ダイハツ・ミラ・トコットに試乗

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ダイハツのミラ・トコットに試乗した印象です。運転初心者も意識して開発したクルマということが理解できました。

TV CMでも使われているこの色は「セラミックグリーンメタリック」。「誰でもやさしく乗れる、エフォートレスなクルマ」が開発コンセプトとのことですが、ちなみに「エフォートレス」とはプレス資料の注によると、肩肘張らない自然体を表すファッション用語とのこと。

上のクルマの内装ですが、これがミラ・トコットの標準的な内装色です。ステアリングやダッシュパネルが白で、品がよいという印象。ホワイトとベージュの2トーンのスピードメーターもしゃれています。コクピットのデザインはシンプルでいかにもオーソドックスですが、つくりが安っぽくなく、好印象でした。外装もシンプルですが、外装のほうがやや個性がある気がします。かわいさを盛らないシンプルさが新しいミラ・トコットのPRポイントのようですが、内装がそれを素直に表していると思う次第。

「アナザースタイルパッケージ」として、3種類のスタイルが用意されています。右から「クールスタイル」、「スイートスタイル」、「エレガントスタイル」。まさに読んで字のごとく。

そのほか、2トーンカラーの仕立てもあります。写真ではわかりにくいですが、立体的なシボが入ったフィルムを貼っており、「トートバックのようなキャンバス地調」ということで、実際に触るとそんな感じ。このクルマ、フロントが大きな平面なので、バンパー部にこれを貼ると変化がつくようです。このフィルムは工場装着になります。

「キャンバス地調」はカジュアルなよい感じですが、ただボディ外板のデザインは、けっこう硬さが目立つ印象です。シンプルを強調していますが、直線基調で平面的なので、「バウハウスっぽい」などと思ってしまいます。たまたまですが、背景のモダンな建造物とマッチするような感じで。ちなみにこの車両は「クールスタイル」です。

シンプルといいながら、実はデザインの仕上げはけっこう凝っています。目についたのはCピラーのプレスライン。ルーフからCピラー、ショルダーラインにかけて、面取りというのか、こだわったデザイン処理になっています。

プレス資料を見ると、運転しやすさにも貢献する水平基調のデザインというのはすぐわかりますが、「角の取れたやさしいスクエアボディ」という、一瞬、丸だか四角だかどっちなのか?と思うような表現もしています。よく見ると納得ですが。徹底的に四角いが、角は丸くしてソフトに仕上げてあるわけです。

スクエアで四角いのは、最大容積を追求する軽自動車の宿命ともいえますが、最近の軽自動車は、とくにボディサイドなどにがんばってカーブした凹凸を入れているクルマが多いです。それに対してミラ・トコットは、あえて平面的、四角いデザインにしているようです。ボディ形状は、まるで子供か素人がスケッチしたかのような、ひねりのないシンプルデザインで(実際はデザイナーの微妙なさじ加減がいろいろあるのだと思いますが)、5ドアハッチバックの最大公約数みたいな超オーソドックスなデザインです。

兄弟車のミラ・イースと比べればトコットの単純さはよくわかります。そのせいなのか、プレスラインなど細部のデザイン処理にこだわって、個性を与え、品質感を見せているのかもしれません。

ところでこの車両は「クールスタイル」です。ミラ・トコットは、女性専用車両のようなイメージがありますが、必ずしもそうではありません。とくに「クールスタイル」は男性を意識しており、カタログ写真でも男性が起用されています。「クールスタイル」はブラックがテーマで、フロントのバンパー部分もブラックアウトされて、巨大な口を開けたような印象。エフォートレスが、エフォートフルに一変か?という感じ。ミラ・トコットは垂直な平面が多く、フロントフェイスはまさにそうですが、昔のレーシングカーの巨大なエアダムのようです。モデファイしだいでは、さらに「クール」になりそうでもあります。

「クールスタイル」の内装はブラック仕上げ。造形的にはほかと同じです。ちなみにミラ・トコットのシートは、ミラ・イースと骨格的には共通で、表皮だけがキャンバス地調のものに変えられているそうです。この表皮の質感にこだわったということで、ミラ・イースのものより摩擦が大きく、結果的にたまたまだそうですが、そのために座ったときのフィット感が良好でした。

こちらは後席です。ヘッドルームも確保されて、十二分な居住性です。

さて走った印象ですが、乗り心地については、これは乗った個体にもよりましたが、やや硬さを感じました。エフォートレスであれば、もっとソフトで良いと感じます。これはミラ・イースでも感じたことです。

ステアリングは軽さが目立ちますが、不安を感じることはなく、安定していると思いました。ワインディングで飛ばして走るなら話は別かもしれませんが、高速でのレーンチェンジも安定していました。開発者の方に聞いたところでは、女性を意識して足はソフトにはしているが、スタビリティは無いと不安に感じるので、そこはしっかりしているとのことでした。

エンジンパワーは十分でした。CVTがこれも個体によってですが、ヒュイーンとうなることがありました。CVT特有の音ですが、CVTの音については組み付けで微妙なバラツキが出てしまうものなのだそうです。

ミラ・トコットは、走って楽しむクルマではないですが、安心して乗りやすいのはたしかだと思った次第です。希望をいえば、乗り心地をもっとはっきりソフトにしたらよいとは思います。たとえばシトロエンなどはコンパクトカーでも雲にのったようにソフトで、しかもスタビリティもしっかりしています。そこまでソフトにしないのは、燃費追求のためでしょうか。

外観デザインは、フロントマスクが絶壁なところなど、けっこう大胆な平面的デザインとも思いますが、対象の女子から見ると、かわいいデザインということになるのでしょう。直線的、平面的デザインは、幅寄せなど運転しやすさにつながっているのだろうと思います。内装は大胆さもなく、ふつうによい感じで、落ち着くと思います。毎日乗って愛着のわくクルマになっているのではないかと思う次第です。

(レポート・写真:武田 隆)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする