JAIA2020試乗会(4) テスラ・モデル3

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今年2月に行われたJAIA試乗会で気になったクルマのレポートの続きです。今回はテスラ・モデル3。500万円台まで安くなった、カリフォルニア発EV普及型に接した感想です。

外観は今までのテスラとよく似ています。詳しくなければ「テスラ」でひとくくりに見てしまいそう。ただ、大きさはひとまわり小さい。モデルSやモデルXがおおざっぱに全長約5m、全幅約2mなのに対し、このモデル3は4694mm、1849mm。

グレードがベーシックな2WDの「スタンダードレンジプラス」だったので、重量も軽めで1611kg。ちなみに駆動はリアになります。

テスラのトレードマークのような、美しい弧を描くファストバックボディですが、リアはハッチバックではなく、ふつうのトランク式の荷室です。

走った印象は、相変わらずの大トルクでの加速は健在。ただ今回はグレードがおとなしめのシングルモーター搭載車なので、上級モデルよりはやや控えめ。回生ブレーキ強めの走行モードを選んでも、アクセルオフ時の減速はそれほどは強くない印象です。

乗り心地は、これもやはりベーシックグレードで、18インチの小径タイヤのためもあるのか、かなりスムーズ。エンジン音なしで静かに走るので、快適なことはこのうえなし。

視界は非常によいです。ウェストラインが低く、感覚としては胸より上はガラスという感じ。あとで思ったことですが、床下にバッテリーを敷いているので、着座位置がやや高めなのかもしれません。

弧を描くルーフデザインとも関係していそうですが、ルーフは全面ガラスです。着色ガラスを使っており、真夏はガラス温度が上がるので、暑くならないかちょっと気になりますが、室内に入る太陽光線自体はかなり抑えています。

このガラスルーフは、ガラス一枚のみの屋根なので、ヘッドルームを稼ぐのに貢献しているようです。ファストバックの後ろ下がりのルーフラインでも、後席の頭上スペースは確保されています。ただ、ガラスがもしも熱くなった場合どうなるのかはちょっと気になりますが‥‥。

さすが電気自動車で、フロントには荷物スペースがあります。潤沢とはいえませんが、ただ、ポルシェ911などのリアエンジン車と違うのは、リアには広大なトランクスペースがあるということ。

テスラ車の内装は、概してシンプルで、よけいな装飾がないことで、非凡な新しい価値観を感じます。ただこのモデル3の内装は、シンプルのきわみ。写真が露出過多でわかりにくいですが、木目パネルなども入っていて、質感は高いとはいえ、あまりにも色気がなく、シンプルなので、ちょっと驚きます。

もちろんテスラとして飛躍的な普及モデルなので、コストダウンという側面もあるようですが、しかし思いきったものです。まあ、そのうち自動運転の時代になれば、クルマの内装なんてこんなものでよいということに、世の中なるのかもしれません。大事なのは、快適で洗練されて使いやすいかどうかで‥‥。

ただ、使いやすいかどうかは、懸念もあります。このミニマリズムデザインは、スイッチ類を徹底的に廃して、すべてタッチ式のモニターパネル内で行うことで実現されています。オーナーとなって慣れればよいのかもしれませんが、このときの試乗でも、操作がなかなかわからず焦ったこともありました。

ちなみに、タッチパネル内でこんな画面を呼び出して、ミラーやステアリング位置調整など、ほとんどすべての操作を行います。

バッテリーの状況を示す画面。バッテリーはこのように床に敷かれています。モーターはこのクルマの場合、リアにだけあります。ハイパフォーマンスモデルだと、前にもモーターが付きます。

試乗車両のホイールはこんな感じ。カバーを付けたもので、空力にも効くのだと思いますが、モデル3はスタイリングが一見ふつうのクルマなので、こういうのを付けたほうが、いかにも次世代EVらしく見えるかもしれません。

余談ですが、こんな感じのホイールを、ときどきプリウスでも付けているクルマを見る気がします。プリウスのとくに現行4代目モデルは、スタイリングも大変に凝っていて、このテスラとは対照的な感じです。プリウスが満艦飾のスーパーカー的なつくりこみがあるのに対し、モデル3は一見どこにも旗がたっていないかのような単純さ‥‥。

どちらも「未来先どり自動車」ですが、プリウスのほうは、スタイリング、内装から、走行システム、パッケージングまで、大トヨタの優秀なスタッフが総出で、徹底的に完成度を高めようとした感じなのに対し、モデル3のほうは、バッテリー工場をはじめ、生産システムさえ整えたら、あとは一気呵成にあまり悩まずにスパッと車両をデザインした、というような感じに思えます。まあ実際はそんなに単純ではないと思いますが‥‥。

プリウスも、2代目モデルあたりは、超シンプルな空力的デザインで、今のテスラと似た感じがあった気がします。テスラは今は文句なく開拓者の立ち位置ですが、10年、20年後にモデル3の後継車がどのようになっているのか、見てみたいものです。世界中に増えたEVの中に埋没しているのか、それとももう地上にはとどまらず、成層圏を飛び出したり、地下を走ったりしているのか?‥‥。

(レポート・写真:武田 隆)

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