毎年恒例のJAIA輸入車試乗会。ランドローバー・ディフェンダーに乗った印象です。
ジープ・ラングラー、メルセデス・Gクラスと並ぶ、オフロード車の伝説的存在のランドローバー・ディフェンダー。“ザ・ランドローバー”。
新型はモノコックシャシーになりました。タフの証のラダーフレームでなくなってしまったわけですが、少なくともオンロードでは、旧ディフェンダーの雰囲気が受け継がれていると感じた次第。
フロントマスクなど、みごとに平面的だった旧型から一変しているものの、今のクルマの標準からしたら、車体形状は四角そのもので、極力シンプルなデザイン。旧型がふつうにモデルチェンジしたらこうなるだろう、と思える感じ。
短い「90」のホイールベースですが、全体のプロポーションも、ディフェンダーそのものという印象。
リアエンドが垂直に切られているのも旧型と同じ。とはいえ、現代のプレス技術が精緻なので、ヘビーデューティーで実用的な平面パネルというよりは、磨いた高級石材のような質感……。高品質です。
大きなステアリングホイールを回して走ると、トラックを運転しているような感覚。着座位置も高い。ディフェンダーらしいなという感じ。ただ、当然とはいえ、旧型より乗り味は洗練され、走りやすい。旧型は速度が上がると直進にも神経を使う感じがありましたが、新型はそういう気配はなし。
内装もいかにもクロカンらしいデザイン。ただ、今回は試しませんでしたが、モニター画面に車体各部に付いたカメラの映像が映し出されるなど、最新機能を搭載しています。
リアシートは、ショートボディでも、空間としてはかなり広い。サイドウィンドウの一部は目隠しされていますが、上部には明かりとりの窓があります。
開口部の大きいサンルーフも付きます。走行中、トンネル内で音が外部から少し入って来たので、どこか窓が開いているのかと思いましたが、キャンバス地のサンルーフのせいだったと思われます。サンルーフ以外はしっかり気密性が高そうで静粛。モノコックボディのなせる技か。
ちなみにボンネット両サイドには、すべり止め模様の樹脂製プレートが貼られています。しかしこの上には乗れないようで、旧型へのオマージュのデザインだそうです。
エンジンはジャガー・ランドローバーのINGENIUMを名乗る2リッター直列4気筒ターボ。これがなかなかいい音で、大排気量エンジンのような低いドロドロした音を鳴らします。力も十分あり、発表されているデータでは0-100km/hが7.1秒とのこと。旧型ディフェンダーはビュイック由来のV8エンジンも載せていましたが、それに遜色ないかもしれません。
ストラット頂部付近の鋳物のようなつくりは、アルミモノコック車体であることの証。車体の下を覗いても、サスのアームなどがアルミのようです。実は旧型もボディ外板パネルはアルミだったようです。
フロントのホイールハウスを覗いた図。乗り心地が洗練されていたので、可変ダンパーかとも思いましたが、エアサスでした。車高調整も可能で、試乗後にスタッフに操作してもらったところ、ただでさえ小山のように高い車高が、さらに高くなりました。河を渡りたくなります。
ランドローバーの誕生は1948年。旧型ディフェンダーへの改変は1980年代。初の全面新設計は70年以上を経てのことで、それを思うと、ふつうにモデルチェンジで正常進化すれば、こうなるなという感じに思えます。シティ派SUVのように洗練されていますが、ディフェンダーらしく、最高の悪路走破性も備えているようです。
ただ、元祖「ランドローバー」の資質を本当にそのまま受け継いでいるかは、このクルマが、軍用やプロフェッショナルユースの車両として使われるかどうか、なのかもしれません。その辺の事情は知りませんが、このクルマの歴史はこれから作られていくのでしょう。
この車両は「75thリミテッドエディション」の限定モデルで、価格が約1100万円もします。カリスマモデルで、それくらいでも欲しい人がいるのだと思います。草色の塗色も魅力的です。ベーシックモデルだと、現状600万円くらいからあり、元祖ランドローバーならそうあってほしいところで、少しほっとします。
(レポート・写真:武田 隆)