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フォルクスワーゲン・トゥーランに試乗

ゴルフ・トゥーランに試乗した印象です。まさにゴルフのミニバン版というべきクルマでした。


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ゴルフをベースにした3列シートのミニバン。通常のゴルフよりもデザイン的には、水平基調やシャープさが増している印象です。
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フロントだけでなく、リアもゴルフのイメージを受け継いでいます。ただ、ボディ側面のキャラクターラインの入れ方は、ゴルフとは若干異なります。例によってプレスラインが非常にシャープです。
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シンプルを信条とするVWデザインですが、ゴルフ・トゥーランは意外にプレスラインが多数入っています。Aピラーも断面で見ると結構彫り込まれた造形です。ただ、さすがにドイツのモダンを自負するような存在のVWだけあり、基本的には整理された直線的なプレスラインが入るのみで、線が波打ったり装飾的なカーブを描くようなことはありません。
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ボンネットのプレスラインは、ゴルフと同様で、シャープさが際立ちます。
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室内のデザインは、やはりゴルフと通じるものがありますが、基本的には別のデザインです。
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メーターはこんな感じ。非常にシンプルなデザインです。ダッシュボード面やメーターパネル面には、ゴルフと同様にピアノブラックを多用しています。
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スイッチ類。シンプルながら高品質さがにじみ出るつくりです。下に6個並んだスイッチの一番左のMODEと書いてあるボタンは、ドライブモードを選択するためのボタンです。実際にはオーナーが頻繁にこのスイッチを使うかどうかわかりませんが、今回の試乗中はいろいろ試すためにこのスイッチを使うことは多く、右ハンドル車なのでこのスイッチが運転席からちょっと遠い位置になり、そこは惜しまれるところです。
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これはモードを選ぶ画面で、カスタムモードの場合の各項目はこんな感じです。このDCC(アダプティブシャシーコントロール)は、VW各車でおなじみのシステムで、トゥーランではTSIハイラインのみオプションで選択できます。
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2列目シート。3人のシートがそれぞれ独立しています。一番右のシートは、オプションのインテグレーテッドチャイルドシートになっています。座面を下げれば通常の大人用シートに戻ります。
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3列目シートはこんな感じ。2列目よりは快適さは劣りますが、1列目と2列目が3列目に配慮してシートポジションを若干前ぎみにすれば、まずはちゃんと座ることができます。
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3列目を畳めば荷物スペースは充実します。このように半分畳むことも可能です。
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エンジンは1.4リッター直噴ターボのTSI。150ps、25.5kgmあり、力は十分と思います。ただし車重もあるし、ノーマルモードでは市街地では1500rpmぐらいで走る感じで、積極的に流れにのって走る場合などに一瞬もたつく印象も受けました。このクルマに慣れて、そんな場合のペダルの踏み加減を会得すれば問題ないのでは、とは思います。ちなみにスポーツモードで走るとやはり回転を上げ気味で走るのでちょっと落ち着かず、市街地ではノーマルモードで走りたいところです。
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広報車を6日間ほどお借りして乗りましたが、最初乗った印象は若干硬めの乗り心地かとも思ったくらいで、それほどソフトではありませんが、絹に包まれたような上質な乗り味は、ゴルフと同様でたいへん洗練されています。市街地ではノーマルモードよりも、コンフォートを選んだほうが快適でした。
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ミニバンとしてえも言われぬ洗練されたクルマだと思ったあと、VWグループの上級ブランドのセダンに乗って、また乗り換えた直後、あれ?トゥーランは普通のクルマだったか?と、思う場面がありましたが、ただ相手は洗練さでは第一級のアウディA4だったので、さすがに差を感じたようです。
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ちなみにACC(アダプティブクルーズコントロール)を使用してみたところ、ブレーキの効かせ方は導入されたばかりの段階のアウディA4よりは、トゥーランのほうが洗練されている部分があると思いました。おそらくVWとしてもモデルごとに進化しているようですが、停止する直前の動作が洗練されており、停止寸前にすっとペダルの踏力をごくわずかに抜いて、カックンと止まらならないようにする繊細さは、人間のうまい人が運転しているような感じをうけ、感心すると同時に、今話題のディープラーニングではないですが、そのうち運転も人間よりも機械のほうがうまくなるのだろうなと、考えさせられた次第です。機械というか、コンピューターというか、クルマがクルマを運転する?わけですが。
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ワインディング路でもよく走るクルマで、上記のようにA4の直後にワインディングを比較するタイミングになってしまったので、それと比べればやはりミニバンらしい大柄さが感じられましたが、ほかのミニバンと比べればよく走るのは間違いないと思われます。国産ミニバンよりも全幅が多少広めで1830mmあり、市街地などでの取り回しでなんとなく大きさを感じることはありましたが、ミニバンとしてはとくにボディが大きいわけではありません。そこそこの価格で、走りのよさ、上質なフィール、実用性などを備えた、価値のあるミニバンの1台と思います。ちなみに2016年9月現在の価格は、試乗したTSIハイラインは379.9万円、最廉価のTSIトレンドラインで284.7万円です。
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(レポート・写真:武田 隆)


リポーターについて

武田 隆(たけだ・たかし)

1966年東京生まれ。早稲田大学第一文学部仏文科中退。出版社アルバイトなどを経て、自動車を主体にしたフリーライターとして活動。モンテカルロラリーなどの国内外モータースポーツを多く取材し、「自動車アーカイヴ・シリーズ」(二玄社)の「80年代フランス車篇」などの本文執筆も担当した。現在は世界のクルマの文明史、技術史、デザイン史を主要なテーマにしている。著書に『水平対向エンジン車の系譜』 『世界と日本のFF車の歴史』『フォルクスワーゲン ゴルフ そのルーツと変遷』『シトロエンの一世紀 革新性の追求』(いずれもグランプリ出版)がある。RJC(日本自動車研究者ジャーナリスト会議)会員。

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