JAIA輸入車試乗会2022(メルセデス・ベンツS400d)

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JAIA(日本自動車輸入組合)の主催する試乗会で、乗ったクルマをレポートします。今回は、メルセデスの大・中・小セダンのうち、大のS400dの印象。

日本では2021年1月に導入された現行Sクラスは、個人的に気になる存在でした。グリル・デザインが昔のメルセデス風に思えたからです。グリル外形はスムーズな多角形で現代的ですが、スリットの入り方が、1960〜70年代頃のメルセデスみたいです。ヘッドランプも小型化されたので、このランプを縦型デザインにすれば、昔風に「タテ目」にすることもできそうです。そうする意味はありませんが‥。

こちらが「タテ目」の頃からの歴代の大型メルセデス。先代型までの直近の3世代は省かれています。

堂々としたリアビュー。前に乗った先代S400dでも同じことを感じました。先代もボディサイドはすっきりしていましたが、現行型はさらにすっきりしました。近年のメルセデスはプレスラインを大幅に削減する方向で進化しています。よけいなラインをなくすのが今の自動車デザインのトレンドとして定着していますが、メルセデスはそれが目立っています。いかにも現代的です。老舗高級車の保守性をたもちながら、革新性を持たせるのが成功しているように思えます。

ちなみに写真ではドアハンドルが出っ張っていますが、通常は引っ込んでボディと面一になります。意外なことに、格納型ドアハンドルはメルセデスとしては初とのことです。

Cクラスと並んだところ。ほぼ相似形です。ふつうに見たら、同じ車種のグレード違いと思ってしまいます。

ダッシュボード・デザインは先代から激変です。センターのディスプレイは、先代ではメーターパネルと一体で横長でしたが、大きく縦長になり、ダッシュ中央の低い位置に移動しました。タッチパネルの扱いやすさを重視したようです。

Cクラス同様に、センターコンソール部にあった画面操作用のダイヤルが廃止され、すっきりしました。そのほかメインのウッドトリムは大型化し、エアコン吹き出し口も位置・形状が大きく変わっています。デジタル技術の進化で、コクピットデザインがどんどん変化しています。

走ると、非常にしなやかです。低速で悪路の段差を超えたときなどは、ショックをすべて消し去るわけではないものの、とくに速度がある程度高まるとしなやかさは極上。もっともAMGライン装備のために、タイヤは前255/40R20、後285/35R20となって、通常モデルより2インチもサイズアップしているし、通常モデルよりは少し硬めな乗り味だろうと思います。

エンジンは、非常にスムーズでサウンドもよく、ディーゼルながらC200よりも回り方が気持ちいいと感じました。あとから、そういえば直列6気筒だったと気づいて、納得した次第。レッドゾーンは4600rpmからですが、Sプラス・モード時だと思いますが、きっちりその辺りまで気持ちよく回りました。旧S400dよりも最大出力が10ps低い330psとなっていますが、いろいろ改良が施されているのでしょう。良い音は聞こえますが、基本的に静粛でスムーズです。

現行Sクラスは全車種が4WD(4MATIC)となっています。メルセデスの有名な哲学「最善か無か」に従って、0WDか4WDか、と言ったら4WDしかないですが、まじめな話2WDと比べても4WDが最善にきまっています。操縦安定性を考えたら4WDに勝るものなし。ただ4WDでは、FRメルセデスの特長である前輪切れ角の大きさは犠牲になります。

それをカバーするものとして、4WSが採用されています。Cクラスの4WSは後輪ステア角が最大2.5度ですが、Sクラスでは60km/h以下の逆位相の切れ角が最大4.5度の設定で、より小回りの効果を強めているようです。最善を実現するには、やらなければならないことがいろいろあるわけですが、それをやるのがメルセデスなのでしょう。

ふつうに走行していると、4WSはわかりません。C200アヴァンギャルドと同じように、意図的にシャープに曲がってみましたが、C200のようには後輪操舵の動きを感じませんでした。これは車格の違いのための演出かと思いましたが、C200ではスポーツモード、S400dは多分コンフォートモードで走ったので、違いが出たのかもしれません。

(レポート・写真:武田 隆)

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