スバル・レヴォーグについてのレポートです。1.6GT Eye Sightに試乗し、エンジン等メカニズムについても簡単に取材しています。試乗では、気持ちよい走りが印象的でした。
試乗したのは少し前のことですが、印象を報告します。ちなみにその後今年2015年4月にサスペンションなどに小改良が施されています。レガシィ・ツーリングワゴンが北米市場に合わせて大型化された後を受けて、投入されたモデルがレヴォーグ。知人で歴代レガシィを乗り継いでいた人が、大きくなって車庫にも入らず新型を買い控えていたが、ようやく次に買いたいクルマが出た、と言っていました。
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2013年の東京モーターショーでお披露目。日本では出た順番が逆でしたが、レヴォーグは成り立ちとしてはWRXのワゴン版といってよいもの。スバルの人の話では、開発の基本としてはまずWRXがあったとのことでした。それは外観からもわかりますが、ボディサイドの前後フェンダーのはり出しなどはレヴォーグのほうが若干おとなしめで、スマートさがあります。
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従来からあるインプレッサとレガシィの間に、WRXとレヴォーグが新設され、スバルのモデルラインナップが増えたわけです。もっとも、インプレッサ、WRX、レヴォーグは、XVも含めて兄弟車的な成り立ちです。ただ、さらにいうならレガシィも、水平対向エンジン縦置きのシャシーということで、皆共通です。スバルはこのメカニズムを活かして、車種展開をいかにできるかがポイントです。
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フロントビューは、インプレッサと基本が同じとわかりますが、レヴォーグのオリジナルの顔になっています。顔の部分の造形が凝っていて、凹凸が複雑に入り組んでいます。シンプルに徹するドイツ等ヨーロッパ車のデザインとは異なり、いわゆる"ガンダム的"ないかついデザインのようにも思えますが、精悍さがしっかり表現されており、スポーツツアラーの顔として成功していると思います。また、ノーズ先端が低く、スラントノーズ気味で小顔に見えますが、全高の低い水平対向エンジンならではかもしれません。ボンネットの大きなエアスクープも目立ち、よくも悪くも男性的ですが、これのないインプレッサより精悍になっているのはたしかです。
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後方にルーフが長く伸びるワゴンボディは、一般に3ボックスセダンよりもスマートに見えますが、レヴォーグの場合もWRXよりもスマートと感じます。少しごつさのある前後フェンダーのふくらみと合わさって、いかにも快速ワゴンという印象を醸し出しています。
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ヨーロッパのラリーなどでは、サポートカーにワゴンタイプ車が使われますが、かつてWRCスバルのワークスチームでは、レガシィのワゴンを使用していました。当時のレガシィのワゴンはいかにもスマートな大人のデザインでしたが、レヴォーグは少し違う雰囲気です。以前に、WRCアマチームの、アルファロメオのワゴンを使ったサポートカーを見て、いかにも佇まいがよくスポーツワゴン風だと思った経験があります。最近、あるイベント会場へ向かう途中、イベントに参加する2台の"メーカー直属"のレヴォーグが隊列を組んで矢のように追い越し車線を疾走していくのを見て、そのアルファロメオを思い出し、同様なものを感じました。日本車ばなれしたというべきか、レヴォーグは、俊足、快速のワゴンの雰囲気をよく醸し出しているように思います。
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内装は、オーソドックスという印象です。ダッシュボードまわりの基本的造形は、インプレッサなどと共通性があり、各部の加飾などによってより上級に仕立てています。もっともエアコンのダイヤルなどはWRXに比べるとグレードが落ちるようで、シンプルなつくりです。この内装はシンプルで好ましいといえば好ましく、スバルらしいともいえるかもしれませんが、こだわりのあるクルマとして、もう少し満足感の高いデザインを導入してもよい気はします。
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メーターもシンプルですが、機能的には良好で、CVT車ではありますが、見やすいタコメーターがあるのは、この手のクルマとしてうれしいことです。CVTのパドルシフトが付きます。
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スポーティなワゴンらしく、ルーフが後端に向かってなだらかに下降しています。走ってみても、外観から感じるような、伸びやかな走りをするクルマであると思いました。
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足腰はしっかりしていますが、試乗したのは170psの1.6リッター・モデルで、それほど固められてはいません。ワゴンボディゆえ重さもあるので、山道で余程がんばるような走りにはあまり向いてなさそうですが、高速道も田舎道も、そこそこのペースで流すには本当に気持ちよく、どこまでも走りたくなる感じがあります。縦置きエンジンゆえの車体レイアウトのバランスのよさなのか、4WDのスタビリティなのか、理由は定かではありませんが、スバルとしてのクルマづくりの文化から、こういった乗り味が出てくるのかどうか。最近のスバルは、走りの上質感やデザインも含めて、感性に訴える部分を重視したクルマづくりを宣言していますが、もともとスバルにはそういう文化があったのかもしれません。
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気持ちよい走りの一因として、CVTがあります。最近のCVTは、改良が進んでもどかしさを感じさせないものになっていますが、レヴォーグでは走りながら快感を感じることもできました。ギアシフト式の従来のクルマでは、スポーティな運転というと、エンジンの回転が上がり、シフトアップして、またエンジン回転が高まる、というところに爽快感がありましたが、レヴォーグのCVTでは、エンジン回転がほぼ一定でありながら、アクセルペダルを踏んだぶんだけ加速し、まさに電気モーターのようです。ふつうのCVTではそれではドラマがなくおもしろみはないと感じそうなものですが、レヴォーグは違います。回転を上げる緊張感、あるいは摩擦の増加などのストレスがなく、常に滑らかに、自在にスピードにのることができ、スポーティな運転の新しい形と感じます。スバルではこのCVTを「リニアトロニック」と称していますが、まさにアクセルペダルの踏み込みに、リニアに車速が反応します。
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CVTはスバル自社開発のもので、スバルはCVTを得意としてきました。「リニアトロニック」はチェーンを使用しているのが特徴で、曲げ角を大きくとることができ、回転が滑らかなのが特徴です。左が2リッター車用のチェーン、右が1.6リッターのもの。2リッターの場合「スポーツリニアトロニック」と称しますが、「S#モード」といって、ワインディング走行などのために8段変速のプログラムで操作することができます。
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エンジンは、今回の試乗車は1.6リッターだったので、170psでした。通常のクルマとしては充分なパワーですが、このクルマの性格上もう少しあればと思わないでもありません。ただしこの上の2リッターはいきなり300psになり、2倍近い開きがあります。感覚的には間をとって230psぐらいがよいのではないかとも思います。水平対向エンジンは、回転バランスがスムースですが、少なくとも試乗した1.6リッターモデルは、遮音も充実し、回してもとくに快音を響かせることはない印象でした。ただスムースで振動を感じないのはたしかでした。
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写真は、試乗車に積まれる1.6リッター直噴ターボのFB16DITのブロック。シリンダー周囲がブロックから独立したオープンデッキタイプになっています。オープンデッキは、従来は研ぎすまされた高出力エンジンの証のようなものでしたが、今では170psのエンジンでもオープンデッキを使っています。しかもシリンダーとブロックの間に、補強のブリッジが入っていませんが、3Dの解析技術の進化で、強度を保ちながらブリッジなしでつくることが可能になっているようです。そもそも最新のエンジンは、ヘッドまわりを冷やす重要性が高いために、オープンでないと厳しいのだそうです。
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コンロッドのビッグエンドは、一体のものに見えますが、2分割されています。分割線がわからないくらい密着しており、通称「かち割り」といって、一体でつくってから、実際に割るという製法でつくられます。真円を出すためにそのようにしているとのことです。
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現在でも、スバルの競技用モデルは、初代レガシィ以来のEJ20型エンジンを使用しています。FB型を開発した佐々木礼さんに話を伺ったところ、新世代のFB、FA型もレース用には転用可能で、パーツなどが充実して実績があるからEJ20型を使い続けているわけで、そのうちこれら新世代エンジンに切り替わるのではないかとのことでした。
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1980年代後半のレガシィを開発する時代、スバルの新しいエンジンとして直列4気筒も検討されたことが知られていますが、FB/FA型エンジンを開発するときには、水平対向エンジン以外の選択肢は全く考えなかったとのことです。直列エンジン横置きと、水平対向エンジン縦置きではシャシー設計に共用性がなく、スバルのような規模の生産台数では、水平対向エンジンを採用するなら全車種それに統一しないと設備投資の元がとれません。クルマの電動化が進行する時代ですが、内燃エンジンとしては、スバルは今後も水平対向エンジンでクルマづくりを続けるのだろうと思います。
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水平対向エンジンを縦置きするAWDもしくはFWDは、クルマ全体のバランスがよく、上質な走りに向いたメカニズムということが今でもいえるかと思います。比較的少量生産のスバルは、この特別なメカニズムを持つことで、「ほかとは違うクルマ」をつくることができ、イメージの上でもそれが説得力をもちます。近年マツダも走り重視、感性重視のクルマづくりに力を入れ成功していますが、スバルの場合メカニズムが明らかに違うということで、「違うクルマ」ということを、訴えやすい有利さはあると思います。もちろんほかとは違うことで制約もあるはずですが、レヴォーグを見る限り、ハードウェアの基本から考えても、スバルらしいクルマづくりを展開していると思った次第です。
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(レポート・写真:武田 隆)