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ダイハツ新型コペン技術説明会

ダイハツの新型コペンの技術説明会に参加しました。2013年11月の東京モーターショーで発表され、2014年6月の発売を前にしたモデルなので、まだ非公開の部分もありましたが、交換可能な樹脂製外板パネルやシャシーなどの特徴的な新技術について知ることができました。

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会場は東京・お台場。特設コースで10分ほど走ることができました。発売前のモデルということもあり、外観はカモフラージュされ、内装なども荒削りの状態といった趣きでした。
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昨年の東京モーターショーでの展示。外観デザインは2種類が提案されており、手前の緑がXmz、奥の青がRmzという名称です。試乗会にあったクルマは基本的にはRmzと同じようでした。モーターショーの時点では、ドアも樹脂パネルだったと思いますが、今回の説明では、ドアのみはスチールの外板になり"着せ替え"はできないようです。
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初代コペンは2002年に誕生しています。今回2代目になるわけですが、"若者のクルマ離れ"や、スポーツカー市場の低迷があるために、単純にモデルチェンジしたのでは成長が望めず、そこで外板を樹脂化して自由にデザイン変更できる設計にし、活性化を図りました。それにともない、外部のボディ製作者とコラボレーションするのをはじめ、販売方法にも新しいものを取り入れていく方針とのことです。ボディ外板は、車体寸法や車型さえ変わらなければ基本的には自由に変えてよいのだそうです。パーツメーカーや、デザイナー、デザイン専攻の学生などに、交換用の外板制作に参入してほしいねらいがあります。
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外板は取り外し可能な樹脂パネルですが、それと同時にボディの基本骨格を開発。ダイハツではこれを「D-Frame」と名付けています。通常のモノコックと違い、外板パネルがなくても強度が出るよう、車体の各部を補強しています。オープンボディであり、スポーツカーとしての性能をしっかりさせるためもあり、しかるべき補強を十分にして、ふさわしいボディ剛性を確保するようにしています。もとをたどるとミラ・イースのときに、ダイハツでは軽自動車の基本骨格が刷新されており、それをべースに仕立てたとのことです。
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説明会場に展示してあったシャシー。青い部分が乗り心地向上、赤い部分が操縦安定性向上に寄与するとのことです。旧型コペンも、当然ある程度シャシーは補強されていましたが、新型コペンは外板パネルなしで強度を出しており、旧型より剛性を向上させています。少量生産の高価なスポーツカーや、レーシングカーなどでは、専用の強固なシャシーを組んで、そのうえにラジコンカーのようにボディ上屋を載せる、というイメージのものが昔からありますが、新型コペンの場合、量産のモノコックボディを基本にしながら、高価なスポーツカーにも近い構成にしたのが肝心なところです。
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モーターショーでは、外板パネル着せ替えのパフォーマンスが行なわれていました。樹脂製なので、2人で楽に持ち運び、付け替えは数分で完了していた印象です。ボディ外板と内装が交換可能であることを、ダイハツでは「ドレスフォーメーション」と名付けています。
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外板の樹脂化は、新型コペンの場合、デザインを自由に変更できるねらいがありますが、これを採用した背景には、ダイハツとして、樹脂素材の採用を拡げるという方針がまずあったそうです。昨年発売された新型タントでも、テールゲートをはじめ、ボディ各部に樹脂の採用が増えているのが特徴でした。自動車では、バンパーなどは樹脂の採用が30〜40年ほど前から普及が進みましたが、さらにフェンダーパネルなど樹脂化はもっと進もうとしています。樹脂は軽量であるほか、成型が容易で生産コストを下げる可能性を秘めています。プラスチックの技術は進化し続けています。
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これは1月の東京オートサロンでの展示。ここでも"着せ替え"のパフォーマンスが行なわれました。この写真のパネルはカーボン製です(この時点ではドアもスチールではなく樹脂製でした)。外板パネルはシャシーにボルトで締結されるので、シャシー剛性を高める効果はあるそうです。ただし、コペンは軽自動車であり、親しみやすさが売りなので、高価で成型も大変なカーボンよりは、もっと廉価な樹脂を使うのが主流になるはずです。軽さの点ではあえてカーボンファイバーにするメリットはおそらくなく、鬼のようにボディ剛性を高めたい場合にカーボンを使うことになるのかもしれません。
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新型コペンの外板パネルの素材は、基本的にはポリプロピレン(PP)であり、通常の乗用車のバンパーなどに採用されている素材で、コスト的に有利なものです。ただし、強度や耐熱性が必要な部分には、SMC(シート・モールディング・コンパウンド)が使われています。「フロントフード・インナー(ボンネットの内側)」、「ラゲージ(トランクリッド)」、「ルーフとバックパネル(ハードトップ部分」がSMCになるとのことです。SMCはガラス繊維が入っており、スポーツカーでは比較的なじみのあるFRPの一種ともいえるようです。
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これは東京オートサロンでの展示です。この時点までは、「KOPEN」という名称でした。この展示ではルーフを上げていましたが、基本的にはモーターショーのときの車両そのものとのことでした。市販型では、ドアはスチールで交換不可なので、交換用パネルのデザインはそのドア部分のプレスラインを活かす必要がありそうです。ドア、ルーフ、ライト類が交換不可となるようです。
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今回の試乗会では、ちょうど雨が降った日だったので、ルーフは上がったままでした。新型コペンは、後部がハイデッキタイプになり、旧型に比べてリアの空力的な揚力が60%軽減しています。
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ボディ外板は、各パネルごとに、数カ所をボルトで締め付けてシャシー(ボディ骨格)に固定します。
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今回、樹脂化の大物部品として、燃料タンクもあります。ダイハツとしては初の採用になります。強度を考えて、球形に近い形状にしたほか、肉厚を均質化し、またダイヤモンドビードと呼ぶ凸凹を施すなどして、大幅な軽量化を実現しています。この凸凹パターンは、人工衛星の技術にルーツがある「ミウラ折り」と同じものだそうです。
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燃料タンクについて解説したパネルです。金属製タンクより40%軽いということです。
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フロア下を鏡で見る展示。燃料タンクも見えています。乗員スペース下には補強が入っています。一番左(後側)にはマフラーが見えています。
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マフラーは2本出しですが、音の良さを追求した設計です。スポーツカーとして良いクルマになるよう、いろいろな面で追求しています。
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マフラーについて解説したパネル。残念ながら、今回の試乗は大雨のコンディションだったため、音を聞くことはできませんでした。
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室内です。ダッシュボードまわりは無塗装のプラスチックむき出しで、試作段階のような状態でした。室内に関しても、ダッシュボード付近、ステアリング、シートが、ボディ外板と同様に変更可能ということです。
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シートは、上質なファブリックのバケットタイプのものが付いていました。乗った感じでは(ルーフを閉じた状態で)、やはり室内はタイトですが、ドアの把っ手あたりのデザインなどあか抜けているように感じました。
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試乗は大雨の中でした。会場はよくイベントをやる広場で、スペースをすべてコースにしたので、3速いっぱいぐらいまで加速できるコースどりになっていました。雨が激しいなかで、剛性や上質感などはあまりわかりませんでしたが、乗りやすいのは確かと思いました。ステアリングは軽めに感じました。CVTとMTと両方乗りましたが、CVTももどかしさなく走れた印象です。MTでは、ふつうにヒールアンドトウができました。エンジンパワーは十分で、回転の伸びがリニアなので、安心して踏んでいられる感じです。コーナーの出口でだけ、(2速で)何度か荒くベタ踏みにしてみましたが、まったくアンダーが出たり乱れることがなく、パワーの出方もフラットなので、安定したままでした。そのときメーターパネル内でインジケーターが点灯することがあり、トラクションコントロールが働いたようですが、言われなければわからないような自然な介入でした。FFで、この雨の中でありながら、前輪のグリップが失われるような感触がほとんどありませんでした。
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コペンは、モノコックボディを基本にしながら、樹脂製外板を採用したことが画期的です。樹脂製ボディだけならば、スポーツカーでは古くから存在します。GMのシボレー・コルベットはその元祖的存在で、1953年に発表されています。樹脂(プラスチック)の採用はまさに当時の先端技術で、世界最高峰の存在だったGMがそれを採用しました。素材はFRPです。新しい技術ということもあり、初期のボディはたてつけが悪かったそうです。このほか、1950〜60年代のアルピーヌやロータスは、FRPを採用したスポーツカーとして知られます。量産車のパワートレーンを使った比較的安価な普及型スポーツカーという触れ込みでしたが、シャシーだけは独自のバックボーンフレームを組んでいました。それに対して、コペンは量産車のシャシー(ボディ骨格)を流用しているわけです。
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外板パネルを脱着可能にした構造は、1955年発表のシトロエンDSで採用されていました。DSもプラスチック採用に先進性を見せたクルマで、内装にはいちはやく樹脂を採用しています。ボディ外板も、一部モデルはルーフに樹脂を採用したといわれます。開発当初はボディ外板にアルミなどを採用する予定が、コストなどのためにスチール製になったといわれます。ボディ外板は応力を受けない構造で、シャシーは独自にプラットフォーム+スケルトンの上屋を組んでいます。ボディ外板は左右の4枚のほかに、ルーフ、ボンネット、トランクの11枚になります。ちなみにコペンの場合、2枚の金属製ドアを除いて、樹脂の外板パネルは13枚あり、若干細かく分かれています。DSはボディサイドが象徴するように、パネルの切り分け方が見事に整然としていました。コペンの場合、あとから交換するパネルは、一部のみというケースもあるはずですが、もう少しパネルの分け方を整理してもよかったのかという気がしないでもありません。
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コペンの樹脂外板に近いと思われるのが、やはりGMの今はなきサターンです。サターンは1990年頃に立ち上がった当時鳴りもの入りの新ブランドで、クーペからSUVまで多数の車種がラインナップされましたが、ボディ外板の一部を樹脂製にしたのが各車共通の技術でした。基本はモノコック的ボディで、外板のみを樹脂製にしたということで、コペンに近いものでした。
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東京モーターショーでの、コペンのボディ外板を外した状態。市販型と異なるものですが、とくにドアは市販モデルでは、外板が取り外し不可のスチールになります。
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これはオートサロンでの展示です。コペンは、楽しめるクルマということを追求しており、それを実感できる演出の展示になっていました。手前のボディはXmzですが、カスタム感のあるデザイン、カラーになっています。奥に見えるRmzのほうが、古典的なスポーツカーっぽさがありますが、手前のXmzのほうが「樹脂」を感じさせるデザインというか、ちょっと新しさがある気がします。
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新型コペンは、かわいさのある丸形であった旧型コペンよりは、ある意味ふつうになった気もします。フロントの開口部が大きく、迫力があります。外板パネルを外部の製作者がデザインしたとき、果たしてコペンのイメージをこわすことはないのか、ということもなんとなく気にはなりますが、とにかく自由に車体デザインができる仕組みを導入したことで、活性化が期待されます。ライトなどはオリジナルをいじれないようですが、どの程度印象が変わるデザインが出てくるのか注目です。
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これは東京モーターショーでの展示ですが、田宮模型のミニ四駆とのコラボレーション企画です。このあとのオートサロンでは、ミニ四駆のサーキットも設営され、親子連れでにぎわっていました。このコラボレーションで、お父さん(お母さん?)と子供が販売店に足を向けてくれることを期待しているようですが、ダイハツとしては、販売に広がりが出るように、車体技術だけでなく、さまざまなアイデアをとりいれていく意向とのことです。クルマの魅力を再び取り戻せるよう、各社試みをしていることが感じられる最近の状況ですが、そんななかで出てきたダイハツの新型コペンは、やはり注目すべき車種だと思った次第です。
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(レポート・写真:武田 隆)


リポーターについて

武田 隆(たけだ・たかし)

1966年東京生まれ。早稲田大学第一文学部仏文科中退。出版社アルバイトなどを経て、自動車を主体にしたフリーライターとして活動。モンテカルロラリーなどの国内外モータースポーツを多く取材し、「自動車アーカイヴ・シリーズ」(二玄社)の「80年代フランス車篇」などの本文執筆も担当した。現在は世界のクルマの文明史、技術史、デザイン史を主要なテーマにしている。著書に『水平対向エンジン車の系譜』 『世界と日本のFF車の歴史』『フォルクスワーゲン ゴルフ そのルーツと変遷』『シトロエンの一世紀 革新性の追求』(いずれもグランプリ出版)がある。RJC(日本自動車研究者ジャーナリスト会議)会員。

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