JAIA輸入車試乗会2022(キャデラックCT5)

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JAIA(日本自動車輸入組合)の主催する試乗会で、乗ったクルマをレポートします。キャデラックはCT5とXT4に乗りましたが、まずはCT5から。

CT5のルーフはファストバック風の流線型です。日本のクラウンもそうですが、セダンが危機なのは世界共通で、こうしたスポーツルックが目下、生き延びる道かもしれません。

CT5はCTSの後継に相当しますが、最新のキャデラックの顔つきです。歴代CTSは、いかにもモダン・キャデラックという雰囲気がありましたが、CT5の外観は、より最大公約数的な印象。今回の車両はCT5スポーツというグレードで、外装のメッキパーツが少ないのも、すっきりと見える要因のようです。

クルマとしてはスポーティ・セダンとしての側面が充実しています。タイヤは245/40R19のミシュランを履いていました。

内装もオーソドックスです。キャデラックらしいというか、アメリカ製品らしく、奇をてらわずに実直なものづくりを感じます。革装部分は黒で、スポーティな赤のステッチが目立ちすぎずに入っています。この車両はドアトリムや座面が白ですが、その面積も限定的です(もっと白が多い内装色もあるようですが)。

ステアリングも骨太、GTカー的で“男のセダン”という印象。といってマッチョな感じではなく、外観などはむしろスリムな印象です。

メーターパネルは液晶で、モードによって表示が変わります。これはスポーツモード時で、中央にタコメーターが表示されます。このタコメーター表示は、レヴリミット付近がいちばん見やすい上に来るという、昔のレーシングカーのようなものになっています。

ATモード時に、手動でシフトダウンすると、しばらくしてもシフトアップしてしまうようなことがなく、6000rpm付近をキープしたまま走りました。タコメーターも伊達ではないようです。

エンジンは4気筒でも高回転までスムーズで、音も悪くないですが、演出として派手さはありません。そこは基本ふつうのセダンなので、実直な範囲にとどめているようです。出力は240ps/350Nm。常識的な範囲で十分パワフルな数値です。

ファストバック的なルーフラインなので、後席ヘッドルームはやや低めで、座高が高めの場合、姿勢にやや制約がある感じです。とはいえ極端に低いわけではありません。

さて走ったみると、GT的セダンとして好印象でした。田舎道を低い速度で走っただけなので、楽しさを感じることはなかったものの、よく走りそうで、運転がしやすい。いい感じの印象です。サスペンションは締まっていますが、しなやかで高速道の目地段差も心地よく越えていきます。ブレーキのフィーリングも好印象でした。ちなみに走行モード変更でブレーキフィーリングを変えられるようです。

CT5は今のキャデラックで日本では唯一のセダンというのが、ちょっとした驚きです。米本国でもほかにCT4があるのみ。かつてのおおらかなアメリカ車のイメージを継ぐのは、おそらくSUVの大型モデルです。

キャデラック車が戦後、改革されたのは1975年のセヴィルが最初です。石油危機に象徴されるダウンサイズの波と、ドイツ製高級車の影響でコンパクト化したのでした。その後1980年の2代目セヴィルで(セダンが)初めてFF化。

ダウンサイズとFF化は、ほかのすべてのアメ車と同じ流れでした。ただ、それではだめだということで、2003年に初代CTSがFR化され、開発時にニュルブルクリンクを用いるなど、ツーリングカーとしての性能を磨きました。

FR化と走行性能重視は、世界的に強いドイツ高級車の影響が、引き続きあると思われます。しかしキャデラックがそういうクルマづくりを始めて20年近くになり、最新のCT5はもはやそれも板について、キャデラックの文化のひとつになっている気がします。

だから走りについては、ドイツ御三家などと肩を並べ、そのうえに独自のテイストもしっかりあります。結果的に、スポーツセダンとしてほかにない魅力を持ち合わせています。ただ左ハンドルしかないのは残念。抵抗感のないデザインも間口を広げていますが、個人的には、もう少しキャデラックらしさが濃いといいなとも思います。ただその点は、CT5プラチナムだとメッキ部分が多く、印象も変わるようです。

価格面では、キャデラックのブランドイメージが心配になるほど割安感があり、試乗したCT5スポーツは639万円、CT5プラチナムの場合は569万円です。ちなみにスポーツの場合はFRではなく4WDですが、とくに今回の試乗ではそれは感じられませんでした。

(レポート・写真:武田 隆)

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