ルノー・トゥインゴに試乗しました。リアエンジンを採用して旧型から大きく変わったスモールカーですが、まさにユニークで楽しいクルマでした。歴代トゥインゴの過去の経緯も考察して、レポートします。
新型トゥインゴは初代から数えて3代目になります。初代の登場は1992年で、フランス本国で3代目が発表されたのは2014年だったので、ゆうに20年以上を2世代でこなしたわけで、モデルスパンが長いクルマです。とくに初代は長く、欧州では14年間もつくられました。完全新規設計の低価格車だったので、開発費をペイするために、できるだけ長く多く生産したかったようです。(歴代トゥインゴの図版などは後ほど出てきます)。
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バックドアはブラックアウトされています。ちょうど同じAセグメントに属するフォルクスワーゲンup!とフィアット500の中間のようなデザインという気がします。単純にバックドアの角度や、全体の四角さ(丸さ)の加減から思ったことではありますが‥。
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周知のように、この3代目トゥインゴは、スマート・フォーフォーと車台を共用しています。ダイムラー・ベンツとルノー(及び日産)の協業の一環として、そうなったわけですが、その大きな理由は、量産効果で車台開発費を回収したいためです。ほかの車種と共通性のないリアエンジン・シャシーなので、コスト的には通常のFF車よりも不利です。2代目までのトゥインゴはFF車だったから、リアエンジンになったのは、もともとリアエンジンだったスマートにルノーが合わせた、と想像するのがまずふつうの見方で、おそらくその面は実際のところ大きかっただろうとは思います。ただしルノーの言い分としては、スマートとの協業が決まる前からトゥインゴをリアエンジンにすることは検討していたということです。
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ルノーの人の話では、2代目トゥインゴは今ひとつ精彩を欠いていたので、後継の3代目を考えるにあたって、成功した初代のように、ユニークで革新的なスモールカーとして再出発することを、模索していたそうです。リアエンジン設計は「ユニーク」ということでは、まさに適任です。スマートと同じにはなってしまうし、設計面で若干ルノーらしからぬところがあるクルマになっているようにも実車に接して思いましたが、ユニークなスモールカー、シティコミューターとしては、今回のリアエンジン・プラットフォームの採用はルノーとして合理的判断であるし、結果としてねらいは成功していると思う次第です。
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2015年東京モーターショーでの展示。歴代スマートの設計手法が受け継がれているとはいえ、開発のまとめはルノー側が担当し、エンジンもルノー製です。ルノーは1973年までリアエンジン・セダンをつくっていたので、それ以来の復活ともいわれますが、リアエンジンをつくっていたのは1946年登場の4CVからなので、ある意味限定的であり、むしろ「FF車の採用が早かったメーカー」というほうがふさわしく、FF化を推進した量産大メーカーとしては同じフランスのシトロエンに次ぐ存在という見方ができます。
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ルノーの乗用車で最初のFF採用は、1961年の4(キャトル)でしたが、ちなみに4の後継に相当する車種は、カングーとこのトゥインゴであり、もともと貨客両用的な低価格多用途車として一世を風靡した4の、多用途車としての面をカングーが、そして低価格の"客用"車としての面をトゥインゴが継いだといえます。もっぱら乗員重視のコミューターというそのねらいからも、リアエンジンの採用は理にかなっています。
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実は3代目トゥインゴはリアエンジンではなく、厳密には、ミドシップというほうが正確です。エンジンのクランクシャフトがリアの車軸より前側にあるからです。ただし49度後方に寝かせて車軸後方にもエンジンがはみ出しているので、リアエンジンといっても抵抗ない感じです。そもそも後部にエンジンがあれば、ひとくくりにリアエンジンと分類することもよくあります。ちなみに、ミドシップだとすると、ルノーは5(サンク)ターボ以来、ルーテシア(クリオ)V6、ワンメイクレース用モデルなど、スポーツ車では現在に至るまで経験があります。さらに傘下のアルピーヌを含めれば、先ほど書いたこととはまったく矛盾しますが、ルノーはリアエンジンのスペシャリストだといえます。今年ついに復活が決定的になったアルピーヌの新型モデルも、ミドシップ方式になるはずです。
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エンジンの前方、リアシート下辺りに燃料タンクが収まります。エンジンはだいたい車軸上にあるので、リアエンジンといってよい雰囲気です。厳密なリアエンジンよりはリアオーバーハングは短くなります。また寝かせているので、荷室のフロアを低くできます。
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これはフロントセクション。エンジンはリア側でも、ラジエターとファンはフロント側にあります。フロント側にスペースができるのがリアエンジンのメリットですが、衝突安全も考えながらぎりぎりにフロント側前後長を詰めているためもあって、フロントにはトランクスペースはありません。実際は、このほかにステアリングシャフトをはじめ、いろいろなものがこのスペースに収まります。
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真横から見ると、ノーズの短さがわかります。一般的に言って後部スペースに関してはエンジンもデフもないFFが有利ですが、フロント側を短くできるので、全長ではリアエンジンのほうが短くできます。後部スペースは、つまり荷物スペースということなので、人の移動が主目的であるコミューターとしては、リアエンジンこそが車体を最小にできるわけです。ただし、後部は床下にエンジンを収めるので、後部荷室とともに後席の配置には制約があります。実際このトゥインゴも後席はあまり広くはありません。
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外観デザインを見ると、ベルトラインが、とくにリアのフェンダー付近で少しキックして下がりながら、外側に広がっています。構造的な理由もあるかもしれませんが、これはルノーの後部エンジン車(ミドシップ)のヒット作5(サンク)ターボへのオマージュとしてデザインされています。スマートとは設計的には姉妹車でも、外観デザインはまったく異なります。トゥインゴのほうがある意味ふつうのクルマとしても抵抗のないデザインでまとめられている印象です。全体に角ばっているという印象ですが、最近のルノーは、現行ルーテシア以来オーガニックな曲面が目立つのに対し、新型トゥインゴが四角いのは意外でしたが、どうも5(サンク)をひとつのモチーフとしていることも理由としてあるようです。
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これが5ターボで、通常の5の後部にエンジンを積み、リアフェンダーを大胆に広げたクルマでした。これは当時日本でも一種のカルチャーショックとなったクルマでした。ベースの5も、1970年代に大成功したFFコンパクトカーで、時代を先どりしたモダンな外観デザインが印象的でした。だいぶ四角い印象ですが、1970〜80年代のクルマは、四角いデザインが主流でした。
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この角度から見るとリアフェンダーのふくらみがわかります。フロントマスクはローレンス・ヴァン・デン・アッカー率いる最新ルノーの顔になっています。ある意味オーソドックスともいえるくらい、よくまとまったデザインという印象です。
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デザインのモチーフは、とくに5から多く受け継いでいますが、ヘッドランプは初代トゥインゴもモチーフにしています。初代トゥインゴは成功作であったので、初代を受け継いでいることは商品説明でも強調されています。ただしこのイラストにも示されているように、実は、"失敗"とみなされた2代目トゥインゴ(左下)もモチーフとしているようです。こうやって見ると、2代目トゥインゴのモチーフはかなりそのまま受け継がれています。直接の後継モデルなので、デザイン的な連続性が与えられているのだと思います。
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これが2代目トゥインゴです。これは2011年に発表されたマイナーチェンジ版の顔で、初回登場時から大幅にテコ入れがあり、ヴァン・デン・アッカー体制が打ち出した新世代ルノーのグリル形状が初めて採用されたモデルでした。だからこの顔を3代目トゥインゴが引き継ぐのはある意味当然ともいえます。しかしこの2代目のマイナーチェンジ版で目についたのは、バンパー部分に追加された大きな丸型ランプです。ちょっと日産ジュークが連想されますが、2代目トゥインゴとしては大胆なデザインです。この丸型ランプが3代目トゥインゴでも抑えた形で継承されているのが、おもしろいところです。レポーターが勝手にそう思っただけですが、おそらく間違いはないと思います。
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上述のとおりこの2代目トゥインゴ、大成功とみなされる初代に比べて、販売台数は少ないし、モデルとしては希薄な印象だった感があります。初代のようなシティコミューターに特化したユニークなキャラクターがなくなり、ふつうの実用的なスモールカーになったような印象がありました。当初からそれなりにフロントマスクのデザインもチャーミングなものでしたが、存在感が足りなかったとみえ、そのために、マイナーチェンジ時に若い世代にアピールしそうなこのインパクトのある顔つきに変えてきたのだろうと思います。このことからもわかるように、トゥインゴは再びユニークなシティーカーとして再生しようと模索していたのであり、その結果がリアエンジンの3代目トゥインゴになったわけです。
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余談ながらこれが、2007年に発売された2代目トゥインゴの、マイナーチェンジ前のオリジナルのデザインです。このフロントマスクは、市販化直前に、いわずとしれたカルロス・ゴーン氏が待ったをかけて、手直しをさせた結果のものだといわれます。極端にシンプルで「宇宙人」のような目つきのこの顔は、なかなか愛嬌があり、コンパクトカーとして魅力あるものだったと思います。
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ちなみにこれが伝説的な成功作、初代トゥインゴです。ボンネットとフロントウィンドウが一直線に続く、顕著なモノフォルム・ボディをスモールカーに採用したモデルです。ボンネット(エンジンルーム)を限りなく小さくして、車室の広がりを最大にしようとした設計で、FF車の空間効率のよさを最大限活かそうとしたコンセプトでした。その点ではリアエンジンになった3代目は、この初代と逆を行くようですが、フロントの"ボンネット"を最小にした点から考えても、空間効率の究極的追求という意味では、設計哲学として重なるところがあるといえます。
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とにかくコストが厳しいのが、トゥインゴの宿命です。2代目が存在感不足だったために打開策が求められ、なおかつコストのかかる新規開発のリアエンジンを採用するためでもありますが、スマートと協業したのはコスト対策がいちばんの大きな要因ともいえます。ちなみに2代目トゥインゴはひとつ上のルーテシア(クリオ)のシャシーを流用したようです。コストダウンのためには賢明ですが、そのために個性の薄いクルマになってしまったのかもしれません。
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初代トゥインゴの場合はシャシーまで専用設計でした。だからユニークでエポックメーキングなモデルとして誕生できたといえます。ただしルノーとして新規導入の車種、プラットフォームであったため、導入にあたってコスト計算が極めて慎重に検討されたという経緯があります。ルーテシア(クリオ)のほうが、汎用性の高いハッチバック実用車として、販売台数が多く、シティコミューターのトゥインゴは、台数的にはもっと少なく、そのうえ価格面ではさらに制約があるので、容易には手を出せない商品開発だったようです。ルノーは1980年代頃からコスト管理に非常に厳しい会社になり、その伝統は今も続いているわけですが、そんななかで初代トゥインゴは企画されました。その初代トゥインゴには、当時ルノーのデザイントップに就任したばかりのパトリック・ルケマンの強い思いから、大胆にチャーミングなデザインが実現されました。それによって、ただ安いだけのスモールカーではなく、キャラクターがあり時代のセンスに訴えるクルマとして、無事に誕生できたわけです。
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トゥインゴは、メーカーの最小車種ではありますが、実は単なるコストダウンのクルマではなく、近年のフィアット500やBMWのMINIと同じように、成熟市場に対応したスタイルをもったスモールカーとして誕生したのでした。それを完全専用設計で始めたのだから、初代トゥインゴはなかなか大胆な商品開発です。その伝統を1代とばしてこの3代目でも継承したといえます。スマートと協業ですが、トゥインゴの立場から考えれば、スマートをうまく使ったといえます。もちろんスマート側もうまく使っているわけですが、まあWIN-WINの関係に当然あるわけです。余談ながら、TWINGOという車名は、TWIST、SWING、TANGOからの造語といわれます。
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内装は、コストを抑えるようデザインしたということが伝わるシンプルに徹したものですが、いわゆるチープな印象ではないし、ましてや粗雑でもありません。ポップなデザインとしてちゃんとつくられています。ダッシュボード形状は同じだし、インストルメントパネルのデザインなども、スマートと共通性は見てとれますが、ダッシュ表皮のデザインを変えるなどして、印象は大きく異なり、それぞれのブランドの世界を構築しています。トランスミッションは、ツインクラッチの6速EDCで、近年のルノーで導入が進んでいるもので、欧州の近年のトレンドにも沿っています。Aセグメントとしてはなかなかぜいたくな採用です。ただしパドルシフトはありません。フロアのシフトレバーを左に倒すとマニュアルシフトができます。
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ステアリングは上質感のある革巻きで、運転者が直接接する部分の質感が高いことは、乗った印象に影響していると思います。このステアリングはかなり軽く、あるFFコンパクトカーから乗り換えたときには、地下駐車場のコーティングしたようなつるつるの路面だったこともあり、スリックカートかなにかの乗り物のようだと思ったほどでした。もちろん、走り始めるとふらふらするような不安感はまったくありません。この軽さは前が軽いリアエンジンの恩恵かとも想像しますが、パワーステアリングの設定でどうにでもなることでもあり、意図した設定であるのかもしれません。なんにせよ、ステアリングをたくさん回す状況ではとにかく楽です。そしてそれ以上に、ステアリング切れ角が大きいのが文字どおりありがたいことです。試乗中に道を間違えて観光地鎌倉の狭い路地で、バックしての際どい方向転換をしいられましたが、予想に反して切り返しなく一発で脱出できたのは感動的でした。Uターンでの方向転換ももちろん得意技で、FFコンパクトカーが切り返しが必要だった路地で、余裕でUターンできました。前輪の切れ角が大きくとれるのはリアエンジンゆえのメリットですが、これもシティコミューターとして適した特性です。
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シートは立派なものがついています。座面の感触はよく、クッションの質感などルノー特有のものかなとも思います。シートバックがヘッドレスト一体型で、立派なのはよいですが、ただしこれは後席にとっては閉塞感を感じさせるものにはなります。つまりは前席重視の想定といえるのでしょう。
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後席は、足もとに関しては、少し大柄な人が前に座ると、膝があまり余裕がありません。前席助手席も後席に配慮して前に出そうとすると、広々感はなくなります。4人乗るスペースは基本的に確保されていますが、くつろげるほどではなく、前席シートバックのためもあり、閉塞感はあります。このあたりは全長がもう少し短い軽自動車のほうが後席の広がり感はもっとあるという印象です。前席もそうですが、頭上スペースがそれほどはないと感じるのは、着座位置が高いせいもあるようです。これがフロアの構造上の都合もあるのかはわかりませんが、視界のよさというメリットにつながっています。近年の欧州スモールカーは座面が高い傾向があるようです。全高は1545mmで、軽自動車のトールワゴンよりは低くなっています。ちなみにこの車両は、ルーフはキャンバストップで開放可能で、閉じたときはしっかりしています。
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後部スペースはこんな感じです。エンジンが収まるので、床は高くなっていますが、奥行きはあり、ある程度十分なスペースともいえます。シートを畳めば、荷物スペースは広く使うことも可能です。また応急的な感じにはなりますが、後席シートバックを90度ぐらいに立てて4人なり、3人乗ったまま荷物スペースをもう少し拡大することも可能です。
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エンジンが後部にありますが、フロントエンジン車のようにバルクヘッドでしっかり隔てられているわけではないので、試乗前は、音の面では室内に侵入するかと思っていましたが、実際は十分静かでした。試乗のほとんどがエアコンの風量が強い状態だったこともあったので、厳密な評価ではないですが、後席でもうるさく感じず、前席ではなおさらでした。ただしエアコンを切って静かにして走ると、後にエンジンがあるというのはわかります。また、ラジエターファンがフロント側にあるので、炎天下で渋滞ぎみのときなど、ファンがまわると、前方からファンの音、後方からエンジンの音と、前後から音がするという状態にもなりました。この前側のファンは、ノーズが短く、間にエンジンもないだけに、通常よりは多少音は大きいだろうと思いますが、とくに不快なほどではなく、ああ前後から音がするな、と思うだけのことだとは思います。ロードノイズも少ないクルマで、それはいわゆるエコタイヤなどを履いていないせいもあるのでしょうが、とにかくスモールカーとしては異例に高品質なボディという印象でした。
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エンジンの上部はもちろん鉄板の蓋で室内と遮断されますが、そのうえに、断熱と遮音を兼ねるようなウレタン状の分厚いマットが敷かれます。これを外したらさぞ大きな音が室内に入ってくるだろうと、試しに外した状態で後席を体験してみましたが、意外にもそれほどは変わりませんでした。熱の面でもどういうわけか熱くならず、2時間半試乗したあとにエンジン直上の鉄板にさわっても熱くありませんでした。そのうえにこのマットが置かれるので、安心感は高そうな気がします。
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そのほか、乗ってみての印象ですが、足まわりの路面とのコンタクトが柔らかく、非常に乗り心地がよく、そのうえで基本はしっかりした足なので、足回りはよいという第一印象でした。スピードがのれば爽快感が増すような、いわゆるヨーロッパ車のいいところを備えた感じです。ボディ剛性もフランス車にしては異例に、と言いたいほど高い印象で、それも乗り味のよさにつながっていると思われます。ただし路面の状況によっては、ひょこひょことした上下動を感じるときもあり、その辺りがルノーのほかの車種とは少し違う流儀という印象も持ちました。
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試乗会で交代しながら2時間半程度と、その後日にちを変えて一人で3時間程度市街地を走っただけなので、高速道や山間部などは未体験ですが、リアエンジンらしさは、カーブが続く区間などで、フロントタイヤによけいな反力がまったくこないことから感じられた、という次第です。装着タイヤはミシュランのエナジー・セーバーで、フロントが165/65R15に対し、リアが185/60R15で、ワンサイズ差をつけています。いかにもリアに重量感があってリアで路面を掻いているような気はしましたが、挙動としてそれを感じるほどではありませんでした。エンジンは0.9リッターのターボで、90ps、13.8kgm。十分よく走りますが、スポーティというほどではありません。いずれスポーティ・モデルも導入される予定です。
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価格が税込み189万円と、輸入車としては、大胆な低価格で、反響も大きいようです。キャンバストップ付きでもプラス10万円で、200万円を切ります。純粋な使い勝手、総合的な広さでいえば、ふつうのFFリッターカーやトールタイプの軽自動車のほうが上回ります。ただし、フランスのルノーならではのデザイン、キャラクター、そして乗り味の独特さで、はっきりと魅力があります。ある意味ではくせもあるので、この乗り味は好みの差が出る部分もあるかと思いますが、やはりリアエンジン・スモールカーならではの、独特の楽しさ、機敏さを、常に感じられるクルマであるのはたしかです。なにより、とりまわしのよさは、実質的なメリットとして、重宝されるところです。ルノー・ジャポンではパリが仕立てたクルマとしてアピールしていますが、まさにそういう雰囲気を感じられるクルマと思います。
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新型トゥインゴは、必ずしも広い室内空間を感じさせないこと、剛性の高さをはじめ異例に質感の高いところがある、など、ルノー、あるいはフランス車としては、少し違った感じがある気もしました。質感の高さなどは、もしかしてスマート(メルセデス)との協業による贈り物と言えるのかもしれませんが、とにかくルノーがつくるクルマであるのは間違いないことです。成熟市場である日本では、このトゥインゴは有望な車種だと思います。素直で、ちょっとおしゃれでもあるというルノーらしい雰囲気に満ち、スモールカーであり、価格面でも低く抑えられたところは、ルノーの好ましさが全面に出たといえそうです。リアエンジン・スモールカーというのは、乗り手の的を少し絞ることにはなりますが、それでもとくに日本で、多くの人に好かれるタイプのクルマではないかと思います。
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(レポート・写真:武田 隆)