたい。この試乗会は、神奈川県の大磯プリンスホテルの駐車場などを活用して毎年実施されており、個性あるオートバイの試乗が一度にできる、大変貴重な二輪車の試乗会である。試乗レポートを私達は、四輪も二輪も全て極力客観的に判断することを心がけて書くようにしているが、やはり異なる日の試乗では、比較することが難しい。同日の試乗ではその欠点を埋めてくれるので、正確性は高まっていると思う。
当日は、途中から雨天のため、通常よりもスピードは抑えながら試乗した。コースは、以前から決めてあるコースを走行し、高速道路から一般道に入り、アップダウンのコーナーの続く全5キロ程度の距離を走る。常に比較的空いているコースで、ほぼ単独走行が可能である。撮影は、コース途中にある公園と試乗会の会場内で行なった。
各社の広報担当者の方からお聞きした情報も少しだが盛り込むことができた。
このモデルは、中間的な660ccの3気筒のモデルで、デザインは若者向きである。エンジンは、カミソリのような鋭さで4000rpmまで一気に吹き上がる。ボディはしっかりしていて剛性が高く、ハンドリングも軽くコーナーリングも良い。タイヤは前後ともミシュランでブレーキも前後ともしっかり効いて安心感がある。シートも良好であるが、少し固くてツーリングというよりも街乗りに最適な印象であった。3気筒のエンジンの特性として、2気筒よりもエンジンブレーキは効きが弱いけれども、全域にわたってスムーズであり、4気筒に比べてトルクが太いので立ち上がりなども良くて乗りやすい。メーカーの担当者からもその点がこのトライデントのコンセプトのひとつであり、ミドルサイズとして女性ユーザーもターゲットになっていると聞くことができた。
このインペリアーレ400は今では少なくなった中型免許で乗れる単気筒シングルエンジンを搭載している。日本ではホンダGB350のライバルになるのではないかと思う。エンジンの吹き上がりは悪くないがトルクが細くて、加速は良いといえない。車体重量が影響していると思われるが、ミッションは5速で、シフトのストロークが大きく、「トコトコ」走る。少しステップ位置は前方だが、楽なライディングポジションによって視界も良く、シートも固くなくて長距離のツーリングにも十分に活用できるだろう。前後共に「マキシス」と書かれたタイヤはスポーティなパターンであり、スタイルはご覧の通りクラシックなイメージで全体がまとめられている。足付き性は良く、女性にも乗りやすいようなサイズに収まっている。担当者によれば、インド市場をメインターゲットに開発されたモデルで、この試乗車が日本で最初に登録した初号機だそうで、販売価格は60万円ぐらいになるという。
ボンネビルなどの伝統的なモデルを有するトライアンフの中でも、世界の流行を取り入れたデザインは、やはり若い人に向けたモデルがこのタイガースポーツ660だと思う。メーターは、主流となってきているデジタル表示を採用しており、視認性は悪くない。タイヤは前後ともミシュランが装着されていてブレーキは日本のニッシン製で効きは良い。ハンドルの位置は高く、形状もフラットでポジションは楽だった。シート形状は細くて肉厚は薄い。ボディは剛性が高く、コーナーの入りは素直でリアサスペンションもしなやか(調整機能付)で乗りやすいが、唯一気になったのはカウリングによって、フロント回りが重い印象を受けた。しかし、このフロントカウリングは、サイズも大きくてツーリングなどに有効な装備であることは間違いない。
今回は二台のキムコ製のスクーターに試乗することができた。最初の一台はこのKRVタイプSという新型車で、トラクションコントロール付きでエンジンとスイングアームが別体という独自のレイアウトを採用している。したがって、エンジンが通常のスクーターよりも中央寄りに搭載されているために50:50に近い重量バランスを実現していて、重心は低く走行性能にもプラスになっている、と担当者は教えてくれた。ブレーキは自社製でフロント・リア共に効きは十分すぎるほど。スポーティモデルだけにエンジンのピックアップは良くて、タイヤは前後共にメーカーはわからなかったが13インチが装着されており、コーナーを切り込んでいくハンドリングはシャープな印象を受けた。乗り心地は固く、足元のスペースは、日本人には少しきついかもしれいが、通勤にはぴったりのコンパクトな走りの良いスクーターである。
個人的に新車から20年ほど250ccクラスの国産スクーターを仕事で愛用しており、キムコ製の250ccにも興味があったので試乗してみることにした。デザインは大人も乗れるようなオーソドックスなものであり、国産スクーターとも遜色ない印象を受けた。色調のブルーは好みの分かれるところだろう。エンジンは穏やかで、発進から法定速度までスムーズに走る。コーナーもビッグスクーターらしく安定していて、ポジションも楽で足付き性も良くて乗りやすかった。シートも着座の部分の形状や固さが非常に良くできていて、日曜ツーリングなどにも適していると思われた。フロントのフェアリングは、特に高速路では効果は薄くて、もう少し上部までカバーできれば良いだろう。トランクスペースは確認できなかったが、ビジネスにもプライベートでも十分に活躍できるスクーターといえるだろう。
友人も一台所有しているこのトライアンフ・ストリートツインは900ccのモデルだが、トルクも太くて、今では少なくなってしまった古典的なデザインを継承する2気筒モデルである。独特な2気筒の心地よい排気音を放つステンレス製のマフラーや、アルミ素材のリアブレーキなど全体に質感は高い。操作系では、クラッチも軽く、ブレンボ製のブレーキもシングルブレーキだが、キッチリと効くので安心感は高い。スリムな車体で足付き性も良く、ライディングポジションも自然で無理がない。タイヤは前後共にピレリタイヤだったが、ハンドリングも素直で好ましい。女性ライダーにも乗っていただきたいとも思えるモデルだが、トライアンフのメーカー担当者に購入層を聞いたところ、意外にも若い人の関心が高いそうで、このクラシックなデザインが若いライダーに好まれていると聞いた。全体的に破綻が無く、トータルで完成された印象の一台である。
モトグッチのVツインは、第5回(2019年)でも試乗させてもらったが、今回の850ccのV7ストーンは、パワフルなマシンに進化していた。エンジン音も迫力があり、吹かすとBMWの水平対向エンジンのように車体を揺さぶる。タイヤは前後どちらもダンロップ製で、フロントが18インチでリアは17インチが採用されていたが、マシンをコントロールする「走り感」も良く、太いトルクを伝えるシャフトドライブのダイレクト感も好ましい。小さなフロントカウルは十分に効果があり、長距離はネイキッドモデルよりも疲れないだろう。トライアンフ同様に全体の質感も高かったが、オプション設定されているというハンドルの左右の端に取り付けられたミラーは使いづらくて、自分が乗るならば迷わず標準の位置のミラー仕様を選びたい。メーカー担当者によればこのモデルは“モトグッチ100周年記念モデル” だそうで、伝統を守り続けるこのデザインにも個人的には、心を揺さぶられた一台であった。
デビュー当初から独自のデザインにも魅かれていて、今回の試乗で一番乗りたかったのがこのBMW・R18ファーストエディションである。1800ccという大排気量による排気音は、今までも聞いたことのないような低く太く、響くような音質である。BMWらしい質感の高い大きなボディは、どんな速度領域でも重厚な乗り心地であって、飛ばすような気持ちにはなれなかった。足付き性は優れているが、大きく張り出した足元にある巨大なシリンダーが気になって、シフトチェンジがやり難かった。しかし、走っている途中で気がついて、シフトの後部を踏んでギアチェンジすることで解決した。やはり当然のことながら低速トルクは絶対的であって、今回の試乗では雨天ということもあったけれども、高速道路も含めて3速までしか使用しなかった。シートはBMWにしては珍しく固めで、ポジションは高めのハンドルによって、足を前に出すようなハーレーのようなアメリカンに乗っているような姿勢になる。タコメーターはぜひとも欲しい装備のひとつだと感じた。タイヤは前後ともブリヂストン製でフロントが19インチでリアは16インチ。しなやかなサスペンションによって、道路のギャップもうまくこなし乗り心地は良かった。しかし身長175cmのオートバイ好きな私には、その重量もエンジンも持て余すほどで、気楽に乗れるモデルではなかった。近年のオートバイの流行? かも知れないが、日本人が乗りこなすには、少し大きすぎるのではないかと感じた試乗であった。
BMWの担当者によると、このモデルは多くのオプション部品が装着されたスペシャルモデルで、シリンダーヘッドやエンジン部などに高額なアルミダイキャストの部品に交換されていた。フロントフォークは剛性感があり、ボディもしっかりしていて、“フラフラ”することは一切無い。クラッチは適度な重さで、エンジンは力強く、加速も良いしコントロールしやすいスポーティなモデルである。今流行っているカフェレーサー・スタイルも好ましく、シートは固い方だが、リアカウルは魅力あるデザインである。タイヤは前後ともミシュラン製でフロント・リア共に17インチであり、ダブルディスクのブレーキも自然で扱いやすかった。デビューから時間が経っていることもあって、成熟されたBMWらしいモデルであることは間違いないと再確認した。
このF900XR のエンジンは、全くの新設計だとBMWの担当者から聞いた。エンジンをかけてみると音は意外に大きくて、吹き上がりはとても良かった。試乗してみるとRnineTよりもあきらかにしなやかで乗り心地も良好で、シートもBMWらしいソフトで形状も良いので、2人乗りのツーリングには十分に応えてくれるだろう。ブレンボ製のブレーキは、タッチは柔らかいが効きは強力で、タイヤは前後共に17インチでブリヂストンのバトラックスが装着されていたがコーナーでのグリップ力もあり、全般にわたって安心して試乗できた。メーターはNAVI付のデジタル表示で、クラッチも軽く、グリップヒーターもありがたい装備だった。フロントカウルはもう少しロングタイプならばさらにその効果を発揮するするだろう。F900XRの前衛的なデザインは、欧州向けだと思うけれどもバランスの優れた乗りやすいツーリング向きのモデルだと思う。
インドで製造されるこの310R は、中型免許で乗れるクラスのBMWである。小ぶりで軽く、扱いやすいモデルである。オートバイにとって大事なシートは、BMW一族として例にもれず、短時間の試乗であったけれども座り心地も良く、固すぎず長距離にも十分な印象だった。DOHC単気筒のエンジンは、アイドリングでは“ザワザワ”といった音を発していたが、8000回転まで軽く一気に吹きあがり、気持ちが良い。ハンドルの高さも幅も適度で、クラッチは軽くブレーキもしっかりしていて「カチッ」と効く。メーターの視認性も良く、初心者のライダーにも乗りやすいオートバイだろう。倒立フォークも剛性感が高くて、国産の250ccクラスのように一般道では「ヒラリ、ヒラリ」と軽快に走り、乗っていて楽しい一台であった。
今回の試乗では、悪天候のために途中で試乗を切り上げる媒体などもあって、午後には試乗枠が空いたために逆に最後まで残っていた私は、幸運にも10台も試乗することができた。
近年の外国メーカーの輸入車は、高額車になるとトラクションコントロールや走行モードを選択できるモデルが増えてきており、デジタルメーター化も急速に広がっている印象を受けた。デジタル化によってNAVIがメーター内に収められることは、安全上においても好ましいことだと思う。また毎年感じることだが、輸入車の中でもBMWやトライアンフなどのシートは国産車に比べての仕上がりは格段に良い。国産車になぜこのような座り心地の良いシートが少ないのか疑問だが、このようなシートをぜひとも標準装着して欲しいと思っている私は各メーカーの技術者などにお会いする際には、そのことを必ず伝えるように心がけている。固すぎたり、形状の悪いシートで長時間乗り続けると、お尻が痛くなるだけでなく、ライダーの疲労にも連動するからだ。シートの重要性については、ほとんどのライダーは知っているはずで、その車種の評価にもつながり、最終的には売れ行きにも関係する重要なポイントである。