今回も2020年2月5日に開催された輸入車試乗会で試乗ができた車について述べる。今回は「テスラ Model3」を紹介する。
5 テスラ Model3(写真7)
今回の試乗会で一番乗ってみたい車の一つだった。これまで電気自動車には全く乗ったことがなかったので、自身で評価判断ができるのか興味津々で運転させてもらった。既成概念があったわけではないが「アメリカの乗り心地の良い車」くらいにしか考えていなかった。そのイメージが先行していたので、運転し始めると逆に良い意味で、驚愕と言っていいほどの衝撃を受ける。走行性能の競合車はポルシェじゃないかと思わせる様な加速性能とステアリングフィールだというのが第一印象であった。
高速道路でアクセルを一杯に踏むと強力な加速で背中がシートに押し付けられる。アクセルを離すと回生ブレーキが働くのか、減速感が大きくやや違和感を持ったが、これは筆者が日頃減速の小さいガソリンエンジンに乗っているから慣れていないのだと思う。この減速に慣れて使いこなせば、ブレーキ操作が減って運転がガソリンエンジン車より楽に運転できると考えられるし、安全性も高まるのではないだろうか。
山道のワインディング走行における旋回後の加速ダッシュも面白く、カーブの手前で減速する時には回生ブレーキがよく効いて走りやすい。ステアリングフィールは欧州車と同じ様なしっかり、ガッチリという力強い味わいがある。ポルシェとは少し違うフィーリングだが、ステアリングの手応え感と、回転に対し素直に動く感覚は素晴らしい。
アンダーボデーはインターネットの写真でしか見られないので正しいかどうかわからないが、このステアリングフィールや乗り心地を実現するには、相当高いボデー剛性構造になっているのではないかと思われる。走行性能のために技術者はボデー剛性を高める設計をしているのだろうが、電気自動車の構造上、床下の重い電池を支えるためにアンダーボデーを補強する必要があり、それもボデー剛性を高めるのに一役買っているのではないかと推測する。筆者は燃料電池車(FCV)の開発を行っていた時、100キログラムを超す燃料電池本体を床下に丈夫なブラケットで取り付ける必要があり、その頑丈なブラケットが補強材として作用し、ボデー剛性が上がって走行性能が向上した経験がある。このアンダーボデーの構造に興味があり、是非ともボデー構造を見てみたいものだと思う。
車を運転しようとドライバー席に乗りびっくりしたのは「There is nothing.」 (何もない!)だ。今までの車の様なスイッチ類が少なく、ほとんどの機能が15インチのまるでiPadの様な液晶画面に集約されている。(写真8)フロントのフードやバックドアを開けようと開閉用のノブを探しまくったが、そのスイッチ機能も液晶画面にあることに気がつき驚いた。初めてのドライバーは戸惑うと思うが慣れればいいことだし、スマートフォンを生まれた時から使っているこれからの若い世代にとって、何の拒否感もないだろう。将来の車は全てこの様な液晶画面操作になるのかもしれない。少し心配なのは、筆者のパソコン(Mac)は優れた機能を持っているのだが故障はゼロではなく、修理費も高かった。この車の液晶画面システムもパソコンと同じ様なものだと思われ、故障した時の修理費は保証されるだろうが、バックドアを開けるなどの全ての機能がフリーズして大丈夫なのだろうかと、素人考えではあるが思う。
動力源のモーターが小さいのだろう、ラッゲージルームはフロントとリアの両方に有り、かなり広く利便性が高いのもこの車の大きな魅力だと思う。
(写真9、10)
現在のところ、この車はコンセプトがスポーティーに振られた車だと思うが、次は大衆車を目指したモデルも開発してもらいたい。大型タイヤやガラスルーフのスペックもここまで高めたものではなく、価格を抑えたEV車も開発してもらえればと思う。この車自体もこのスペックで400万円台と十分リーズナブルであることは確かだが、300万円台の車が発売されれば購買層がずいぶん広がる気がする。テスラ社に期待したい。