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ホンダ・オデッセイの印象

ホンダ・オデッセイのアブソルートEXに試乗しました。昨2013年秋の発表会の様子をまじえてのレポートです。デザインについても考察します。


【走っての印象】

まず乗った印象から。今回は、高速道を利用して往復1003kmの行程でした。5人が乗って、トータルの燃費は10.6km/Lだったので、このカテゴリーとしては悪くないと思われます。グレードは最上級のアブソルートEX、駆動はFFでした。
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写真はどれも発表会時のものですが、上は、今回乗ったのと同型と思しきモデル。今回は、後部座席でゆったり落ち着くことが多く、「走るラウンジ」というべきアブソルートEXの「プレミアムクレードルシート」は、まさにミニバンの醍醐味で、快適でした。ただし、路面からの突き上げが気になりました。同乗者によると、これは3列目シートだとさらに気になったようですが、逆に前列の運転席/助手席では、あまり気になりませんでした。
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ワインディング路などは走っていませんが、高速道路でコーナーが続くような区間での走りからして、"グランドツーリング的"に走れるのをねらったミニバンだと感じられます。ただ、その思いが高じたのか、乗り心地までドライバー席が優先される結果になったように思えます。目標を定めて一丸となって開発する姿勢が出たのだとすると、いかにもホンダらしい、などと感じますが、ミニバンの存在理由は後部座席にこそあるはずなので、本末転倒になってしまいます。
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今回は、突き上げはとにかく感じましたが、後席のシート自体はかなり快適で、十分リラックスできるものだったとは思います。ちなみにタイヤはアブソルートEXのFFのみ標準の、18インチを履いていました。ほかのグレードは標準では17インチなので、もう少しマイルドと推測されます。ちょうど少し前にシトロエンDS5で高速を長距離走りましたが、走りのねらいがよく似た感じ、と思いました。あちらは2列シートのハッチバックタイプなのでカテゴリーは違うとはいえ、箱のボディでドライバー重視、"グランドツーリング"重視というところが共通です。DS5のほうが足回りは洗練されており、車高の高いミニバンのハンディを考えれば当然かもしれませんが、オデッセイの今後が期待されます。
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エンジンは力も十分あり、なめらかに加速して、運転して気持ちよいものでした。CVTも良好で、パドルシフトでマニュアル操作しても快適でした。

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アブソルート系の室内はブラックになります。黒木目調パネルなどは、"趣味がよい"という感じをうけるものです。

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これはオデッセイの通常モデルの内装。木目調パネルはこれも趣味がよい感じです。シートなどはホワイト調(アイボリー)になります。

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これも通常モデルの内装。2列目シートはアブソルートEXだと、これよりかなり豪華になります。

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これも通常モデルですが、3列目シート後方の荷物スペースは前後方向の奥行きはわずかですが、下に掘れているので、容量を稼いでいます。

【オデッセイの歴史】

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伊東社長がプレゼンする発表会の様子。ホンダのキャッチコピーは、革命とか世界一とかの言葉が奮発される印象です。明るいビッグマウスが"ホンダ流"と思いますが‥・。

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会場入口にはこんなパネルが置かれていました。こんなつきぬけたコピーで迫られると、「そうであったか」、などと思わず小声で返したくなります。

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挑戦の連続であった、オデッセイの歴代モデル。初代オデッセイは大ヒットになり「ミニバンのホンダ」のイメージができました。ミニバンのパイオニアはなんといっても1980年代のクライスラー社で、おおまかには、初代オデッセイはそのコンセプトに従ったものだともいえます。その後の前輪駆動のミニバンはどれもそうだともいえますが、ホンダはワンボックス車を欠いていた背景があるとはいえ、時流を読むのが早かった、という結果になり、大ヒットしたわけです。
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その後、オデッセイは3代目で低さを強調し、今回の5代目で今度は一変して高くなりました。高くなったり、低くなったり、一転するのは、ホンダがときどきやることです。有名なのは初代シティから2代目シティへの転身です。

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今まで走りを重視して、低くしてきたいっぽう、今回車高を上げて空間を広くとった形です。

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新型は、車高を上げて室内空間を拡げていますが、もともと低床化を極めていたフロア高さを、さらに60mm低めています。これによって低重心化の効果もあるようで、走り重視に対応しているようです。上も下も拡げるとはなんともよくばった進化です。

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低床化の結果です。地上高300mmは、最近の低床化めざましい路線バスと、同等だそうです。ただしバスのほうは、最新型ではさらに停車中に車体を傾けてドア側を沈めるようになっており、さすがにそれには負けるそうです。

【デザインについて】

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さてデザインについてですが、これは通常モデルのフロントマスク。最新のホンダ顔をベースに、ミニバンらしさを加えています。オーソドックスな安心感があります。

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これはアブソルート。エンブレムの周りのメインのグリルは共通に見えますが、その下の3本の横バーを太くして立派さを強調しています。前面のメタル調パーツを多くするのが、昨今のミニバン系モデルの常套手段です。しかし流線型的な丸みがあり、比較的スマートに見えるのが、オデッセイの特徴です。

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ちなみにオデッセイ新型発表時のテーマカラーであるこの車体色では、なんと純金が塗装にちりばめられています。

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写真はレンズの収差もあって強調されていますが、オデッセイはノーズを長めにして、ステップワゴンような「箱」にならないようデザインされています。プレミアム感や走りの感じが出ています。フィットやステップワゴンとは違い、スペース効率最優先ではないわけです。デザイナーの方に聞いたところ、そのほか窓の上側のラインを弓なりに後側を下げているなど、スマートに見せる工夫がいろいろあるようです。最後部のDピラーは「フロートタイプ」で下側を細くして、後方視界をよくしているとのことです。写真では見にくいですが、ヘッドランプ上部から窓の下部に沿ってDピラーまで、メッキラインがまっすぐ通っており、車体を長く低く見せています。
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ボディサイドは、スムースで比較的上品なプレスラインが目立ち、それがオデッセイの大人のスマートさにつながっているようで、アコードと同様です。ただ、下部にはちょっといかした、彫りのラインが入っています。比較的目立たない位置というのがポイントですが、これは最新のホンダのデザインテーマの「エキサイティングHデザイン!!!」によく見られるものです。ちなみに「!!!」は公式に入るものです‥・。

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これはフィットですが、その最たるもの。ボディサイドで、リアコンビランプからフロントフェンダーに向けてひかれたホッケースティックのようなプレスラインが、オデッセイと共通です。

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その原型ともいえるデザインが、2011年の東京モーターショーで展示されていたコンセプトカーに見られました。最近のホンダ市販車の多くは、これをアレンジしながら用いています。フィットの場合はこれがかなりはっきり出ていますが、オデッセイはそれを低い目立ちにくい位置に入れています。かっこうのよさを入れつつ、もう少し大人らしく、趣味よくまとめたのがオデッセイという気がします。


(レポート・写真:武田 隆)

リポーターについて

武田 隆(たけだ・たかし)

1966年東京生まれ。早稲田大学第一文学部仏文科中退。出版社アルバイトなどを経て、自動車を主体にしたフリーライターとして活動。モンテカルロラリーなどの国内外モータースポーツを多く取材し、「自動車アーカイヴ・シリーズ」(二玄社)の「80年代フランス車篇」などの本文執筆も担当した。現在は世界のクルマの文明史、技術史、デザイン史を主要なテーマにしている。著書に『水平対向エンジン車の系譜』 『世界と日本のFF車の歴史』『フォルクスワーゲン ゴルフ そのルーツと変遷』『シトロエンの一世紀 革新性の追求』(いずれもグランプリ出版)がある。RJC(日本自動車研究者ジャーナリスト会議)会員。

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