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メルセデス・ベンツE400ハイブリッド・アバンギャルドの印象

メルセデス・ベンツE400ハイブリッド・アバンギャルドに試乗した報告です。

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このクルマはハイブリッドらしい特性をもちろん備えていますが、言われなければEクラスのふつうの上級モデルと思ってしまうかもしれず、乗っていて特殊なことはそれほどは感じません。燃費は、250km弱、高速道、山道を、比較的アクセルを踏むことが多く走って、おおよそで11km/リッターでした。車重1860kgと考えるとよく走ったと思います。

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ハイブリッド用のリチウムイオンバッテリーは、エンジンルームの狭いスペース内に収められています。電池容量は限られていますが、そのわりにはモーターのみでのEV走行もするなど、意外に本格ハイブリッドらしさがあります。

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左上の黒い箱に覆われているのがリチウムイオン電池。モーター出力は27ps(20kW)と小さめで、エンジンはV型6気筒3.5リッター、306ps(225kW)を積みます。さすがにV6だとエンジンは気持ちよくまわります。

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ハイブリッドのシステム全体は、エンジンルーム内に収まるので、キャビンスペースより後方は、通常のEクラス同様に使えます。Eクラスには、V型8気筒搭載モデルもあるので、スペースに余裕があるのかと思います。ただしエンジンルーム内のバッテリーのために左ハンドルのみの設定です。メルセデスの人に話を聞くと通常モデル同様に右ハンドル化は可能らしいですが、このモデルが北米主体で右ハンドルが数を売れないために右仕様は用意していないとのことでした。ちなみに同じパワーユニットを積むS400ハイブリッドは若干価格は上がりますが右ハンドルが選べます。

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ハイブリッドのシステム作動状況がメーターに表示されます。アクセルオフで惰行中にエンジンを頻繁にオフにすることもあり、高速走行でも場合によってはEV走行が可能です。走行中にエンジン始動する機会は比較的多いわけですが、エンジンがかかるとき非常に静かで、液晶表示を見ていないといつエンジンがかかったか気づきにくいくらいです。
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エンジン始動はスターターによるようで、走行中にチャチャッとかかる音が微かにしますが、振動もほとんどありません。走り始めのEV走行からのエンジン始動はわりと早い印象です。しかしとにかく静かで、大きめな車体の高級車だけに基本的な防振、遮音対策が充実しているようです。上記のように高速走行でも、惰行時にエンジンが停止しますが、その際もエンジン始動のチャッという音がして初めて今までエンジンが止まっていたことがわかる、という具合です。ハイブリッド車特有のキンキンという電子制御音も、ほぼまったく聞こえませんでした。
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回生ブレーキのためか定かではありませんが、違和感があるとするとブレーキの効きに、停止寸前などでの微調整しにくさが若干あるよう感じましたが、それもしばらく乗っていると完全に慣れたので、言うほどのことはないかもしれません。ちなみに試乗は昨2014年のことでした。

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走りはさすがメルセデスという印象でした。動力性能は、パワー、トルクとも十分です。しいて難点をあげると、山道でATが積極的なシフトをせず、パドルシフトでシフトダウンできますが、反応が遅いので、慣れないとギアが変わる前にもう1回シフトダウンをやり直して2速下げてしまうことがありました。ただしそのかわりシフトショックは感じず、なめらかです。
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Eクラス全般のことかと思いますが、乗り味はどっしりしてマイルド、安定感がありました。後発でより新しいCクラスの評価が高いですが、やはりEクラスはひとクラス上に相応しいものを感じます。日本の市街地でゆっくり走っても十分にソフトで、山道に行っても安定感を失わず、多少攻めたててもしっかり走ります。たぶんアウトバーンのような速度域まで安定していると想像しますが、ふところの深さを感じさせます。Cクラスより大柄ですが、そのゆとりと落ち着きは、高級車メルセデスならこうでなければ、と思いたくなるものがありました。

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内装は、CクラスやSクラスなど新型に切り替わった最新のメルセデスより一世代前というべきですが、やはり上質です。最新のメルセデスはなかなかの新しさがあり、それに比べるとクラシカルな雰囲気をよく残しているともいえる気がします。ルームライトにも上品さを感じました。

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ナビ操作のダイヤルはセンターコンソール部にあり、操作しやすいものです。手のひらを置く台があるのがメルセデスの特徴。シフトレバーはコラムにあります。

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後席はこのように、ぜいたくな空間になっています。オプションのリアエンターテインメント・システムを付けており、8インチモニターが装備されています。

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メルセデスは現在、F1で圧倒的な強さを誇っています。2014年に導入された新ルールのF1は、ひらたく言えばハイブリッドが導入されたF1で、マシンの名称にも「ハイブリッド」が入っています。だからといって、市販モデルのハイブリッドも世界最高の技術かどうかはわからないわけですが、モータースポーツは技術開発の場であると同時に、広告活動でもあります。その効果が、効いたのか効かなかったのか、試乗中、終始いいものに乗っているという気分を味わった次第です。


参考: Eクラスマイナーチェンジの発表会レポート

(レポート・写真:武田 隆)

リポーターについて

武田 隆(たけだ・たかし)

1966年東京生まれ。早稲田大学第一文学部仏文科中退。出版社アルバイトなどを経て、自動車を主体にしたフリーライターとして活動。モンテカルロラリーなどの国内外モータースポーツを多く取材し、「自動車アーカイヴ・シリーズ」(二玄社)の「80年代フランス車篇」などの本文執筆も担当した。現在は世界のクルマの文明史、技術史、デザイン史を主要なテーマにしている。著書に『水平対向エンジン車の系譜』 『世界と日本のFF車の歴史』『フォルクスワーゲン ゴルフ そのルーツと変遷』『シトロエンの一世紀 革新性の追求』(いずれもグランプリ出版)がある。RJC(日本自動車研究者ジャーナリスト会議)会員。

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