トヨタに関連するブースは、前回に続き、今年も見ごたえのある展示が多かったと感じました。
これはまあ「お遊び」の世界ですが(このイベントに集まっているクルマは皆そうではありますが)、堂々とトヨタ本体の企画です。「シャア専用オーリス」は以前からあって、けっこう好評なようで、昨年マイナーチェンジ時に企画がグレードアップして少し派手さが増したようで、ここでもこのような演出になっていました。実は意外に街中で「シャア専用オーリス」は走っているもので、地方都市などで前を行くクルマがそれだった、という経験があります。
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これはGAZOO RACING のブースにあった車両で、2014年にアメリカで発表されたFT-1。実車を見ても写真で見ていたのと同じ雰囲気でしたが、トヨタ2000GTのようでもあるし、86のようでもあるし、トヨタ車らしいデザインと感じた次第です。ノーズが長いですが、あからさまなマッチョに走らず、一定の品があるし、随所で細かくいろいろ凝っているデザインという印象です。
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これはその隣の展示で、いろいろトヨタはタマをもっているというか、ほかにもまだいくつか市販予定車などの目をひくクルマがありました。このクルマは昨2015年暮れのモーターショーで展示されていましたが、今回はいわばその強化版で、SF-Rレーシング・コンセプトという名称です。モーターショー時の"ノーマル車"の状態だと、小さな車体に大口をあけたグリルがいまひとつなじめませんでしたが、オートサロンのツワモノ車ぞろいの中ではこれぐらいがちょうど落ち着くのか、抵抗感なく見られました。存在感を意図したのだとすれば、この顔は成功していると思う次第です。容姿についてたとえるなら大口を開けたダボハゼといった感じです。
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今年はニュルブルクリンク24時間耐久レース参戦の10周年ということで、過去の参戦車両がこのように並べられていました。
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この2台のヴィッツは手前が全日本ラリー参戦車両で、奥がWRC用マシンのプロトタイプです。WRCマシンは2015年にテストに供されていたものだそうで、ドイツのTMGで制作されましたが、今ではWRC参戦はトミー・マキネンのファクトリーで仕立てることに変更され、今後レギュレーションも変わるのでこのクルマとは違うクルマになるようです。
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手前の全日本ラリーのマシンは、昨2015年2月頃にトップダウンで日本のラリーに参戦するチームをつくれということで、社内にそういうチームがつくられてラリーカーの制作も急遽始まったそうです。話を聞いた方から頂いた名刺を見ると「モータースポーツ本部 凄腕ラリー養成部」とありましたが、ラリー経験を通じて車両開発を学んでほしいという意図からのチーム編成ということです。GAZOO RACINGのニュルブルクリンクの活動とねらいは同じようですが、ただラリーは公道を走り人に近いということで、市販車にフィードバックできることがより多くあるという考えが基本にあるようです。トップドライバーとのやり取りの中などでも学ぶことがあるのだろうと思います。
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マシンはJN5というクラスで、ベースは150psのヴィッツ・ターボですが、エンジンなどはコンピューターチューンとマフラーなど程度の改造しか認められず、あとは車体補強などが主になります。チームのスタッフは車両開発のプロであっても、ラリー経験者ではなく、いろいろ工夫してラリー車両を開発しているとのこと。ドライバーは一流選手が交代で担当し、トヨタの育成プログラムに選出された、若い新井選手と勝田選手も何戦かに出場しているそうですが、この2人の速さはとびぬけているそうです。2人は今年レベルが高いフィンランドの選手権を追う予定で、スタッフも同行する予定もあるそうで、ゆくゆくはWRCにもスタッフを派遣して人材育成を充実できればということも考えられてはいるそうです。
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2017年から始まるWRC参戦では、おそらくすぐに勝つことは難しいだろうと見る向きもあります。しかしお膝元日本でも連係するようにラリー活動を拡げることは社内に効果を生んで、クルマづくりの文化に、化学変化を起すようなこともあるのかもしれません。しかし願わくばこういった活動が継続するのが肝要で、ホンダのF1参戦でも同じですが、ブランクがあると国際イベントの本拠地欧州から遠いだけに、参戦再開にあたって必要以上の苦労がともなっています。いずれにしても、こういった活動に継続して接することで、スタッフの意識や、クルマづくりの文化が違ってくるのではないか、と期待されます。
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(レポート・写真:武田 隆)