シトロエンは、昔から「ユニークなクルマ」として、親しまれてきましたが、そのユニークさはなにかと、一言で説明しようとすると、意外に難しいようです。たとえば、トラクシオンアヴァンと2CVとDSは、まったく違うように見えるし、近年の新しい展開であるDSラインのモデルも、また違っています。
シトロエンがエキゾチックに見えるのは、日本人とは違った思考法、発想でクルマをつくっているからこそであり、日本語で説明するのが難しいのは、そもそも当然のことともいえます。そこを理解するには、パラダイムの転換が必要で、一世紀に及ぶ歴史を俯瞰して見ることで、「シトロエンとはなにか」が見えてくるのではないかという考えがひとつありました。
さらに本書では、シトロエンを生んだ"偉大でユニークな"フランス文明の展開を、背景として掘り下げ、飛行機や鉄道、建築、モード、映画などを、随所で引き合いに出したりしています。
過去にフランスには、取材などで何度も行って、シトロエンの活動も見ましたが、そんな体験も思い出しながら、書き進めました。今までためていた疑問に答を出すために、300頁近い長さになってしまい、「シトロエンとはなにか」を、それなりにつかんだような気にもなったのですが、依然としてやはり一言でシトロエンを説明するのは難しいと、感じています。
貴重な歴史的な広報写真を豊富に提供いただいて、写真だけでも興味深い本になったのではないかと思いますが、シトロエンを好きな方、フランスに興味のある方に、是非読んで頂けたら、ともに考えて頂けたらと思います。
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武田 隆
リポーターについて
武田 隆(たけだ・たかし)
1966年東京生まれ。早稲田大学第一文学部仏文科中退。出版社アルバイトなどを経て、自動車を主体にしたフリーライターとして活動。モンテカルロラリーなどの国内外モータースポーツを多く取材し、「自動車アーカイヴ・シリーズ」(二玄社)の「80年代フランス車篇」などの本文執筆も担当した。現在は世界のクルマの文明史、技術史、デザイン史を主要なテーマにしている。著書に『水平対向エンジン車の系譜』 『世界と日本のFF車の歴史』『フォルクスワーゲン ゴルフ そのルーツと変遷』『シトロエンの一世紀 革新性の追求』(いずれもグランプリ出版)がある。RJC(日本自動車研究者ジャーナリスト会議)会員。