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スズキ・ハスラーに試乗


「遊べる軽」として登場した、スズキ・ハスラーに試乗しました。ハスラーは軽自動車のさらなるシェア拡大につながるとも思われますが、その商品開発力に感心させられました。

2013年11月の東京モーターショーでの展示に続いて、12月には発表会がありました。鈴木修会長は、スポーツカーのような1本やりのものではなく、多目的であるところを強調していました。軽自動車は走ることに高ぶるようなジャンルではないとのことです。ダイハツの注目車種がコペンなのに対し、スズキはこのハスラーなのか、と思った次第です。
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発表会場での展示。純正オプションの用具が揃っています。キャッチコピーは「遊べる軽」で、かつて流行ったいわゆる「RV車」ほどの室内空間はないけれども、いろいろ遊ぶ気になる雰囲気、機能を備えています。以前にあった車種「Kei」がよかったという声に後押しされて、商品化につながったとのことです。Keiはジムニーにちょっと似た雰囲気のSUV的ボディでしたが、雪道などを走れるというだけで、遊べるクルマという雰囲気はなかったのが、今回はそれを盛り込んだということです。
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ハスラーはワゴンRがベースで、中身・実質はほぼ同じです。実際のところパッケージング(空間設計)で違いがあるのは、タイヤが大きいことで、それに応じて地上高(床)が高くなり、着座位置も高く、室内高が低くなっています。ただそれらは上図でわかるように、わずかのことです。タイヤ径が大きい分、ホイールハウスが室内側に浸食しそうですが、それは地上高が高いことで相殺され、結局ワゴンRとほぼ変わらないのだそうです。逆にフロントウィンドウ(Aピラー)が立っているので、室内空間はむしろ広く感じることもあるようです。
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悪路走破性の面では、ハスラーは、ワゴンRとジムニーの中間的な存在です。成り立ちとしては、事実上ワゴンRのアレンジ版です。タイヤは15インチです。
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デザイン面で工夫をして、アウトドア系モデルに見せています。上図にデザイン各部の由来がいろいろ示されています。
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車体色は、ピンクも設定されています。商品企画から開発に関わった方の話では、ピンク採用を決めたあとに例のクラウンが出てきて、先に出されたか、と思ったそうですが、話題になってよかったとも思う、とのことでした。ちなみにこの2トーンは、手作業でマスキングして塗るので、若干値段が高くなります。
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リアビューはこんな感じで、タフっぽい雰囲気が出ています。ただ真後ろから見ると、さすがに軽だけあって幅が細く見え、元来がトールワゴンであることを気づかされます。
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内装は、車体色がピンクの場合、シートの周囲に同色の帯が入ります。前後シートは大きさがゆったりして、着座感も良好でした。
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シートアレンジは多彩です。「遊べる軽」ということで、室内をいろいろ活用できるよう工夫し、フラットなフロアも可能です。この状態の上に専用の敷物を敷いて、フラットな床として使えるとのことです。
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ダッシュボードはこんな感じ。このクルマにはちょうどよい雰囲気です。
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走ってみると、ハスラーはなかなか良好でした。基本的には走りもワゴンRと同じ能力を発揮します。ターボは当然力がありますが、とくにノンターボでも十分よく走るのは、スズキのトールワゴンの優れたところと思います。注目したのは、乗り味です。ワゴンRよりタイヤが大径なので、基本的にはワゴンRよりは不利なはずです。軽自動車はバネ上重量が軽いので、15インチタイヤのバネ下重量は負担が大きく、バランス的にやはり不利なのだそうです。ところが街中で乗ってみると、むしろ大径タイヤのゆったり感が出たような感じで、軽自動車ばなれしたような印象さえある乗り心地でした。
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本来、タイヤが大径で間違いなく有利なのは、悪路走破性です。それもあってか、工事中で荒れたところが多かった試乗区間では、軽でありながら大船に乗ったかのようなゆったり感を感じました。シャシー担当の方の話では、バネ下重量の増加に対応して、ワゴンRからは減衰力だけ変えて調整しているそうですが、そのうえで空気圧をワゴンRが2.8のところ、2.5にしているとのことです。
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今回ワゴンRにも試乗できました。さすがにきびきびと走りますが、街中で乗ったかぎり、軽自動車らしさが払拭されているという点ではハスラーのほうが新鮮でした。新鮮というのは、(ある意味当然ですが)外観にもいえる気がします。スズキとしては、1993年に誕生した大ヒット作のワゴンRに続けて、新しいヒットになればいいという思いもあるそうです。
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ハスラーの顔。SUVらしさが表現されています。若干食傷ぎみの感もあるトールタイプの軽自動車とは隔絶していて、新鮮です。もっとも少しファニーすぎるので、これがワゴンRにとって代わることはないとも思います。ちなみにこのフロントのバンパーとアンダーガード部分は、素材に着色してある樹脂素材で、ハードに使って擦れても塗装の必要がありません。
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昨年の東京モーターショーで展示されたショーモデル。このマスクはなかなかデザイン性がある感じです。
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横から見るとルーフはこのようになっていました。
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これはX-LANDER。ジムニーをベースにしたモデルで、ハイブリッドを採用したものです。
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こういった雰囲気のクルマが道路に増えると、世の中が少し明るくなる気もします。発売後、たいへん好調なようで、街中や山中で見る機会が既に多くなっている印象です。まあ、デザインの存在感があるということもあるかもしれません。
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(レポート・写真:武田 隆)


リポーターについて

武田 隆(たけだ・たかし)

1966年東京生まれ。早稲田大学第一文学部仏文科中退。出版社アルバイトなどを経て、自動車を主体にしたフリーライターとして活動。モンテカルロラリーなどの国内外モータースポーツを多く取材し、「自動車アーカイヴ・シリーズ」(二玄社)の「80年代フランス車篇」などの本文執筆も担当した。現在は世界のクルマの文明史、技術史、デザイン史を主要なテーマにしている。著書に『水平対向エンジン車の系譜』 『世界と日本のFF車の歴史』『フォルクスワーゲン ゴルフ そのルーツと変遷』『シトロエンの一世紀 革新性の追求』(いずれもグランプリ出版)がある。RJC(日本自動車研究者ジャーナリスト会議)会員。

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