2月に行われたJAIA輸入車試乗会。ジープ・アベンジャーに乗った印象です。
ジープ・ブランドのコンパクトSUVのEV。外観は、同じ欧州製であるレネゲードよりも、コンパスやコマンダーなどに似た感じで、モダンなジープの印象です。
ジープらしく、SUVらしいタフさが表現されたボディサイド。四角基調のボディのため全長は4105mmに抑えられ、同じプラットフォームのフィアット600eよりも短い。
それでも荷室容積などは600eとそれほどは変わりません。車重は1845kgで、航続距離は486km。モーターは156ps /27.5kgmで、とくに馬力はEVとしては控えめともいえますが、十分です。
インテリアは機能性を感じさせるデザイン。シンプルですが適度にモダンで好印象です。ステアリングはほかのジープ各車と同様に3本スポークですが、ただ握った印象がややタフさを感じさせないフィーリングで、聞けばフィアット系モデルと握り部分など共通のようです。ここだけが、しいていえば少し“違和感”を感じた部分です。それ以外は、ジープブランドとしても、ふつうのコンパクトSUVとしても、大変よくまとまっていて、好印象でした。
走ってみると、いかにも“ふつう”です。ふつうというのは褒め言葉です。すごく洗練されたりすごく光るところはないけれども、どこにも欠点がない。同じプラットフォームのフィアット600eが乗り味が洗練されており、ジープ・ブランドのこちらはもう少しゴツいかと思いきや、乗った環境も違うし時間差もあるので比較できませんが、やはり良好な乗り味で、ゴツい印象はなし。600eが18インチホイールのところ、こちらは17インチを履くので、それが乗り心地に影響したとも思われます。
ボディ剛性が高いのは、まず感じました。田舎道では多少は路面の凹凸を拾いますが、悪い印象はなく、自動車専用道で少しスピードがのっても、安定してよく走る。クルマとして好印象です。「ふつう」というのは、変に自己主張の演出がなく、質実剛健、実用性重視の上に立脚したアメリカ発ジープ・ブランドの良さ、なのかもしれません。レネゲードはややジープらしさを強く演出したところがありますが、このアベンジャーはそれがないので、むしろ本来のジープらしいといえるのかとも考えました。
もうひとつだけ気になるところは、細かい部分ですが、ウィンカーの音。ドラムでドンチャ、ドンチャ、とリズムを刻むような音です。言われなけば気づかないとも思えますが、そうだと思うとそのように聞こえます。楽しさの演出で、自然に笑ってしまいますが、笑いたくない状況でこれをどう感じるのかは、ちょと気になりました。まあ2種の音を組み合わせただけで、ふつうのウィンカー音ともいえるので、オーナーはとくに気にしなくなるのかとも思います。
ヨーロッパのカーオブザイヤーを獲得しているそうで、それも頷けるクルマでした。今回はオンロードだけですが、FFでありながらも、オフロード走行の助けになるモードも装備されており、ジープらしい能力も与えられています。EVが欲しくて雪道や悪路に行く機会があるという場合、ふつうに選択肢になるクルマと思った次第です。
(レポート・写真:武田 隆)