第40回 輸入車試乗会に参加して

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2020年2月5日、試乗会当日は快晴でコートが要らないほど暖かく、気持ちよく試乗したり撮影したりすることができた。
昨年まで試乗した車はSUVが多く、限られた種類の車の体感しかできなかったが、今年は乗る車の数が多くて大変忙しくはあるとは言え、様々なジャンルの車を試乗することができ、モチベーションを持続することができた。それぞれの車について、特に走りの感覚について私なりに感じたことを述べたい。なお、かなり長い試乗記になってしまったので、4回にわけて掲載する。興味の湧く車に関してだけ読んでいただければと思う。

1.ベンツ A250 4MATIC セダン (写真1)

東京モーターショーで初めて実車を見た時、今までのAシリーズと随分違うとともに、そのスタイルや内装、先進性と上質感が進化していると感じたので、是非乗ってみたいと思っていた車だった。
運転し始めると、モーターショーでの静的な印象に見合った上質な走りであることをすぐに感じとれた。それは走行性能が良いというのはもちろんだが、走りの全てに関して「異次元」と言えるほどの上質感が感じられた。ステアリングフィールは、山道のワインディング走行において自由自在に車を旋回させることはもちろんだが、その時のステアリング操作とそれに伴う旋回のタイミングや、心地よいロールに何とも言えないしなやかさが感じられる。乗り心地もただ柔らかいのではなく、やはり「しなやかさ」という言葉で表現できる上質なものである。高速道路でも上下動は少なく、段差路でのハーシュネスも今回乗った車の中では最も小さく、ほとんど感じられなかった。筆者は今まで様々な車を乗ってきたが、乗り味の上質感に関してこの車以上の経験はない。
筆者の車の開発経験からすると、ボデー剛性がすこぶる高く、びくともしない車体に柔らかいサスペンションが設定されているのではないかと推定する。サスペンションのチューニング範囲が、高いボデー剛性によって広げられている事によりこのような余裕のある質感の高い走行性能が実現されているのではないのだろうか。
約1.6トンの重い車に対して2リッターのエンジンなので非力かと思いきや、ターボチャージャーがよく効いているので加速性能も相当なものだった。ターボラグもほとんど感じられず、アクセルに対してほぼリニア加速で、この点でも上質感が感じられる。
操作系は液晶表示が多用されていて、将来の車は全てこのようになるのではないかという未来を示唆する室内のスタイリングになっている。(写真2)
筆者が見慣れていないのと、新しい車で緊張していて走行中は液晶パネルのスピードメーターを注視する余裕はなかったが、スピードのヘッドアップディスプレイがちょうど良いところに映り込み、ストレスは感じなかった。
東京モーターショーのブログでも述べたが、この車の価格が400万円台というのも魅力の一つだと思う。この素晴らしいスタイルや機器類、そして優れた走行性能で400万円台という価格で購入できるのなら、相当なリーズナブルカーだ。日本のプレミアムカーの随分先を進んだ車ではなかろうか。

2.BMW M135i

 運転し始めた瞬間からBMWの走りだということがわかる。
ステアリングのニュートラルに少し余裕があるが、ステアリングを回すと「ひらり」とロールしながらグイッと曲がるのが特徴。その真価は山道のワインディングロードで発揮され、右へ左へステアリングを切るとぐいぐい曲がり、スポーティーな楽しい走りが楽しめた。
エンジン出力の出方もアクセルを押せばぐいぐい引っ張っていくような性能で、加速性能においてもスポーティーな感覚を受ける。ベンツがしなやかな走りだとすると、この車はワイルドにスポーツ走行を楽しむ車だと言えるのではないだろうか。
外形スタイルも前モデルのやや大人しいものに対して、そのコンセプトにぴったりの、「これから走るぞ」と言わんばかりのアグレッシブなスポーティスタイルだと筆者には感じられる。走り好きの人にはぴったりの車だと思う。

3.プジョー 308 SW
TECK PACK EDITION(写真4)

 筆者がよく試乗したプジョーといえば15〜20年前の405や406、407などの軽快な足捌きを持った車しか知らないが、走ってみると随分安定志向のどっしりとした車に進化したと感じた。山道のワインディングロードに入ると、ステアリングをまわせば自分の進もうと思う方向にタイヤの向きがさっさと変わるのはプジョーの血筋で、それが受け継がれているのがわかる。スポーツをコンセプトに売りに出している車ではないと思うが、山道の上り坂での加速度も十分で日本の会社が販売しているスポーティーカー以上の走りを持った車であると思う。
この車で驚いたのは、試乗を終えて休憩室で車両スペックを確認した時のことである。この大きさで1.4トンという軽さであること、軽いと言ってもこの重さの車をターボが付いているとはいえ、1.5リッターディーゼルで動かしていて、それも山道でストレスなく加速が楽しめる車であったということだ。筆者もたくさんの車を企画し開発したが、5ナンバーサイズで同じような全長の背の低いセダンでも1.3トン前後になり、プジョーの軽量化技術は大したものだと感心する。さらに価格は346万円でリーズナブルだと思う。日本の車の値段も高騰していてほとんど同じで、営業が頑張れば相当数販売できるポテンシャルのある車であると思う。

4.ボルボ S60 T6Inscription(写真5)
 
ボルボは以前街中であまり見かけることはなかったが、最近急に街を走っている台数が増え、販売を伸ばしていると感じる。これも古い話になるが筆者がボルボに乗ったのは15年ほど前にスウェーデンの販売店訪問に行った時である。その時いろいろな道を走ったが、走行性能は当時の日本車と変わらず、ステアリングフィールが曖昧で大した印象を持たなかった。その頃筆者が開発していた車と比べてもボデー剛性が良くないという印象を受けた。
 しかし車の進化とは素晴らしいものだと今回新型ボルボに乗って見直した。どっしりとして高速道路でも安定感があり、山道のワインディング走行でもステアリングを回せばしっかりと曲がっていってくれ安心感がある。ステアリング操作でニュートラル付近のボルボの独特のステアリングフィールは15年前のものを受け継いでいるようで、その感覚が蘇り懐かしく運転させていただいた。
外形スタイルは最近の日本車の奇をてらったものとは違って上品なスタイリングを持ち、リアのテールランプもボルボのアイデンティティを残しながら質感の高いものになっていると思う。
室内も質感高い内装で囲まれリッチな気分になれるし、他の車にも設定されているがボルボの360度アラウンドモニター(写真6)は特に画面全面に映像が現れ、非常に見やすく便利なものであった。一度このモニターを使い始めたら、これが無いと駐車スペースに車庫入れできないのではないかと思われる。高価にもかかわらず質感の高いボルボの車が日本で増える理由がわかった気がする。

(続く)

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